「ジョシュア、最近疲れてる?」
「シロか、ちょっとな……」
最近虫続きでずいぶん参っていたのが表に出ていたようだ。
どうやらシロに心配されるほど、俺は疲れていたようだ。デザートを食べていたシロが心配そうに俺の顔も覗いてくる。
ちょっと顔が近いぞ。
「ねぇジョシュア、本当に大丈夫? 今度は顔が赤くなってるよ?」
「あ、あぁ大丈夫だ。心配しなくてもいい」
「えっ、でも……」
「大丈夫だって、それよりもアイス溶けるぞ」
「それよりもジョシュアが心配」
「……本当に大丈夫だ、次の作業の後に癒しコースに行くから」
「……それならいいけど」
いつもの癒しコースに行くことを伝えたら、シロは心配そうな顔をしながら食事に戻った。アイスは少し溶けてしまったようだが、それでもおいしそうに食べている。
シロの表情から、本気で心配しているのがわかる。ここまで表情が豊かになったのはうれしいが、正直情けない理由だからあまり心配されたくない。
とはいえせっかく心配してくれているのにそのままというのもあれだしな、なるべく早く元気な姿を見せれるようにしたい。
「さて、それじゃあ俺はそろそろ行くよ」
「えっ、もう少しゆっくりしていっても……」
「大丈夫だよ、すぐに終わる」
席を立って作業に戻る。こういうことは早めに終わらせてしまうに限る。
今日収容されたアブノーマリティーは『O-01-i41』だ、今日は虫の心配はなさそうだ。
……まさか虫人間とかはないよな?
「まぁ、そんなことを考えても仕方がないよな」
とりあえず嫌な考えを頭から追い出して廊下を歩く。虫が続いていたがちょっと前まで人型ばかりが収容されていたからな、できれば変なやつ出ないことを祈ろう。
「さて、もう着いたか」
気が付けばすでに『O-01-i41』の収容室の前まで来ていた。
俺はいつものように扉に手をかけてお祈りをして、扉を開く。収容室からは少し暖かい風が吹いてきた。
「うおっ、暑い……」
収容室の中は随分と蒸し暑かった。
かつての夏を思い浮かばせるその暑さに辟易しながら収容室の主に目を向ける。そこにいる彼女は思うが儘に舞っていた。
「さて、できれば面倒な奴でなければいいが…… はっ!?」
それは、赤い髪をした情熱的な少女であった。赤い髪に赤い瞳、そして赤を基調とした少し露出の多い着物を纏って舞っている。
その舞は情熱的で、着物を着ている姿からは少しイメージが付かないようなものだった。自分が思うままに踊りその情熱をぶつける、それがなぜか彼女らしいと思ってしまった。
そして、何よりもその背中の羽! その羽は赤くて、何よりモフモフしていた。正直一番俺が求めていたものだった。
なんせなぜか『O-01-i42』*1の収容室は出禁になってしまってモフモフが俺の人生に足りなくなってしまっていたのだ。
今まで手に入らないと思っていたから我慢できたが、それが目の前にあるのに手を出すことができないのは生き地獄だった。
しかし、今目の前にはその求めてやまないモフモフがある。俺はそれに手を伸ばそうとして……
「いや、待て落ち着け」
そこで、かつてのことを思い出す。俺が『O-01-i42』の部屋を出禁になってしまった時のことだ。
あの時の女性陣の冷たい目線は今でも忘れられない、シロにあんな目で見られたのもつらかったが、パンドラにすらあんな表情をされるとは…… いや、元からそうか。
今ここであの時と同じことをして怖がられては、あの時の二の舞になってしまう。それだけは避けなくては。
「よし、それじゃあなるべく機嫌を取らないとな」
そう思って一緒に踊ろうと思ったが、かつて『T-01-i21』*2への作業で踊ったときは不評だった。そう考えると今回は失敗できない、却下だな。
「そうなると、これしかないか」
音楽プレーヤーを取り出して、彼女の舞に合いそうな曲を流す。
すると彼女は驚いた顔をしたが、曲に気が付くとすぐにリズムに合わせて踊り始めた。
「おっ、いい感じだ!」
彼女の踊りに合いの手をはさみながらほめていく。すると彼女は随分と嬉しそうにしながらさらに楽しそうに舞っていく。
そうしているうちに、曲がついに終わった。彼女は随分と楽しかったようで俺のほうに駆け寄ってきた。
「よかったな」
ほめてほしそうにしていたので、彼女の頭をなでる。すると彼女は嬉しそうに頭を俺の手にこすりつけてきた。
……これならいけるのでは?
