風の吹かないはずのこの施設に、冷たい風が吹き荒れる。それは命を奪う冷たい風。
「なんだこの風は、もしかして『O-01-i33』*1が脱走……」
やがてそれは温もりを奪い、牙をむき始める。
緩やかに吹く風がうねりをあげて部屋中に吹き荒れ、そして爆発のように風が吹き荒れて体が壁にたたきつけられた。
「ぐっ!!」
強力な一撃に思わずうめき声をあげる。最初は『O-01-i33』*2かと思ったが、周囲にやつの姿は見られない。さすがにやつもその場にいなければこんな攻撃はできないはずだ。
「い、いったい何が……」
痛む体を無理やり起こして、周囲を確認する。周りのものはすべてボロボロになっており、ずいぶんと散らかっている。
『まずい、今中央の人型存在が強力な風を発生させた。やつの攻撃で施設全体に被害が発生した』
「くっ、大丈夫なのか?!」
『厄介なことに、オフィサーがほぼ全滅したせいで『O-02-i24』*3が脱走した。それに『O-02-i23』*4と『O-02-i25』*5までもが暴れまわっている』
『他の被害は、アセラの精神がもう限界だ。これ以上はパニックになる可能性を考えてマキとともに『T-09-i97』*6に向かっている』
「なるほど、つまりは最悪だってことか」
かなりまずいことになった。こうなったらこれ以上時間はかけられない、この戦いをすぐに終わらせなければ……
「わかった、こうなったらすぐに中央第一を鎮圧する。安全のほうはどうなっている?」
『安全部門は今リッチが奮闘してくれている。すぐにシロとミラベルが到着する、そっちはメッケンナとパンドラが頑張って戦っている。頼んだぞ』
「了解した!」
全力で中央第一に向かいながら通信を切る。俺は戦っていなかったから大丈夫だったが、戦闘中にあんな攻撃が飛んで来たらまずいかもしれない。
とにかく急いで向かわなければ……
「大丈夫か!?」
急いで中央第一のメインルームに向かうと、そこではメッケンナとパンドラが玄い亀と戦っていた。
しかし、二人は随分と疲弊しているにもかかわらず、玄い亀の傷はそれほでもない。エージェントの中でも上位に入る二人が戦っていて、いったいどういうことだろうか?
「ジョシュアさん!」
「ひぃぃ、ジョシュア先輩助けて下さい!」
「待ってろ!」
玄い亀に踏みつぶされそうになっているパンドラを蹴り飛ばして助ける。すると彼女は変な声をあげて飛んで行った。
「ぐえっ」
「メッケンナ、いったいどうした?」
「わかりません、『O-04-i16』*7を鎮圧してあと一歩のところまで追い詰めたのに、さっきの風が吹いたら元気を取り戻したんです!」
「くそっ、厄介な!」
もしかしたらさっきの攻撃はBダメージで、そのせいでこいつが回復したのかもしれない。
こうなったら本当に時間がない。いつさっきのような攻撃が飛んでくるかわからない、急いで鎮圧しなければ……
「よし、メッケンナ、パンドラ、合わせろ!」
「はい!」
「ぐっ、わかりました……」
パンドラが“魔王”を振って死の斬撃を飛ばし、それに合わせてメッケンナと俺が亀の懐に潜り込む。
亀は斬撃を防ごうと体を動かして甲羅を盾にしようとする隙に、メッケンナが足元を“エンゲージリング”で切りつけて体勢を崩し、俺の“墓標”を首元に突き刺す。
「くっ、どうだ!?」
「ふっ」
“墓標”による攻撃が首に突き刺さって、亀がもがき苦しむ。その間にパンドラが中距離から“魔王” で斬撃を飛ばし、メッケンナがほかの足を切
り切り続ける。
すると、玄い亀が甲羅に引っ込んで守りの体勢になる。くそっ、こんな時に厄介な……
「まずいです! ジョシュアさん、離れてください!」
「なにっ!?」
メッケンナの声に反応して、亀から一気に距離をとる。すると亀は急に回転を始めて、俺のほうに突撃してきた。
「ぐっ、ううっ」
距離をとったものの、俺のほうに大きな甲羅が迫ってきた。
