魔法少女リリカルなのはA´s 《棄てられたクローンと新たな家族》   作:三咲ディア

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八神の日常!そして…

午前4時。まだ日も昇らない早朝の公園に、樫の木を打ち合わせるような音が鳴り響く。シグナム達と暮らすようになってから新しく始めた朝稽古だ。

俺はシグナムの木刀に向けて樫の木の棒を降り下ろす。軽く避けられてしまうと木の棒は地面に突き刺さる。その突き刺さった箇所を支点に、俺は体を持ち上げて延髄目掛けて蹴りを繰り出すが、すんでのところで避けられてしまった。

 

 

「流石だな、翼。」

「軽々あしらわれてたらちょっとへこむんだけど?」

「いや、軽くなど無い。一撃一撃に戦慄すら覚える。」

「そりゃどーも!」

 

 

体勢を立て直して着地をすると、シグナムに向けて全体重を乗せた突きを放つ。シグナムがそれを木刀で力一杯払うと、俺は追撃をさせないために軽く飛び退いた。

お互い、動きを牽制し合っているため全く動かない。にらみ合いが数分続いた後、どちらともなく駆け出した。

 

 

「「ハアァァァァァァァ!!」」

 

 

互いの雄叫びが交錯し、全力の一撃を交わす。シグナムの木刀は俺の脳天で当たる寸前で止まり、俺の木の棒はシグナムの腹部で寸止めを行う。暫くの間俺とシグナムはにらみ合って居たが、お互いに気迫を納めると木刀と木の棒を離した。

 

 

「はぁ…やっぱシグナムは強いな。」

「いや、翼も侮れんな。何度も冷や汗をかかされたぞ。世が世ならかなりの騎士になれただろう。」

「騎士になるつもりなんて無いけどさ。はやての側に居れさえすれば良い。」

「それは残念だ。」

 

 

少し息を吐いて力を抜き、額の汗をタオルで拭う。御互いに笑いながら冗談めかして言うと、クールダウンの為にストレッチをして筋肉を解すと俺たちは人気の無い公園を後にした。

 

 

 

 

「ただいまー。」

「ただいま戻りました。」

「お帰り、シグナム、翼。」

「ただいま、はやて。」

「今日は勝てたん?」

「いや、引き分けだよ。まったく…強いったら無い。」

「いえ、主。翼は強いですよ。…後数年すれば、私でも勝てないでしょう。」

「うんうん、翼も頑張っとるな。私も鼻が高いわ。」

 

 

帰宅直後、はやてに今日の戦績を問われて答える。未だに勝てないことに少し不貞腐れながら言う俺にシグナムがフォローを入れると、はやてが嬉しそうに頭を撫でてきた。少し照れ臭い…。

ここ最近、漸くシグナム達が俺を呼び捨てで呼んでくれるようになった。ヴィータこそ最初から呼び捨てではあったが、後の三人は翼様と敬称がついて何だかくすぐったかった。

シグナムは俺の良い稽古相手になってくれるし、ザフィーラは鍛え方についてアドバイスをくれる兄貴分だ。ヴィータははやてに甘える妹みたいで、見ていて微笑ましい。問題は…シャマルにあった。

 

 

「翼くん、汗流してあげる。」

「良いって、自分でできるよ。」

「だめよ。翼くんって髪の洗い方雑だし、お風呂から出ても髪乾かさないでしょ?」

「後者はまだしも何で前者を知ってんの!?怖いよ!?」

「んー…昔私の髪洗ってくれた時は、結構優しかったんやけど?」

「主の髪だからではないか?」

「んな事よりお腹減ったんだけど…飯にしよーぜー?はやてー。」

「はいはい、ちょぉ待っとってな?翼、シグナム、早うシャワー済ませて来るんやで?」

「わかりました、主。」

「ちょっと待って!この人なんとかしてからにしてくんない!?」

 

 

解散し始める皆に全力で叫ぶが、全てスルーされる。シグナムは風呂場へ、はやて、ヴィータ、ザフィーラはキッチンへと足早に退散していった。

そして俺は…シャマルに捕まり、頬擦りをされた。

 

 

「翼くん~♪」

「シャマル…離してくんない?」

「だーめ。」

 

 

俺を抱き締めてニコニコと笑うシャマル。そう、シャマルは俺に対して超が付くほど甘かった。弟分が出来たのが嬉しいのか、事ある毎に俺への世話を焼いてくるのだ。最近に至っては布団へ潜り込んでくる、着替えさせようとしてくるなど、色々と不味い方向にヒートアップしてきた。

 

 

