「その…… なんだ、随分きれいになったな」
「ううぅ…… 今言われてもあんまり嬉しくないですよぉ」
あの戦いから丸1日がたったお陰か、重症を負った職員も傷の軽い順番からどんどん復帰していった。
今俺の目の前にいるサラも、その一人だ。
彼女は早々に精神汚染を受けて退場してしまったが、すぐに対処されたおかげで大事にならずに済んだ。
そして、いつもの彼女とはずいぶんと違うところがある。いや、違うところだらけだ。
まず、お肌の艶が違う。モッチモチだしきめ細やかで、まるで赤ちゃんみたいな肌になっている。試しに触らせてもらったが、めっちゃぷにぷにでいつまでも触っていたかった。
次に、髪の艶も違う。もう艶もすごいし潤いもすごい、枝毛なんてなくてサラサラだ。白髪もなくなり頭皮もしっかりしている。
顔のできものやらシミやら残った傷やらも、すべて消えて全身が生まれ変わったようだ。
脱皮でもしたのかと疑いたくなるが、それでもここまできれいになることはないだろう。
これが、E.G.O.の力を100%引き出した結果か……
「あの戦いで早々に退場してぇ、自分だけ得するなんて嫌ですよぉ」
「まぁ、あの化け物相手じゃ仕方ないさ」
「でもぉ……」
「そんなに嘆くなら、次頑張ればいいさ。今のうちに強くなっとけ」
「それはぁ、言われなくてもしますよぉ」
サラは少し落ち込んでいたが、少しやる気が出てきたようだ。それはいいことだ。
「さすがにぃ、もうこれ以上の戦いはぁいやですけどねぇ」
「……そうだな!」
「えぇ、なんですかぁ今の間はぁ!」
少しうるさくなってきたので退散する。こういう時には作業に逃げるが勝ちだ。
今日収容されたアブノーマリティーは『O-01-i42』だ。しばらく人型が続くが、次は変なやつ出ないことを祈る。
収容室の前までくると、いつものように扉に手をかけてお祈りをする。そして手に力を込めて扉を開いて収容室に入る。収容室からは、少し肌寒い風が吹いてきた。
「さて、今日のアブノーマリティーはあんたか……」
収容室の中に入ると、そこには猫…… いや、虎の耳をした女性がいた。白に黒色の縞が入った毛皮がひじから手先まで続いており、手のひらには肉球がある!
それに顔にはひげがあり、鼻も虎のように黒の逆三角形だ。まさしく人間とネコ科の中間といった感じだろう。
……正直、なでたい。もとから小動物が好きで、猫も犬も大好きなのだ。あの耳を撫でまわしてムツゴロウしたい。
……だが、ダメだ。こちらを見ながら不安げな表情をしている『O-01-i42』を見て、考えを改める。いやいや、さすがに嫌がることはだめだ。そんなことをして嫌われてはいけない。
だ、だが作業なら仕方がないよな? だって仕事だもんな、俺の趣味じゃないもんな!
よし、行くぞ、やってやるぞ……
「はぁ、はぁ、大丈夫だからね……」
『O-01-i42』はおびえた目をして体を震わせる。大丈夫大丈夫、ちょっと愛着作業をするだけだから……
結局顔をひっかかれてしまった、悲しい……
大地によって命が育まれ、やがてその実りは恵みとなって還元される
この季節には、享受と還元が行われる
季節が巡るように、また大地の恵みも循環する
そして、恵と同時に終わりの季節が近づいてくる
実りを落とした木々は葉を枯らし、動物たちは眠りにつく
この季節には、喜びと悲しみが詰まっている
だから私は高らかに歌う
豊穣と儚さに思いを馳せて
O-01-i42 『白き大西の秋姫』