このままでは直撃すると思い、体勢を低くして“墓標”で亀を受け流すようにそらして直撃から逃れようと試みる。
「ぐおっ」
結局俺がはじかれることになってしまったが、それでも勢いをだいぶ落とすことができたので体勢をすぐに立て直すことができた。
「よし、これで何とか……」
「次来ますよ!」
「なあっ!?」
壁に突き刺さった亀が再び回転してこちらに向かって突撃してくる。
次はなんとか回避できたが、これを何度もされたらさすがに持たない。
「ジョシュアさん、これで動きが止まります!」
「わかった、畳みかける!」
甲羅から体を出した玄い亀は、目が回っているのかふらふらしている。この機会を逃すわけにはいかない。
俺とメッケンナで一気に接近して攻撃を加える。俺たちの攻撃とパンドラの斬撃が何度も玄い亀に直撃し、ついに玄い亀は倒れこんだ。
「ふぅ、少しの間お休み……」
「……」
人型の姿に戻った玄い亀、『O-01-i43』*8は俺のほうに倒れこむと、俺を見て少し微笑むと、光となって消え去った。
『よくやった、これで中央第一と安全部門の鎮圧が完了した。残りは情報部門の本体だけだ』
「なっ、まだ本体が残っているのか!?」
『あぁ、だがこれで彼女の周囲に存在していた黒い風も消失している。おそらくダメージも通るはずだ』
「わかった、それじゃあ最終決戦と行くか。行くぞ二人とも!」
「わかりました!」
「えぇ~、面倒くさ……」
「おい」
「はい! 行きます!」
二人と一緒に情報部門のメインルームに向かう。この戦いが終わるまでもう少しだ、最後まで気を抜かないように頑張らなくては。
「よし、ついたぞ!」
「ジョシュア!」
「シロ!」
情報部門に向かうと、すでにシロやリッチ、マオ、ミラベルとサラがいた。彼女たちはすでに黄色い姫に攻撃を加えていた、俺たちもすぐに参加しなければ。
その攻撃に対して、黄色い姫は何も反応することもなく受け入れていた。しかしダメージを受けていないというわけでもなく、その体はところどころがボロボロになっていた。
「感動の再開をする前に、こいつをさっさと鎮圧するぞ!」
「あぁ、わかった!」
俺たちも一緒に黄色い姫に攻撃を加えていく。
するとしばらくはおとなしくしていた黄色い姫が、急に動き始めた。
胸の中央に手を合わせて、その手の間を開けるとその間に風が集まり始めた。
その風は青白くなっていき、強力な死の気配を集めながら大きくなっていく。もしかしてこれは……
『まずい、その行動はさっきの施設全体に行き届いた攻撃の動作だ! 放たれる前にそいつを鎮圧してくれ!』
「くそっ、わかった!」
風の色と気配からしてP属性の全体攻撃だ。このまま放たれると確実に危ない、さっきのB属性ですら恐ろしいダメージだったのだ、Pなんて何人耐えられるかわからない。
「ちょっ、なんかまずいですって!」
「いいから黙って攻撃しろ!」
うるさい馬鹿を黙らせて攻撃を加え続ける。その間にも黄色い姫はどんどんと風を集めていく、だがその体は逆にどんどんとボロボロになっていっている。
俺が“墓標”を突き刺しリッチが“超新星”で切りつける。
メッケンナとマオが懐に入って“エンゲージリング”と“手”で連撃を加え、サラとミラベル、シロとパンドラが遠距離から攻撃を加えていく。
「くそっ、早くとまれぇぇぇぇ!!」
風の塊が最大限まで高まろうとしているその瞬間、その胸の中心に“墓標”を突き立てる。
すると、ついに風はまとまりを失い、霧散していった。
そして姫は光に飲まれて徐々に崩れていった。
この施設に風が吹く
その風は先ほどまでの苛烈なものとは違い
人々を癒す 優しい風であった
そしてその風と共に美しき花弁が運ばれてきて
俺たちの背に集まり美しい羽の形となる
そして彼女がいたその場所には
四つの四季色の刀を持つ両剣が突き刺さっていた
O-01-i44 『貴き初凪の季姫』 鎮圧完了
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