【完結】誰も知らないアブノーマリティー   作:名無しの権兵衛

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記録部門 セフィラコア抑制『すでに対価は支払われましたがね』

『すでに対価は支払われましたがね』

 

「うん? 今何か……」

 

「えっ、そうですかぁ? それよりも見てくださいよぉ、この素晴らしい翼ぁ! それにALEPHクラスのE.G.O.! ついに私もぉ、上位のエージェントにぃ……」

 

『まずい、たった今ミラベルが突然パニックを発症した! W装備の職員は至急対処に向かってくれ!』

 

 恍惚としたサラが背中のギフトと手に持っている“簒奪”を見せびらかしにきた。正直ギフトは俺も持っているのだが、どうやら自慢したいだけらしい。

 

 今日は記録部門のセフィラコア抑制であるが、俺たちに関係するのは正直施設全域のクリフォト暴走くらいだと思っていたら、突然最悪の放送が流れてきた。何やってるんだ管理人……

 

「えぇっ、うそぉ!?」

 

 その放送にサラが驚いている。まぁこいつが今持っているE.G.O.はW属性だからな、頑張ってくれ。

 

「ほら仕事だ、ミラベルが待って居るぞ」

 

「うぅぅ、わかりましたよぉ」

 

 もっと話したいことがあったようだが、彼女は渋々走って行った。なんか器用だな……

 

「さて、俺はさっさと作業を進めるかな」

 

 どうせ今日は暴走段階を最終まで進めなければならない。それならさっさと作業を行って一日を終わらせてしまおう。

 

 

 

「いやー、ようやく『O-01-i43』*1の特殊能力が終わりましたね」

 

「あぁ…… だけど、なんか早くなかったか?」

 

「えっ、そういえばそうですね」

 

 メッケンナに質問するが、反応は鈍かった。

 

 クリフォト暴走も終盤になってきて、『O-01-i43』によって玄い亀が出現したため懲戒部門から退避していたのだが、予想よりも随分早く引っ込んだ。いつもは倍の時間は居座っているはずなのだが……

 

 まさか?

 

「もしかしたら、俺たちの時間感覚が狂っている…… いや、時の流れが速くなっているのか?」

 

「えっ、確かに違和感はありますが……」

 

「戦闘の時はどうだった?」

 

「うーん、今日の試練は灰燼や苺ばっかりで動きが無かったですもんね……」

 

「もしもそうならまずくないか?」

 

「確かに深夜がまずそうですね、でもそれ以外は『O-01-i43』たちがすぐ帰ってくれるんなら……」

 

「まぁ、確かにそうだな」

 

「それよりも次の作業に行きましょうよ」

 

「あぁ……」

 

 なにか忘れているような引っかかりを感じながら次の作業に向かう。次の作業は『O-04-i16』*2だ、懲戒部門からはさほど遠くないからまだ楽だな。

 

「それにしても今日の異常はまだましですね」

 

「いや、結構やっかいだと思うんだが……」

 

 ゲームでの経験から、思わずそう言ってしまう。ゲームならエージェントは管理人の指示が無いとほとんど何も出来なかったが、ここに居る俺たちは自分の判断で動くことが出来る。だから一時停止の重要性がゲームよりも低いのかもしれない。それでもクリフォト暴走の場所とかは伝えてもらわないと困るのだがな。

 

「あっ、そういえば……!?」

 

「何か来るな」

 

 中央第一のメインルームにたどり着くと、何か異常を感じて武器を構える。メッケンナも会話を中断して武器を構え、情報部門へと続く扉をみる。

 

 緊張の時間が続くが、何も無いかとメッケンナが警戒心を一段下げようとした瞬間、その扉から何かが飛び出してきた。

 

「ジョシュアさん!」

 

「あぁ!!」

 

 メインルームに侵入してきたのは、黄金の液体の塊だった。黄金の液体の塊が不完全な球体の形を取り、ぐちゃぐちゃと音を立てながらこちらに向かってくる。

 

 それは『T-09-i96』*3から出現する敵対存在だった。

 

「全く、今日の『T-09-i96』係は何をしてるんでしょうね?」

 

「……なぁメッケンナ、今日の係の奴は誰だったっけ?」

 

「えっ? 今日は新しく入った子だったと思いますけど……」

 

「なるほど、もしかしたらやばいことになってしまったかもしれないな」

 

「それって、どういう……」

 

 呆れたように頭を抱えるメッケンナに、思わず質問する。先ほど頭に引っかかっていた物の正体がようやくわかった。

 

 その時、扉からさらに黄金の塊が飛び出してきた。その数は5体、ここまで来ている数と考えると全体ではもっと多いはずだ。

 

「どうやら『T-09-i96』の時間も早くなっていたみたいだな」

 

「それじゃあ係の子は……」

 

 おそらくその子は、もう生きては居ないだろう。いくらある程度戦えるようになってからやってくるとは言っても、何体もの『T-09-i96-1』相手には手も足も出なかっただろう。それに一度放っておけばこいつらはどんどん増えていく、早急に鎮圧を終えなければ。

 

「メッケンナ、『T-09-i96-1』を鎮圧しながら『T-09-i96』の収容室まで突っ切るぞ!」

 

「わかりました!」

 

 まず早急にこの部屋の『T-09-i96-1』たちを一掃して収容室へと向かう。こいつらはWAWクラスではあるものの、その中でも下位に属している。正直に言ってALEPHクラスのE.G.O.を装備し、その中でも上位に入ってくる俺たちにとってはさほど難しい敵では無かった。

 

 しかし、数が多いのはやっかいだ。いちいち相手をしていてはどんどん増えていくことから、邪魔な奴だけを潰して先に進むことを優先した。

 

 さすがに数が多いので少し時間はかかったが、なんとか『T-09-i96』の収容室までたどり着いて臨時の係をメッケンナに変わってもらう事に成功した。そして代わりが来るまでの間、俺は周囲にいる『T-09-i96-1』を鎮圧するために動き回ることとなった。

 

 

 

「さて、もう終わりだな」

 

「大変でしたね……」

 

 なんとか灰燼の深夜も鎮圧することに成功し、残るところはクリフォト暴走段階だけとなった。危なく灰燼の深夜に施設全域を埋め尽くされそうになったが、なんとかぎりぎりのところで間に合った。

 

「あっ、純化が……」

 

 そうこうしているうちに、最後の作業が始まり純化も始まった。俺たちは少し駆け足気味に、この施設を後にする。

 

 どうか次のコア抑制も、被害が最小限に抑えられますように……

 

*1
『玄き北颪の冬姫』

*2
『骨の華』

*3
『黄金の蜂蜜酒』

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