「あの…シャマル…マジで止めてくんない?」

「え~?」

「いや、え~じゃなくて…。」

「じゃあ、私の事お姉ちゃんって呼んだら離してあげる♪」

 

 

エラくにこやかに告げるシャマルに若干の殺意が湧いた。冗談じゃない、と力づくで引き剥がそうとした時、ザフィーラがとことこと歩いてきた

 

 

「シャマル、そろそろ翼を離してやれ。本当に嫌われるぞ?」

「え!?本当に!?」

 

 

嫌われないと思う理由を原稿用紙30枚程度で教えてもらいたい。

 

 

「翼も子供とは言え男だ。異性に興味はあれど積極的なアプローチを掛けられては戸惑うだろう。それに今のお前はどう見ても変態そのものだ。」

「うぅ…わかったわ…」

 

 

ザフィーラの説得に嘆きながら俺を解放するシャマルに、俺はホッと息を着いた。説得の内容には若干引っ掛かったが…まあ助かった事には代わり無い。

ザフィーラにアイコンタクトで助かったと告げると、俺はシグナムが風呂から出るまでリビングのソファでのんびりとする。すると近くに居たヴィータが、俺の髪を触ってきた。何か着いていたのだろうか?

 

 

「うーん…やっぱ納得いかねー…」

「どうした?」

「お前ホントに男かよ!何でこんなに髪質良いんだ?」

 

 

元が女の子だからだと思います。

 

 

「知らないっての。もって生まれた物じゃない?」

「あたしら変化の無い守護騎士よりも良い髪なんて…女として負けた気がする…」

 

 

がっくりと項垂れるヴィータを撫でながら励ましてやる。うん、妹みたいでホントに可愛い。暫くヴィータを撫でて遊んでいると、シグナムが風呂から出てきた。

 

「翼、先に風呂を貰ったぞ。」

「あ、おう。俺も直ぐに入って来るかな。」

 

 

ヴィータの頭から手を離して立ち上がると、シャマルに気付かれぬ様に風呂場に行く。着替えを用意してから服を脱ぎ、全裸になるとシャワーを浴びた。体に着いた見えない土埃が洗い流されていく様で、とても気持ちいい…。朝稽古の後の唯一の楽しみだ。

 

 

「もう!翼くんったらまたそんなに雑に洗って!」

「だから何でアンタ入ってきてんのさぁぁぁ!しかも全裸ぁぁぁ!!」

 

 

…これさえなければ…なんだけどね…。

 

 

 

 

そんなこんなでドタバタと時間を過ごし朝食後。シャマルははやてに絞られたせいか、大人しくしていた。はやて曰く、やりすぎや、と言うことらしい。出来ればもっと早くにそうして貰いたかった…。

 

 

「今日は家でのんびりしようかな…」

「すまない翼…。我もシャマルを止めようとしたのだが…」

「良いって良いって。ありがとう、ザフィーラ。」

 

 

尻尾を垂らしまるで落ち込んだ様な姿を見せるザフィーラの喉を撫でてやる。此処で過ごすようになってザフィーラは、狼形態で居ることが多くなった。ザフィーラに理由を訪ねると

 

 

「我は此方の方が楽で良い。」

 

 

と言っていた。

のんびりと時間を過ごしていると、はやてが俺の近くに寄ってくる。その顔は、悪戯っ子の様に笑いを堪えていた様に見えた。

 

「翼?ちょっとええ?」

「何?」

「翼の為に服買ってきたんやけど…着てくれへん?」

「別に良いけど…どんな服?」

「それは…着てからのお楽しみや!行けっ!ヴィータ!」

「合点!」

 

 

はやての合図と共に車椅子の後ろに隠れていたヴィータが飛び出す。精神的疲労に完全に気を緩めていた俺は、抵抗する間も無くヴィータよって拘束された。

 

 

「ヴィータ!?はやて!何のつもり…」

「翼って可愛えやん?ちょっとばっか化粧とか服とか…」

「何か思考がシャマル寄りになってない!?」

 

 

拘束されたままではにじり寄ってくるはやてを振り払う事も出来ない。そして…

 

 

「ヒック…酷いよはやてぇ…ヴィータちゃん…シャマルさん…なんてかっこさせるんですかぁ……」

「ご、ごめんな翼!何やシャマルの話聞いてたら似合うんやないかなーって思いだして…」

「良い!良いわよ翼くん!いや、翼ちゃん!」

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

結論。俺は女物の服に着替えさせられた。しかもかなり露出の高いものだ。思わず昔よりも弱々しい口調になってしまったが、シャマルはお構いなしに写真を撮り続けた。

 

 

