魔法少女リリカルなのはA´s 《棄てられたクローンと新たな家族》 作:三咲ディア
「ちっ…管理局の救援か…!」
「なんにせよ助かった…」
腹の痛みを隠しながら仮面の男を警戒する。フェイトと呼ばれた少女は俺を見ると少し不思議そうに首をかしげたが、直ぐに仮面の男を見据える。どうやら俺は敵対視されていないようだ。
「管理局嘱託魔導士、フェイト・テスタロッサです。あなたを拘束します。」
「やれるものならやってみろ!」
叫びと共に魔力の弾幕がばら蒔かれる。フェイトは、俺その弾幕を潜り抜けながら、デバイスを鎌へと変化させて魔力を込める。弾幕の薄い箇所を縫うように駆け回り、穴を見付けると魔力を解放した。
「アークセイバー!」
鎌の魔力を、振り抜くことで射出する。フェイトの前へと放たれた魔力は、飛ばされた魔力の刃へ全て跳ね返される。回避を始める仮面の男を視認すると、俺は黄色のメモリ──ルナメモリを取り出し、バルディアスへと挿し込む。
『Luna!』
「逃がさねえ!ハーケンセイバー!」
フェイトと同じ様に鎌を振り抜くと、不規則に揺れ動きながらも仮面の男へ向けて飛ぶ刃を放つ。
仮面の男は小さく舌打ちをすると二つの魔力刃を障壁でガードした。ガリガリと障壁を削る音が響く。
ハーケンセイバーは、元々バルディアスにインストールされていた術式、アークセイバーを元に俺が改良した術式である。メモリを使って出力を上げ、更にはメモリごとの属性付与を行うものであった。
「「セイバー…ブラスト!」」
二人が声を揃えて更なる術式を発生させると、二つの魔力刃が爆発を起こした。辺りに爆煙が舞う。
煙のなかから動いてこない仮面の男を警戒していると、なのはから念話が届いた。
『フェイトちゃん!翼くん!私がこの結界を破壊するよ!』
『無茶だよなのは!レイジングハートもボロボロじゃないか!』
『ソイツの言う通りだ。さっきも砲撃で壊れそうになってたろ。』
『…守られてばかりは嫌なの。お願い…』
悲痛ななのはの声に小さく息を吐く。フェイトは未だ反対していたが、俺はなのはの決断を尊重することにした。
『お前の思うようにしろ、なのは。それで倒れたときは…ケツ拭いてやるよ。』
『っ!ありがとう!』
『ちょっ!なのは!?君も君だ!何でそんなことを…』
『俺には、アイツの決断を曲げさせることは出来ねえ。それだけさ。』
仮面の男、俺、フェイト、なのはが使った魔力が一点に移動していくのを肌で感じながら説明すると、晴れ始める煙に意識を向ける。
「レイジングハート、カウントお願い。」
『了解です。カウント5からいきます。5…4…3…2……2…2……』
「レイジングハート?やっぱり…」
『お気になさらず。…2…1…』
そんななのはとレイジングハートのやり取りを聞いていると、不意に嫌な予感がし始める。先程まで煙が晴れ始めて居たのに、また煙が出始めたのだ。
必死に意識を集中させてみるが、気配を読み取れない。そうしているうちに…
「きゃあぁぁぁぁぁぁ!!」
なのはの絹を裂くような悲鳴が上がる。振り向くと、そこには仮面の男の腕が、なのはの胸を貫いている状況であった。
仮面の男の手の中には、なのはのリンカーコアと思われるものも見えた。
「なのは!」
「おっと、お前たちには動かないでもらおうか。」
仮面の男が片手を振ると、俺達にバインドがかけられる。俺は直ぐ様バインドの構成を解析し、破壊するとなのはの元へと向かうが、もう遅い。
魔力を吸い取っているのか、リンカーコアが小さくなっていく。
「ふふ、かなり集まったな。感謝するぞ。」
男は愉快そうに笑うと、転移したかのように消えた。そしてバインドで縛られているフェイトへと突進をかける仮面の男。俺にはもう、何がなんだかわからなかった。
「はぁぁぁぁぁぁ!」
「うぁぁぁぁぁ!」
仮面の男の間合いに入る直前にフェイトはバインドを抜け出し、迫る拳をガードしようと構える。仮面の男は何処か嘲り笑うかのようにすると、ガードしているデバイスのコアを目掛けて拳を叩きつけた。肉体強化までしていたのか、コアには罅が入っていた。
「バルディッシュ!?」
「これはおまけだ。取っておけっ!」
回し蹴りの要領で、今度はデバイスの柄を蹴る。するとフレームは折れ、変な方向に曲がってしまった。 そのままフェイトは蹴り飛ばされ、俺は急いで支えに行く。
「す…ターライト…ブレイカー…」
