【完結】誰も知らないアブノーマリティー   作:名無しの権兵衛

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Days-40 O-01-i02『君の為の世界を作ろう』

―君の為の世界を作ろう―

 

 その言葉とともに現れたのは、純白の子ども。

 

 美しい三対の白い羽を広げて宙に浮く。

 

 男の子とも女の子ともとれる、中性的な姿。姿は幼いが、決して生まれたてには見えないからだ。これからの成長が期待できる可能性の姿だが、決して生まれたての弱弱しい姿ではない。

 

 それはこの地獄のような世界に舞い降りた天使のようで、得体のしれない怪物のようにも見える。

 

「お前は、なんだ……?」

 

 そして、それは見えない何かを抱えるように手を交差させると、その手の中に小さな球体が誕生する。

 

 ピンボールほどだった球体は、段々大きくなり、バスケットボールほどの大きさになる。

 

 

 

 その球体の中には、見たこともない世界が存在していた。

 

 どこまでも続く星海の中に存在する、一人ぼっちの小さな惑星。

 

 今はまだ何者でもない、真っ白な世界はどんどん色づいていく。

 

 そしてそこに生まれるのは、理想郷だ。

 

 この世界が完成した時、いったい何が起こるのだろうか?

 

 どうしようもない、悲しみのあふれたこの世界。

 

 果たして、こんな世界にこだわる必要はあるのだろうか?

 

 

 

「いや、何を考えているんだ!」

 

 気を取り直して、“墓標”を目の前の存在に突き付ける。

 

 この何かは、確実にやばい存在だ。放置しては置けない。

 

『ジョシュア、いったいどうなっているんだ!』

 

「おそらくだが、あの赤子が目覚めたんだと思う」

 

『なに!?』

 

「とりあえず『O-02-i24』*1にでも依頼をお願いできるか? いい加減あいつらにも働いてもらおう」

 

『わかった、『O-02-i25』*2にも依頼しておこう。それで増援が来るまで持ちこたえてほしい』

 

「了解した!」

 

 とにかく増援が来るまで持ちこたえるしかない。“墓標”を構えて純白の天使を注視する。最悪の場合『O-09-i87』*3を使用することも検討しなければならない。

 

「さて、それじゃあ行くぞ」

 

―いつでもおいで―

 

 目の前の存在、とりあえず『O-01-i01』としておくが、こいつに接近して攻撃を加えようとする。

 

 しかし、そう簡単にはいかず羽による薙ぎ払いがやってきた。

 

「いやいや、そんな使い方じゃないだろ!?」

 

 意外と大きい羽による攻撃範囲に驚きつつ、攻撃範囲ギリギリのところで押しとどまって『O-01-i01』を中心に円を描くように背後に回り込む。

 

―さぁ 僕を受け入れて―

 

 いくつもの白い羽が抜け落ちて、花吹雪のように空から舞い落ちる。その神秘的な光景は平時ならば心奪われただろうが、現状ではそうもいかない。

 

 背後から『O-01-i01』に攻撃を加えるが、思うような手ごたえはなかった。そして攻撃を加えたことにより、『O-01-i01』は後ろにゆっくりと振り向き、目が合った。

 

 『O-01-i01』は羽を上に掲げると、床に落ちている羽が集まり一つの球体となる。その球体は明らかに食らったらやばそうなエネルギーを感じる。

 

「なんでだよ!?」

 

 必死に後方に飛んで攻撃から逃れる。だが相手がこれくらいであきらめるはずがない、再びこちらに近づいてきて羽による薙ぎ払いが飛んでくる。

 

「くっ、息つく暇もない」

 

 虎穴に入らずんば虎子を得ず、こうなれば逆に接近して無理やりにでも攻撃の機会を作らなければ!

 

「おらぁ!」

 

 『O-01-i01』の足元を潜り抜けて背後に回る。そのまま足を切りつけ立ち上がり、背後に“墓標”を突き立てる。

 

―どうしたの 何も怖いことなんてないよ?―

 

 そういいながら『O-01-i01』が振り返りついでに羽で攻撃をしてくる。そんなことしてくるやつが怖くないわけがないだろうが!

 

「くそっ、なかなかうまくいかねぇ!」

 

 確かに攻撃をする機会はあるが、それもなかなか難しいうえにあまり効いている気配がない。できればもっと大きな隙が欲しいところだ。

 

「ジョシュア、伏せて!」

 

「うおっと!」

 

 そんな時に、この部屋に声が響いた。その声の通りに伏せると、『O-01-i01』に音符が突き刺さる。これは、シロの“調律”による狙撃か!

