今日も目が覚める、地獄のようなこの場所で……
「おはようメッケンナ、早いですね」
「ミラベル、おはよう。今日もかわいいね」
「何言ってるんですか、馬鹿!」
今日も最愛の人の頬を撫でて意識を覚醒させる。彼女はミラベル、かつては生意気な後輩だったが、今では誰よりも大切な人となった。まぁ、あまり人に変なあだ名をつけるのはどうかと思うのですが。
「それよりも、そろそろ仕事だよ」
「はぁ、そうですね。もう少しゆっくりしてもいいのに……」
とりあえずベッドから出て、身支度をする。とはいえ一緒に出ると気づかれてしまうので、少し時間を空けてから職場に行くことになっている。それに一緒の部屋から出るのを見られるのも嫌なのでなるべく早い時間に部屋を出ることになっている。
「それでは、またあとで」
「もう、ひどい!」
怒る彼女も又かわいい。だけど機嫌を悪くさせてしまうのも申し訳ないので、後でプレゼントを渡そう。
「あっ、そうだ」
部屋から出ようとすると、ミラベルが何かを思い出したように手をたたいた。
何事かと思って後ろを向くと同時に、暖かいものが頬に当たる。
「ふふっ、今日も一緒に生き残りましょうね!」
「えぇ、もちろんです!」
たとえこの地獄でも、せめてこの笑顔だけは守ろう。
「ようメッケンナ、どうしたんだ?」
「ジョシュアさん、シロさんがいるのにまた密会ですか?」
「お前が知ってる時点で密会じゃないし、相手は男だぞ!」
今目の前で反論している彼は、ジョシュア先輩だ。この施設で最初から生き残っている最古参であり、どんな困難も自ら先陣を切って立ち向かっていく偉大な人物でもある。
そして何より、あの暴走機関車とでもいうようなパンドラさんのストッパーでもある。そう、あのパンドラさんの!
正直彼がいなければパンドラさんのせいでどんな被害が出ていたかわからないほどだ。
だが、それだけで安心することはできない。そもそも彼もどちらかというとやらかす側だ。
女性型アブノーマリティーに片っ端から粉をかけ、パンドラさんだけであろうと考えられていたアブノーマリティーの収容室からの出禁というある意味偉業をやってのけた。
さらには時にパンドラさんと一緒に結託して、色々な厄介ごとをやってのけることがある。とにかく食い意地が悪いし、自分の欲望に正直だ。
様々な功績に隠れがちだが、パンドラさん、サラさんに並ぶ三大騒乱者の称号を得ている。普段はまともな分、騒動を起こす側に回られるとだれも止められる人がいない。
「嘘ですって、冗談ですよ」
「まったく、変なことを言うのはやめてくれ」
「そうですよね、シロさんに聞かれたら大変ですもんね」
「あぁ、ここにいたか」
二人で談笑していると、そこに割り込むように不気味な雰囲気を纏う声が聞こえた。
抽出部門のセフィラ、ビナーだ。ビナーとは正直かかわりがないが、それでも少しのかかわりでやばい奴であることがわかる。機械なのに人間の負の側面をつぎ込んだかのように不気味だ、正直かかわりあいたくない。
だが、ビナーの目的はジョシュア先輩のようだ。彼がゲブラーに気に入られてからというもの、なぜか目をつけられてしまっている。
「悪いなメッケンナ、少し抜ける」
「あっ、ジョシュアさん……」
「大丈夫だ、取って食われたりはしないさ」
ジョシュア先輩は笑顔でそう告げながら、ビナーと一緒に歩いて行った。大丈夫だろうか?