不意に聞こえた弱々しい声に振り向くと、なのはが先程まで溜めていた魔力を仮面の男目掛けて構えていた。
莫大な魔力が放たれ仮面の男を飲み込もうとせんとした時、仮面の男は忽然と姿を消した。どうやら転移を行ったようである。
そして魔力を収束させた一撃は結界へ当たり見事結界の破壊をした。が、レイジングハートもピキっと音をたててひび割れてしまった。
俺はフェイトを支えたまま、急いでなのはの元へと向かう。なのはの近くにフェイトを下ろすと、フェイトは急いで駆け寄りなのはを支えた。
なのはの様子を見る限り、胸に外傷はない。どうやら魔法でリンカーコアを引き抜かれただけのようだ。
「魔力を狙ってた…ってことは…闇の書関係なのか…?でもアイツらは蒐収してないし…闇の書は未だに家にあるし…」
俺は小さく呟きながら自問自答を繰り返す。暫くして管理局の局員らしき人物が、なのはとフェイトを保護しに来た。そして俺も同行するようにと言われたので後で家族に連絡を入れさせることを条件に、局員達に同行した。
☆
「それで、君はいったい何なんだ?」
「八神翼。年齢は九歳。趣味は節約に料理作り、後掃除です。」
「あ、これはご丁寧に…って違う!君のデバイスは何処で手に入れた!どうしてフェイトにそこまで似ているんだ!」
目の前の黒尽くめの男の子が興奮したように叫ぶが、俺はどこ吹く風といった態度を通し続ける。
ここは次元航行艦アースラ。あれからなのはが医務室に運ばれ、俺は何処かの部屋に連れ込まれた。事後処理が終わるまで待っててくれとのことだった。
そして数時間の後、目の前に居る男の子──クロノ・ハラオウンが、俺の取り調べに来たのだ。
「だから、嘘は言ってないって。しつこい男はモテないぞ?」
「君が素直に話さないからだろう!」
「男はな、幾つか謎を纏わせた方がモテるんだよ。」
「君の場合は謎に埋もれているんだ!」
俺の答えに律儀に突っ込み、肩で息をするクロノ。コイツ、弄り甲斐があるなと思いながら出されたお茶を飲み、茶菓子を口に入れる。うん、中々美味しい。
俺がクロノをスルーして茶菓子に舌鼓を打っていると、扉が開く。
「あらあら、クロノを手玉に取るなんて。」
「笑い事じゃないですよ…艦長。」
そこには、フェイトを連れた緑髪の大人の女性が立っていた。女性はフェイトを連れて俺の対面に座るとにこやかに微笑む。
「初めまして。私は次元航行艦、アースラの艦長、リンディ・ハラオウンよ。」
「ああ、どうも。俺は…」
「八神翼くんね。クロノがごめんなさいね?この子頭が固いから…」
「僕は執務官として当然の事を…」
「ガチガチに固いね。それじゃ見える物も見えなくなっちまうぜ?」
笑みを浮かべコップを手に取り中身を飲み干す。少しキザだったかなと思うも言葉を取り消さないでいると、クロノはやはり肩をふるふると震わせていた。うん、やっぱり弄り甲斐がある。
「まあ、冗談は置いておいて。俺はそう言うしかねえんだ。話せって言われても…俺は俺だし、これ以上話しようが無いんだ。」
因みに大嘘である。
「…そうか。」
「…貴方にも色々あったのね。ごめんなさい、無理矢理聞き出そうとして。」
「ああ、いえ、大丈夫ですよ。」
「あのっ…少しいいかな…?」
おずおずと挙手をして質問をしたいという意思を示すフェイトに、俺はどうぞと手振りで促す。
「ありがとう。君はなんでなのはを止めなかったの?」
「それがなのはのしたいことだったから、だ。あの眼を見て、その決断を無下には出来ないよ。」
「そっか……」
「男の仕事の八割は決断。後の二割はおまけみたいなもんだ。だから、なのはの決断を無下にはしないって決断をしたんだ。」
「なにそれ?でも…かっこいいね。」
口許を緩ませて笑うフェイトに、俺も笑みを浮かべて微笑む。その様子に、リンディさんもクロノも口許を綻ばせて笑う。フェイトにはどうやら、周りを和ませる気質があるようだ。
「さてと、此方からも質問良いかい?」
「ええ、どうぞ?」
「俺っていつ帰れるの?」
俺の緊張感のない発言にズッコケる三人。
一応はやてには、友達の家で遊んでたらご飯をご馳走になって、泊まっていけって言われたからお言葉に甘えたと連絡はしている。少なくとも、明日の朝には帰りたいところだ。
「ま、まあ、明日の朝には家に帰そう。」
「ん、わかったよ。それと…あの仮面の男、いったいなのはに何をしたんだ?」
「…リンカーコアを引き抜いて、魔力を吸収していた。」
「魔力を吸収するなんて…まるで闇の書ね…」