「はやて…はやてだけは味方だと思ってたのに…」

「な、何も泣かんでも…」

「…何だろーな。目の前の美少女にドキドキしちまってるあたしが居るんだけど…」

「…男と分かりながらもドキッとするぞ。我の目には毒だ…」

『マスター…おいたわしや…』

 

 

口々に感想を述べては顔を反らす。バルディアスまでもが、だ。ヴィータに至っては頬が紅く染まっていた。

流石に耐えきれなくなった俺は、追い付かれないように一気に走り出す。リビングから撤退しようと扉を開けた所で、何かにぶつかった。そう、玄関の掃除をしていたシグナムだ。

 

 

「…掃除が終わったのですが、何ですか?この騒ぎは…」

「シグナムぅ…はやて達が…」

「…わかった。もう泣き止め、翼。主…少し宜しいですか?」

「し、シグナム?これには…」

「よ ろ し い で す か ?」

「…はい…」

 

 

はやての言い訳も聞かぬと言わんばかりに凄まじい眼光を浴びせながら、はやて、ヴィータ、シャマルに大きな雷を落とすシグナム。その姿に俺は女神を見た。

俺は取り敢えず毛布で体を隠すと、着替えを探す。シグナムとザフィーラは、俺をシャマルから守るかのように、背後に着いてきてくれた。これほど心強いと思ったことはない、と感謝をしながら着替えを探す。

 

 

「翼、稽古の時に思ったのだが…お前は剣を使わないのか?」

「ん?あー…確かに使ってないね。基本的に棒術だし…」

「確かに棒術は間合いの外から攻撃出来るが…威力は剣に劣るだろう?」

「使い勝手が良いって言うのかな?取り回しが聞くと言うか…」

 

 

漸く心の傷が癒え、シグナムと武器談義に花を咲かせながらデニムパンツとYシャツに着替える。一段落と息をつきリビングへ戻ろうとすると、とてつもない胸騒ぎに襲われた。

俺は一気に走り出すと、はやての元へと急ぐ。

 

 

「はやて!はやて!」

「石田先生ですか!はやてちゃんが…はやてちゃんが!」

 

 

そこには、苦しそうに胸を押さえて倒れているはやてと、泣きそうな顔ではやての名を呼び続けるヴィータ、石田先生に電話を掛けて容態を知らせているシャマルが居た。

俺は直ぐに近寄るとはやてを抱き起こす。

 

 

「はやて!直ぐに病院に連れてくから!シャマル!石田先生にそう言って!救急車なんて待ってる暇ない!」

「わかったわ!」

「翼…ヴィータ…シャマル…」

 

 

はやての苦しそうな呻きを胸元に聞きながらもシャマルへと指示を出す。俺ははやてを軽々と抱き上げると、家を飛び出す。

 

 

「バルディアス!肉体強化最大!行くよ!」

『了解です!』

 

 

全身をバネのようにしなやかに動かし、町を駆け抜ける。結果、救急車が到着するよりもかなり早く病院へと到着出来た。

 

 

 

 

…10月27日。この日からはやての病状は徐々に進み始める。そう、まるで何かが破滅をもたらすかのように…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何もない虚無の空間。そこには一人の長髪の女性が立っていた。

彼女はただ立っているだけ…。しかし、その瞳は悲しげに虚空を見詰めていた。

 

 

『…申し訳ありません…我が主…。』

 

 

その女性は小さく何かを呟くと、小さな樹となりその場へと根を張っていった…。

 

 

 

 





翼「作者はどこだ!作者を出せ!」

はやて「ま、まあまあ。少し落ち着いて…」

シャマル「と、と言うわけで八神の日常でした。皆さん、如何だったでしょうか?」

翼「女装させられるなんて聞いてないんだけど!」

シャマル「あら、でも可愛かったですよ?翼くん♪」

翼「やめて!シャマルがトラウマになるぅぅ!」

バルディアス『マスターは愛されてるのかいじられキャラなのか…』

はやて「ま、それも翼の魅力って事やな?」

翼「そんな魅力は欲しくないよ!」

ヴィータ「今回は、あたし達の日常と本編ではやてが倒れたシーン…であってるよな?」

はい、そうですね。時期で言うなら10月終盤の出来事です。ここから、騎士達の蒐集が始まっていきます。

翼「やっとなのは達が出てくるって事か…」

なのは「やっと私達の出番なの!フェイトちゃん!頑張ろうね!」

フェイト「うん。精一杯やろうね、なのは。」

まぁ…最初は負けイベントなんですがね。

なのは&フェイト「「そこは言わないでぇぇぇぇ!」」

それでは皆さん、次回お会いしましょう!

翼「あ、作者。後で楽屋裏な?」

忘れてなかった!?


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