「あっ、メッケンナ君、こんにちわ!」
「げっ」
そこに、やばい奴が現れた。珍獣、理解できないもの、もはや人間じゃない、アブノーマリティーよりアブノーマリティーしてる、一種の事故として扱え、などさまざまな言われようのパンドラさんだ。
彼女のやらかした逸話は数えきれない、アブノーマリティーでキャッチボール、アブノーマリティーの収容室から出禁、アブノーマリティーアイドル化作戦、ジョシュア先輩とやらかした少数精鋭幻想体強襲調理作戦など、数えればきりがない。
一度僕の股間に満杯の『T-09-i96』*1をぶっかけて破裂しそうになったときは本気で殺意がわいたほどだ。まぁそれでもひとかけらほどの罪悪感はあったようで、それ以来彼女からの被害が少し減ったのはありがたかったのですが。
「どうしたんですか、変な顔をして?」
「いえ何も、それよりもどうしてここに?」
「ちょっとジョシュア先輩を探していたんですけど……」
「あぁ、それなら今ビナーに連れていかれましたよ」
「えっ、そうですか、なら仕方がないですね」
「えっ!? どうしたんですか!?」
あの自分勝手なパンドラさんが早々にあきらめただと!? もしかしたら明日は大地震でも起きてこの施設のすべてが崩壊してしまうのではないだろうか? そう思えるほどの衝撃だったが、どうやら彼女はそれが不満だったようだ。
「なんですかその反応、ただちょっと彼女が苦手なだけですよ」
「えっ、ビナーが? そういえばゲブラーも苦手って言ってましたね」
「というか、セフィラ自体があまり……」
「あぁ、まあわかりますよ」
セフィラは機械のくせに妙に人間的で、なんだかそのギャップがものすごく気持ち悪いというか、不気味に感じてしまう。自分勝手な連中であるという認識が強かったけど、最近はだいぶましになってきた気がする。
それにしてもパンドラさんに苦手な存在がいるとは驚きだ。この人ならゴキブリでも踊り食いしそうなのに……
「あぁそういうことなら別にいいです、後でもいいことですからね」
「また変なことをしようとしていませんよね?」
「なんでそんなに信用がないんですか!」
「自分の胸に手を当ててください」
「えっ、おっぱいしかないですよ?」
「……はぁ」
なんというか、この人は本当に相手がしづらい。できればあまり関わり合いたくはないが、なんだかんだで彼女に心を救われている人もいるので、この施設になくてはならない存在なのかもしれませんね。
確かに元気な性格と大きな胸は魅力が詰まっています。
それでも僕の彼女には遠く及びません! ミラベルの普段とのギャップとか、かわいらしい笑顔とか、彼女には全く備わっていませんからね!
そもそも、悪だくみしている顔とか、ジョシュア先輩に折檻されて喚き散らしたり涙目になっている表情しか出てきません。胸に関してはノーコメントで。
「まぁいいです、またねメッケンナ君!」
「はい、また今度」
そう手を振りながら彼女は出ていった。
そろそろ僕も仕事に戻ろうかな。とりあえず記録部門に向かうとしよう。
「あらぁ、メッケンナ君ご無沙汰ねぇ」
「えぇ、サラさん、お久しぶりです」
こんな日に限って最悪だ。最後の三大騒乱者、サラさんに出会ってしまった。
彼女は一言でいうと、ギフト狂いだ。なんでも他者の意思が自分の中に溶け込んで混ざるのがとても快感らしい、ひぇ。
ほんわかした見た目としゃべり方とは裏腹に、ギフトの為なら自分の安全すらかなぐり捨てるほどのマッドさがすべてを台無しにしているやばい奴である。
ギフトの為なら何でもするので、彼女もよくやらかす。自らをイケニエに差し出そうとしたときはさすがに引いた。
「どうしたんですか? 最近何かに熱中していたみたいですが」
「それがねぇ、ジョシュア先輩がうらやましくってぇ、最近頑張って『O-01-i02』*2の作業をしているんですよぉ」
「えっ、あんな危険なアブノーマリティーの!? あなた死ぬ気ですか!?」
「その価値があると思ってやってるんですよぉ、それにぃ、そのおかげもあって最近ようやくレベル5職員に昇格したんですよぉ」
「何やっているんですか……」
想像以上のギフト馬鹿に、思わず頭を抱える。この人は馬鹿だと思っていたけど、想像以上だった。
「それじゃあ私はぁ、次の作業があるのでぇ、これで失礼しますねぇ」
「えぇ、気を付けてくださいね」
「今更へまはしないわぁ」
そういうと彼女は、おっとりした足取りでどこかへ行ってしまった。
「はぁ、もう早くミラベルにあって癒されたい……」
「あぁそこの君、メッケンナだね、ちょっといいかい?」
「えっ?」
そこで声をかけてきたのは、記録部門のセフィラ、ホクマーだ。いったい何の用だろうか?
「君たちの仲のいい彼…… ジョシュアは今どこにいる?」
「あぁ彼なら安全部門ですよ」
「そうか、あの珍獣のせいで今日も話ができなかったな、ありがとう」
「……えぇ」
やはり、こいつらは信用ならない。いったいジョシュア先輩に何の用だろうか?
「それでは失礼するよ」
「それでは」
こうしてホクマーは離れていく。
……はぁ、早く癒されたい。
時間見たらかなりぎりぎりだった……
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これまでのような感じで幻想体変えて二週目
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