クロノとリンディさんの顔が、一気に緊張したものへと変わる。クロノに至っては、手の甲を突き破らん力で握り拳を作っていた。
ここで俺は念話をシグナムへと向けて飛ばす。内容は、闇の書についてだ。
『シグナム、ちょっといい?』
『む…翼か。何か用か?』
『いや、落ち着いて聞いてほしいんだけど…今家にある闇の書って本物だよな?』
『何を言っている?本物に決まっているだろう?』
呆れ返ったシグナムの返答。当然と言えば当然なのだが。
『ちょっと調べてくれ。で、何かあっても騒ぐなよ?』
『何なんだ、まったく…っ!?こ、これは偽物ではないか!?』
最悪の予感的中と言わんばかりに顔を手で覆う。俺はどうしたものかと考えながら、シグナムに落ち着かせる。これで一つわかった。仮面の男は闇の書の復活を望んでいる。何が理由かはわからないが、それだけは確信できた。
「…闇の書、ですか。」
「ええ、今から11年前…封印の為に護送していた闇の書が暴走して…護送していた次元航行艦を取り込んでしまったの。そこには私の夫、クライド・ハラオウンが指揮をしていたの。」
「…そうですか。」
リンディさんが口を動かさなくなる。恐らく、その時夫を亡くしたのであろう。だからそれ以上は聞かない。
俺は暫く黙り混んでいる二人と、空気に耐えきれずオタオタとしているフェイトを見ながら仮面の男の事について話し出そうか悩んでいた。勿論、闇の書についても…。
「…ごめんなさい、しんみりしちゃったわね。お茶の御代わりは?」
「あ、もらいます。」
尚この後に出されたお茶はこの世の物とは思えないほど甘ったるく、飲んだ俺にフェイトとクロノが同情的な視線を送っていた。止めろよ、お前ら。
人数いる戦闘は難しいですね…。作者のディアです!
なのは「13000UA越えおめでとうー!」
あ、なのはちゃん、ありがとうございます。こんなに見ていただけるなんて、感謝の極みです。これからもこの小説をよろしくお願いいたします。
フェイト「今回は、私達のデバイスが壊れるシーンと…事実的な翼の負け、かな?」
翼「腹のダメージさえ無ければまだまだ戦えたんだけどな…」
執拗にお腹を狙われてましたもんね。腹パン主人公のタグでもつけますか?
翼「つけたら輪切りにするぞ?」
なのは「ま、まぁまぁ…」
シグナム「それにしても、翼とテスタロッサを相手取って互角とはな。」
翼「強い強い…。俺もまだまだ精進しないとな。」
クロノ「翼は達観しすぎじゃないのか?本当になのは達と同い年なのか、疑問に思うぞ?」
翼くんは本当に達観していますね。大人びている、といった方が良いのかもしれませんが…。
翼「ああ…早くはやてに会いたい。」
それではこの辺りで締めます。それと、最後には頭に思い浮かんだ劇場版風の嘘予告をおまけ収録させていただきます。
それでは次回もこの小説に。
翼&フェイト「「リリカル、アクセス!」」
以下、おまけ
──その少年は、初めて家族を知る──
「行くとこなかったら、ここに居ったらええやん。」
「良いの…?僕がいても…」
──少女は孤独から解放される──
──幸せな日々だった…──
「闇の書がはやてちゃんのリンカーコアを侵食しています。」
「どうすればいい!どうすればはやては助かる!」
「助けるには、闇の書を覚醒させるしかありません…」
──大切な人を救うため、少年は奔走する──
「邪魔をするなぁぁぁぁ!」
「フェイトちゃんと同じ顔!?くっ!」
「君はいったい!?」
──新な魔法少女と出会い、すれ違う──
「翼!おまえは早くはやての所に!ぜってー邪魔はさせねぇ!」
「ヴィータ!わかった!」
──家族を救うため、手を汚す──
「はやてちゃん…もうこの子は壊れちゃったんだ…」
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
──少女は絶望し、最悪の敵となる──
「はやてを…返せぇぇぇぇぇぇ!」
「お前も我が内側で、主と良い夢を…」
──絶体絶命──
「俺はっ!はやてを助ける!そう決めたんだ!」
「良かろう!ならばこの紫天一同がうぬの力となろうぞ!」
──新な仲間──
はやて…起きて……。
──少年は大切な人を救うことが出来るのか!──
劇場版 魔法少女リリカルなのはA´s 《棄てられたクローンと新たな家族》
──あなたに、大切な人は居ますか?──
今秋末公開!
『…行ってきます、母さん。』