「おっと」
偶然を装って背中の羽に触れる。それはとても柔らかくふわふわしていて、ほんのり暖かかった。あぁ、これこそが俺の求めていたモフモフだ……
しかし、自分の羽に触られたことに気が付いたのか、『O-01-i41』は顔を真っ赤にしながら体を離し、羽をすぼめた。そんなに羽に触られるのが嫌だったのか……
「す、すまん、そんなに嫌がるとは思わなかった!」
恥ずかしそうにしている彼女に謝罪する。すると顔を真っ赤にした彼女は肩を抱きながらジト目で俺のことを見て、恐る恐るという感じで片方の羽をこちらに伸ばしてきた。
「……これは、触ってもいいってことか?」
俺の問いに、彼女は恥ずかしそうに頷いた。お許しが出たので恐る恐る触ってみると、彼女は顔を赤らめてうつむいてしまった。
「大丈夫か?」
俺の言葉に彼女は頷く。さすがに無遠慮に触って嫌がられたらいやなので、宝物に触れるように優しく
丁重に触る。ふさふさしていて気持ちがいい。
「もうちょっといいか?」
もう俺の言っていることが聞こえているのか聞こえていないのか、彼女な頷くばかりだ。
「それじゃあ遠慮なく」
せっかくお許しが出たのだ。思う存分触ることにしよう。
背中の羽に顔をうずくめながら思うがままに羽をモフる。
あぁ、これが俺の望んでいた理想郷か。なんてすばらしいのだろうか……
「おっと、大丈夫か?」
しかし素敵な時間にも終わりが訪れるものだ。彼女はなぜか俺のほうに倒れてきたのだ。
顔は赤くなんだか少し扇情的だ、いったいどうしてしまったのだろうか?
「少し踊りすぎて疲れたのか? それならそろそろ終わりにするか」
彼女を横にしてやり頭をなでる。すると彼女は嬉しそうに笑みを浮かべた。
「なぁ、また触ってもいいか?」
彼女の頭をなでながら聞くと、びっくりした顔をしてものすごい勢いで首を振られた。そんなにいやか……
「そうか、無理を言って済まない」
もうこの天国を味わうことはできないのか、それは少し残念だ。
思わずしょんぼりしていると、何か感じることがあったのか少し顔を恥ずかしそうにしながら、控えめに頷いてくれた。
「本当か、ありがとう!」
それにしても、こんなところでモフモフ成分を得ることができるなんて思いもよらなかった。
これからもモフらせてくれるみたいだし、よろしくな!
「あっ、ジョシュア!」
『O-01-i41』の収容室から出ると、シロが出迎えてくれた。どうやら随分と心配してくれていたらしい。
「よかった、もう大丈夫そうだね」
「あぁ、心配してくれてありがとうな」
「……あれ、あんまり嗅いだことがない臭いがするような」
「えっ、さっきのアブノーマリティーの匂いかな?」
「いや、これは、女の子の臭い?」
「えっ、そんな匂いが付くようなことはなかったと思うけどな……」
「ふーん……」
もしかしたらさっきのことがばれたのか? いやまだ怪しんでいるところだ、まだ大丈夫だ。
「そうだ、今から『T-01-i12』*3の収容室に行くけど一緒に行くか? チョコレート好きだろ」
「う、うん行く!」
とりあえず今から一緒に癒しコースに行くことにする。最近あまり話せていないし、せっかくだから一緒に過ごすとしよう。
命は芽吹き、生命は躍動を始める
命は沸き立ち世界が彩る
この世に活気があふれて自由の風が吹く
今、私は自由だ
この世界の生き物たちが自由に生きているように
私も自由に好きなことができるのだ
だから私は舞い続ける
私のすべてを込めて、全力で
そう、私の燃ゆる心は日差しのよう
O-01-i41 『朱き南薫の夏姫』
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