 

「シロ、助かった!」

 

「ジョシュア、気を付けて」

 

「あぁ、もちろんだ!」

 

 ここでシロが来てくれたのは大きい。今のところこいつは遠距離攻撃らしいことはしてきていない。ただ単に隠し持っている可能性もあるが、それでも攻撃の幅が広がるのはうれしいことだ。

 

「シロ、俺がひきつけるから攻撃を頼む」

 

「わ、わかった!」

 

 シロの正確な狙撃が『O-01-i01』の顔に直撃する。彼女の攻撃は恐ろしいほどによく当たる、今まで外しているところを見たことがないくらいだ。

 

「お前の相手はそっちじゃねぇぞ!」

 

 シロのほうへ向かおうとする『O-01-i01』に向かって切りかかる。さすがにあまり効いていないとしても、何度も攻撃を受けることは嫌なようだ。こちらにターゲットを変えて攻撃を仕掛けてくる、どうやら俺からつぶそうとしているようだ。

 

「さあ行くぞ!」

 

 俺の斬撃とシロの狙撃、それぞれの攻撃は着実に『O-01-i01』の体力を削っていった。しかしそこで、予想だにしていないことが起こる。

 

―まだだよ もう少し待っててね―

 

 『O-01-i01』が羽ばたくと、その風圧で吹き飛ばされてしまう。とはいえそこまで強い風でもなかったので空中で体勢を立て直して再び相対する。しかし何かさっきとは違うような気がする……

 

―さあ 張り切っていこう―

 

 その気軽そうな発言とは違い、『O-01-i01』の攻撃は苛烈なものであった。

 

 翼を羽ばたかせると羽がこちらに飛んできて、銃弾となって襲い掛かってくる。

 

 俺はそれを“墓標”で弾きながらシロを守る。しかしいくつか弾き切れずかすってしまう。

 

 試しにかすったところを触れてみると、傷がない。どうやら精神汚染系の攻撃のようだ。

 

「シロ、気をつけろ」

 

「も、もちろん」

 

 先ほどと同じように、前衛と後衛に分かれて攻撃を開始する。片方に意識が向いている間にもう片方が攻撃を加える。先ほどとは違ってうまく攻撃を加えることは難しくなってしまったが、うまくいっているように感じる。

 

「おいおい、楽しそうなことをしてるじゃないか!」

 

「来たかカニ野郎」

 

 そして次にやってきたのは、『O-02-i24』だった。普段は面倒な奴でしかないが、こういう場面ではそこそこ頼りになる。

 

 この調子だと『O-02-i25』ももうじき来るだろう。

 

―君はいらない―

 

 しかし、『O-01-i01』はカニがお気に召さなかったらしい。『O-02-i24』に翼から羽を飛ばしながら接近し、その翼をたたきつける。

 

「うおっ、なかなかやるじゃねえか!」

 

 そんな『O-01-i01』の攻撃に何とか耐えながら反撃する『O-02-i24』だったが、それも長くは続かなかった。

 

 俺たちも加勢して一緒に攻撃を加えていたが、そんなことはお構いなしに『O-02-i24』に攻撃を加えていく『O-01-i01』。そしてついに、その攻撃に『O-02-i24』は耐えきれなくなりつぶされてしまった。

 

「くそっ、さすがにこいつ相手は無理か!」

 

―さぁ 邪魔者はいなくなったよ―

 

「まずい、何か来るぞ!」

 

 『O-01-i01』がその翼で体を包んだと思ったら、勢いよく翼を広げた。

 

 その翼から純白の風が巻き起こり、部屋中のすべてを蹂躙していく。

 

 “墓標”を構えて防御の姿勢をとるが間に合わない、このまま直撃を受けるかと思ったが、それを大きな貝殻が受け止めてくれた。

 

「まったく、呼ばれたと思ったらいきなりこれか」

 

「すまん、『O-02-i25』か、助かった」

 

「気にしないで、それが僕の仕事だから」

 

―また邪魔者―

 

 『O-01-i01』はアブノーマリティーがお気に召さないのか、また攻撃的な表情になる。もしかしたら彼の世界にアブノーマリティーは必要ないと考えているのかもしれない。

 

「あらら、これはやばそうなやつだね」

 

「悪いな、手を貸してくれるか?」

 

「まぁ、僕たちは君たちと違って死なないからね」

 

 『O-02-i25』に攻撃を受けてもらいながら『O-01-i01』に攻撃を仕掛ける。俺たちの攻撃は確実に『O-01-i01』を削っているというのに、それを無視してまで『O-02-i25』に攻撃を仕掛けている。それほどまでに憎いのだろうか?

