部屋を出た武昭が海辺へ行こうと移動してると一夏がいた。
「おっ武昭も海に行くのか?」
「あぁ……本当なら部屋で休んでようと思ったけど山田先生に思い出でも作ったらどうかって促されてな……」
「っ!……そうか、ん?おぉ、箒もこれから行くのか?」
武昭の言葉に一瞬顔を顰めた一夏だったが前にいた箒に気づくと表情を直して声をかけた。
「ん、一夏に武昭か、あぁそうだ」
「そうか、ん?なぁ2人とも……これって……」
合流した3人が廊下を歩いていると一夏が中庭にあったある物に気づいた。
それは機械で出来たウサミミで近くに[引っ張ってください]と看板があった。
「知らん、私には関係ない」
「えーと……抜くぞ?」
「いや一夏、抜いても意味がないと思うぞ?」
それを見た箒は我関せずと言った態度を見せ一夏が抜こうとしたが武昭がそれを止めた。
「どういう事だ?武昭」
「だって、束さんなら
一夏が止めた理由を尋ねると武昭が上を指さしたので空を見ると何かが落ちてくるのが見えて少しずつ大きくなっていき何か分かる程まで近づくと機械で作られたニンジンが中庭に落ちてきた。
「うわっ!?」 「やはりか……」
「ふふふ、久し振りだね!いっくん!箒ちゃん!」
ニンジンが開くと中から束が出て来た。
「それとたっくんも元気そうだね!」
「まぁ、元気と言えば元気ですけどね
武昭が右腕を見せると束は表情を暗くした。
「あっ……そうだったね……たっくん、明日にでも
「えぇ、束さんにも都合があるから俺は良いですよ」
「おいっ!武昭!お前のその腕って束さんが関係してたのか!?」
「まぁ、束さんと俺の立場の関係上話す事は出来なかったんだよ」
「そういう事情があったのか……」
「じゃあ私はちーちゃんに会ってくるから皆は楽しんできてね」
そう言った束はその場から離れた。
「それじゃ海にでも行くか」
「ん?武昭、お前は水着に着替えないのか?」
「そうだな、俺はあまり
「そうなのか?じゃあ俺は着替えてくるよ、じゃあな」
一夏は更衣室に向かったが箒は軽く何か悩んでいるように見えたので武昭が声をかけた。
「ん?箒……何を考えてるか分からないけど……取り戻せる間違いと取り戻せない間違いがあるって事を忘れるなよ……」
「なっ!?それはどういう意味だ!!武昭!!」
「俺はもう父さんと母さんに会う事が出来ないけど、箒はその気になれば束さんに会う事が出来るんだ……まぁ俺もなんでこんな事を言ったかわからないけどな……とにかく後悔する事はするな……」
「武昭……あぁ……私も着替えに行くよ……」
箒も武昭と別れて更衣室に向かったがその表情は何処か思い詰めている様に見えた。
武昭が浜辺に着くと何人かの生徒が水着に着替え終えていた。
「さてと、俺はどうするかな……」
「武昭!みーつけた!!」
「おっと、誰かと思えばスズだったのか」
「もーう鈴、行くのが早すぎるよー」
武昭がどうするか考えてると誰かが背中にぶつかって来たので見ると水着に着替えた鈴で、それから少し遅れてシャルロットも来た。
「その水着って一緒に行った時に買った奴か。やっぱりこういう場所で見るとまた違った魅力があるんだな」
「そうかな?褒めてくれてありがとう(んーん!やっぱり武昭って真っ正直に感想を言うから嬉しい!!)」
「えへへ、これにして良かったよ(武昭は自分の気持ちをはっきり言ってくれるから気持ち良いな)」
鈴とシャルロットは武昭に褒められてそれぞれ顔を赤くして喜んでいた。
「それよりも武昭は水着に着替えてないの?」
「あぁ、俺は泳がないからコレで良いんだよ」
「じゃあ、そこで休んでましょうよ」
