「くそっ!!」
突然の一撃を紙一重でかわし、収容室から脱走する。一体俺が何をしたというのか?
「突然何をするんだ!?」
「ふん、この施設の虫けらどもはすべて同罪だ。万死に値する」
収容室の中から出てきた『O-03-i20』は、再びこちらに手の先を向ける。その手には悍ましい死の気配が集まり、閃光となってはじける。
俺はその攻撃を何とかよけながら、何とか体勢を整える。さすがに収容室の中は狭すぎて戦いにくかったが、ここでなら何とかなる。
こいつがなんでこんなに切れているのかわからないが、そっちがやろうとしているのであればこちらもやるしかない。
「さすがにそんな理由で殺されてたまるかよ」
「そんなことは気にするな、どのみち無意味に死ぬのだ」
『O-03-i20』の手が変化し、鋭い爪が出現する。そして手のひらに死の気配が濃縮され、爪に流れる。
俺も“墓標”を構えて反撃の準備に入るが、正直こいつにどれだけこのE.G.O.が通用するかわからない。とにかく増援が来るまで持ちこたえるしかないだろう。
『『O-03-i20』が脱走しました、エージェントの皆様は至急鎮圧に向かってください』
「ふん、下らん。だが貴様らのほうからくるなら手間が省けるというものだ」
そう語りながら、一気に接近してこちらに攻撃を加えてくる。爪による斬撃を何とか“墓標”で受け止めながら、少し距離をとる。こいつ、動きが速いうえに攻撃が重い、それに死の気配も感じることから一撃でも受けるとまずいかもしれない。
「さて、そろそろ肩も温まってきたところかな?」
「いや嘘だろ!?」
先ほどまででも結構攻撃の速度が速かったのに、いきなり速度が跳ね上がった。こいつ一体どうなってやがるんだ!?
爪による切り裂きを“墓標”で弾き、その勢いのまま石突で攻撃しようとするが軽く体をひねられてよけられてしまう。攻撃をよけられてもその回転のまま切り裂こうとするが、嫌な予感を感じたので横に体をねじって回避する。
すると、さっきで俺がいたところを青白い光弾が突き抜けていった。どうやらいつの間にか攻撃の準備をしていたらしい。
予想外の攻撃に気を取られ、もう一度接近を許してしまう。何とか“墓標”の柄の部分で攻撃を受け止めることに成功したが、息つく暇もなく攻撃が繰り返される。
「はぁっ、はぁっ」
「ふむ、意外と粘るではないか」
「なんだよそれ、嫌みか?」
「いやいや、お前たち人間に対する最大限の称賛だよ」
そういいながらも攻撃する手は止まらない、どうやら本気で俺を殺すつもりのようだ。あまりの攻撃速度に防戦一方の状況が続いたが、そこに変化が現れる。
「ぐおっ!」
「ジョシュア、大丈夫?」
「全く、何をやっているんだ?」
「シロ、リッチ!」
どうやら時間稼ぎに成功したらしい。なんとか増援が来るまで持ちこたえることができた。
シロが放った調律の弾丸が『O-03-i20』の頭に直撃し、隙ができる。その瞬間に俺とリッチで接近し、E.G.O.を叩きつける。
「この、虫けらどもが!!」
ようやく『O-03-i20』に傷をつけることができると、『O-03-i20』は怒りを露にし、更に攻撃が苛烈になる。俺とリッチで牽制しあいながら攻撃を加え、シロが遠距離から打ち続ける。
攻撃を加える度に『O-03-i20』はボロボロになっていき、どんどん動きも鈍くなっていく。
「おのれ、こんな虫けらごときにぃぃぃ!!!!」
『O-03-i20』の手のひらに集まった死の気配が、剣の形となって俺に振り下ろされる。
「ぐあっ!」
油断していたつもりはなかったが、突然伸びたリーチに反応できず、そのまま受けてしまった。
膨大な死の気配が傷口から広がり、あとから痛みが追いかけてくる。戦闘中だと言うのに悶絶しそうになるのをなんとか理性で押さえ付け、武器を構えて心を落ち着かせる。
「こんなやつらにっ、負けて、たまるか……」
どうやら最後の悪足掻きだったようで、最後に調律の一撃を頭部にくらい『O-03-i20』は倒れた。
「はあっ、はあっ、なんとか、なったか」
「ジョシュア!」
胸に感じる死の気配を抱えて、『T-09-i97』*1に足を向ける。ふらふらの体をシロに抱えてもらいながら、なんとか歩いていくのだった……
「なるほど、そんなことがあったのかぁ」
「あぁ、本当に大変だった……」
あれから癒されるべく『O-03-i07』*2の収容室に向かって膝にのせながら頭を撫でまくっていた。『O-03-i07』はそれに嫌がるどころか、もっとやってと言わんばかりに頭を押し付けてくる。あぁ、何て可愛いんだ。
「そうだ、そういうことならおれさまがいいものをプレゼントしてやるぞ!」
「えっ?」
返事をするより早く、おでこの上辺りに違和感を感じる。ためしに触ってみると、なんだか小さく硬い出っ張りが生えていた。
「これでがんばるといいぞ!」
「……そうだな、頑張るよ」
なんと言うか、ありがたいんだけどたぶんそこまでの力はないんだろうな。だけど、その分自分への影響は無さそうだから良いとするか。
「それじゃあ俺はもういくよ」
「がんばるんだぞぉー!」
収容室から退出すると、最後まで『O-03-i07』は手を振ってくれた。
次の作業は『O-03-i20』だ、やつと戦ったあとにこれはなんだか気まずいな。
「なんだ人間、また来たのか」
「こっちだって何度も来たくはないな」
出会って早々にこれである。最初はもっと紳士的であったが、随分化けの皮が剥がれたな。
「むっ、貴様それは……」
「えっ、なんだよ?」
『O-03-i20』がまじまじと俺の顔を見つめてくるので何事かと思っていると、随分苦々しい表情になった。
「そう言うことなら、私も認めるしかあるまい」
「人間、光栄に思えよ」
「いたっ!」
突然『O-03-i20』がこちらに指を向けてきたかと思うと、側頭部から激痛が走った。
しばらく悶絶していると、苦痛のかわりに違和感を感じた。
「なっ、なんだこれは!?」
恐る恐る側頭部に手を伸ばすと、すごく立派な角が生えていた。
どうしてくれるんだ、これじゃあ寝返りがうてないじゃないか!!
「それを受け取ったらさっさと出ていけ、今私は虫の居所が悪い」
「……くそっ」
文句の一つでも言ってやろうかとおもったが、流石にもう一度こいつと戦うのは御免だ。言うとおりにさっさと退出することにする。
こうして俺は、強力な力を得ることになったのだ。
O-03-i20 『魔王シャイターン』 鎮圧完了