 

 そんな時に、『O-01-i01』を斬撃が襲った。

 

「ジョシュア先輩、大丈夫ですか!?」

 

「パンドラ、後で覚えとけよ!」

 

「えぇ、なんで!?」

 

 どうやら“魔王”を装備したパンドラが斬撃を飛ばして援護してくれたようだ。その後ろにもリッチとメッケンナがいる、どうやら加勢に来たようだ。

 

「ジョシュア、大丈夫か?」

 

「ジョシュアさん、助太刀します!」

 

「助かる、こいつはアブノーマリティーを優先して攻撃するみたいだから、今がチャンスだ!」

 

 『O-01-i01』が『O-02-i25』に気を取られている間に、全員で切りかかる。

 

 シロが“調律”で狙撃しパンドラが“魔王”で斬撃を飛ばす、リッチが“簒奪”で攻撃しながらメッケンナが“エンゲージリング”で削っていく。そして隙ができたところを俺が“墓標”で突き刺していく。

 

 すると、『O-01-i01』にまた変化が訪れた。

 

―大丈夫 大丈夫だよ―

 

「まずい、何か来るぞ!」

 

 『O-01-i01』の目の前に巨大な黒い球体が現れたと思ったら、それがどんどん小さく凝縮されていく。そしてその球体から光が漏れ出して何かが起ころうとしている。

 

「みんな射線上から離れろ!」

 

 そして、黒い光が放たれ、『O-02-i25』が呑まれて消えてしまった。その光はどこまでも伸びていって、壁の向こうまで届いて消えてしまった。

 

「まずいな、明らかに攻撃手段が増えていっている」

 

「ま、まって、なにかあるかも」

 

 このままだとさらに攻撃が通りにくくなっていくかもしれない。そう思っていたが、シロが何かも気が付いたらしい。

 

「た、たぶんボクの攻撃がさっきよりも通ってるみたい、今ならどうにかなるかも」

 

「そういえば、さっきは俺の攻撃もよくとおっていた」

 

「私の攻撃はなかなか効いている感じはしませんでしたけど……」

 

「なるほど……」

 

 もしかしたらどんどん耐性が変わっていっているのかもしれない。それならこの調子で攻撃していけばそろそろPダメージも通るようになるかもしれない。

 

「シロ、なるべく攻撃回数を増やせるか?」

 

「や、やってみる!」

 

「リッチ、メッケンナ、シロを援護するぞ!」

 

「「了解!」」

 

「先輩私は?」

 

「シロの援護をしながら斬撃を飛ばしてくれ!」

 

「わっかりました!」

 

 とにかく接近して攻撃し、『O-01-i01』の気を引き付けていく。気が付けばラッパの音色が聞こえてくる、『T-09-i84』*4を誰かが吹いてくれているのか。

 

―っ どうして あと少しなのに―

 

 『O-01-i01』の攻撃をよけながらダメージを与えていると、『O-01-i01』はうずくまり始めた。よく見ると青白い光が漏れ出している。

 

 ……これはまずいのでは?

 

「いやな予感がする、全員一斉に攻撃を叩き込め! ここで仕留めるぞ!」

 

「了解!」

 

 うずくまって移動も攻撃をしない『O-01-i01』に、全員で一斉に攻撃を仕掛ける。そうしている間にも『O-01-i01』から漏れ出す光はどんどん大きくなっていく。

 

「間に合えぇぇぇ!!」

 

 願いを込めた一撃が、『O-01-i01』の胸に突き刺さる。

 

 そして、ついに天使のような怪物は崩れ落ち、この施設に平穏が訪れる。

 

「なっ、何とかなったか……」

 

 パンドラ以外のみんなが喜ぶよりも疲れが先にやってきた。なんなんだあいつは?

 

 そして何とかエネルギーがたまったので、純化が始まり収容室を後にしたのだった……

 

 

 

 

 

―またきてくれたね―

 

 俺は再び『O-01-i01』…… いや、『O-01-i02』の収容室に来ていた。

 

 やはりあの天使のような怪物は、赤子が成長した姿だったようだ。

 

 『O-01-i02』は無邪気に語りかける、そこには悪意なんてなく、ただただ純粋な善意しかなかった。

 

―ごめんね あの世界はお気に召さなかったみたい―

 

―だからこれはほんのお礼―

 

 その言葉と共に!背中に強烈な痛みが走る。

 

 右肩の肩甲骨辺りから、E.G.O.を突き破ってなにかが勢いよく飛び出したと思ったら、それは純白の翼であった。

 

「おいおい、これって……」

 

 天使は微笑む、力を受け取った俺に対し、いつまでも……

 

*1
『鋏殻』

*2
『宿殻』

*3
『搾取の歯車』

*4
『終幕の笛』

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