シャルロットが武昭の格好について疑問に思うが意見を聞くと鈴が用意されていた休憩スペースをさしたのでそこに向かった。
休憩スペースで休んでると簪と本音が来た。
「武昭達はここに居たんだ……」
「やっほ〜
簪が声をかけて本音が水着の感想を聞いたが、それを見た3人は同じ気持ちだった。
「「「それって水着なのか?なの?だったの?」」」
本音の格好はパッと見ると狐の着ぐるみだった。
「うん、ちゃんと水着売り場にあったし、この中は水着なんだよぉ〜」
「ダイビングのウェットスーツみたいな物なんだな」
「そう思った方が良いよ、それよりも……」
「簪、武昭は泳がないからその格好なのよ」
簪が武昭の姿を見て何か言おうとする前に鈴が理由を答えた。
武昭の姿は上下濃紺のラッシュガードで薄い黄色のパーカーを羽織った格好だった。
「それに
女子達は武昭が右腕を上げるとどういう事か理解した。
その後……
「ふぅ……こうしてるだけでも結構気持ち良いな……」
武昭が用意された休憩スペースでいると周りには鈴、シャル、簪、本音が一緒に休憩していた。
「うん、武昭の言う通りだね……海風が良いね……」
「鈴は泳ぎに行かないの?」
「そうねー……今はこうしてる方が良いわ……(また武昭がいなくなったら、嫌だから……)」
「なぁ……こんな時になんだけど……皆は昔の俺を知ってるんだよな?どんな奴だったんだ?」
簪、シャル、鈴が話してると武昭が話を切り出してきた。
「うーん……私が知ってるんだよなあきっちは強くて優しいって事かなぁ〜」
「うん、本音の言う通り……」
「僕が覚えてるのは子供の頃だけど優しかったって事は変わりないかな?」
「私が1番印象に残ってるのは……それよりも、そろそろお昼の時間じゃない?」
皆が話してる中、鈴が時間に気付いたのでお昼を食べに行く事にした。
1年生達が臨海学校に来てる頃、学園では……
「うーん……虚ちゃん、次の書類を貰えるかしら?」
「お嬢様、キリがいいので先にお昼にしましょう」
楯無と虚が生徒会の仕事をしていた。
「はぁ……今頃、簪ちゃん達も遊んでる頃かしら?」
「そうですね、毎年1日目は自由行動2日目から兵装訓練などですからね。お嬢様、何か飲み物を淹れますか?」
「そうねー……だったら、
楯無はある事を思い出すと虚にそれを頼んだ。
少しして……
「どうぞ、お嬢様……武昭君が買ってきてくれたカップに淹れましたよ」
「うん、ありがとう虚ちゃん」
楯無は虚が持ってきたティーカップを見てニコニコしていた。
「それは武昭君がお嬢様の為に買ってきてくれたんですよね?」
「えぇ!自分達だけ海に行って申し訳ないからって」
「昔の事を覚えてなくても武昭君は武昭君ですね」
「そうね……優しくて強くて……それでいて何処弱い所がある……昔のままだわ……」
「織斑先生から事情が聞かされてますが、いつになれば武昭君は私達が知る彼になるんでしょうか……」
「先生も言っていたじゃない、焦っちゃダメよ……必ず武昭君の記憶は戻る筈だから……」
楯無は優しく微笑んだ。
「お嬢様の言う通りですね、それでは仕事を再開しましょう」
「その前にもう一杯貰えるかしら?」
「はい、構いません……キャッ!?」
楯無がお代わりを虚に頼んでカップを受け取ろうとした時、何故か真っ二つに割れて床に落ちた。
「虚ちゃん!大丈夫!?」
「は、はいっ、大丈夫です……けどなんで急にカップが……」
「何かしら……何か嫌な予感がするわ……虚ちゃん、急いで織斑先生達に連絡をしてちょうだい」
「分かりました!!」
楯無の雰囲気から何かを感じた虚は言われた通りに花月荘に連絡を入れた。