どうして起こるのか
それを知るものは未だに居ない
「ジョシュア、最近つれない」
「そうか? いつも一緒に飯食ってるだろ?」
「だって、他の女やリッチのほうが仲良くしてるし、楽しそう……」
作業を終えて、たまたまシロとであったので話していると、シロが俺に対して不満を言ってきた。
確かに最近あまりかまってやれてない気がする。結局この前決心したのにあまり行動も出来ていなし、もう日数も残っていないのだから、そろそろ行動を起こすべきだろうな。
「そうだな、それじゃあ今日の業務が終わったら一緒に遊ぶか」
「えっ……」
「なんだ、嫌だったか?」
「ううん、遊ぶ、遊ぶ!」
遊びに誘ってみると、随分と喜んでくれた。これだけでこんなに喜んでくれるなんて、結構嬉しいもんだな。
「ねぇねぇ、なにして……」
『記録部門の廊下に試練が発生しました。エージェントの皆様は至急鎮圧へ向かってください』
「あっ、試練……」
「ここから近いな、急ぐぞ!」
「うん!」
シロが話の続きをしようとしたその時、試練発生のアナウンスが放送された。
正直文句でも言ってやりたいところだが、ここからの試練は一切油断できない。ゲーム通りならここから便利屋たちがやってくるが、今までの傾向からしてここすら同じかもわからない。
もしも今までと同じようにここの試練すら別であるのだとしたら、結局俺の知識はほとんど役に立たないことになる。出来る事なら初見殺しの可能性は出来るだけ消しておきたかったが、こればっかりは仕方が無いだろう。
便利屋だったとしても、現実である今、赤ですら危険であることには変わりない。それにクソみたいな白と黒が居ないと考えると、案外楽かもしれない。
……まぁ、それ以上のクソが来る可能性も無きにしてもあらずではあるのだが。
「よし、気を引き締めていくぞ!」
「うん!」
記録部門の廊下へとつながる扉を開くと、その瞬間に何かがこちらに飛翔してくる。
俺は“墓標”でその飛翔物を弾き、前に出る。記録部門の廊下の奥にいるそいつは、俺を見るなりこちらに向かって歩き始めた。
「HELLO」
それは赤い人型の何かだった。
剥き出しの筋肉のような何かに捻れ狂った体、目や口と言ったパーツは体の至る所にアンバランスに配置されており、うわごとのように意味の無い言葉を垂れ流す。
体の所々に鋭い刃のような骨が生えており、はみ出た腸を引きずりながら青や水色の目でこちらを見つめる。
そして、それは人外の姿をしながら人の武器を持っていた。
肉塊で覆われた大剣であり、骨や目などの器官が存在するそれと目が合ったとき、思わず戦慄してしまった。
……俺はそれを知っている。
その凶悪な容貌を、おぞましき特性を、そしてその武器の強さを。
それは……
「Aaaaa... I love you!!」
「ぐっ!!」
それは急にこちらに接近し、その凶悪な大剣を振り下ろしてきた。
俺はそれを“墓標”で受け止まるが、あまりに強い攻撃に腕が吹き飛んだかと思うほどであった。
俺がおぞましき大剣を受け止めている間に、シロが“儺追風”で赤い人型に斬りかかる。
しかし奴はその攻撃を寸前で避けると、俺たちと距離を開けてこちらを伺ってくる。
「ジョシュア大丈夫!?」
「大丈夫だ、それよりも油断するなよ」
俺たちが話している間も目の前の異形、赤の幻想体は油断せずにこちらを観察している。
そして奴は、何の前触れも無く攻撃体勢に移行した。
「管理人! 管理人!」
「くそっ!」
強力な俺が攻撃を逸らし、いなしながらシロが“儺追風”を振り回す。
それを赤の幻想体が避けて隙を作ったところで攻撃に移行し、形勢を逆転させる。
“墓標”で胸を狙って相手が避けようと体をひねったところを、シロの“儺追風”が襲う。
「管理人! 管理人!」
赤の幻想体はそれを避けきれ無いとみるや手に持つ大剣をシロにたたきつけようとする。しかし、そんな事は俺がさせない。
大剣による攻撃を“墓標”で弾く。どうやら無理な体勢で攻撃を繰り出そうとしたことで威力が出なかったようだ。
「食らえ!」
そのまま赤の幻想体に足払いをかけて体勢を崩し、“墓標”で突き刺して床に縫い付けようとする。
しかし相手もやられてばかりでは居てくれないようで、倒れる際にこちらにハリを飛ばしてくる。
顔に飛んできたそれを首を逸らして避けるが、赤の幻想体はその人間ではあり得ない体勢から蹴りを放ってきた。
その攻撃を受けてしまうも、なんとか蹴られた際に反撃して足にダメージを与える。そして俺が吹き飛ばされている間に、シロが“儺追風”で赤の幻想体の足を切り落とし、その回転のまま体を切り刻む。
「I love you!! I love you!!」
「うるせぇ!」
軽く吹き飛ばされるも、途中で体勢を立て直して立ち上がる。そしてそのまま再接近しながら斬撃を飛ばす。
赤の幻想体はその斬撃から逃れようとするも、シロの“儺追風”によって床に縫い止められてしまう。
そのまま斬撃を食らい、とどめに頭部に“墓標”を突き立てる。
「Good Bye」
「まずっ」
赤の幻想体にとどめを刺すと同時に、奴の体がふくれあがった。
この光景に既視感を覚え、とっさにシロに覆い被さる。
シロの驚いた表情が一瞬見えたが、その後すぐに衝撃が俺を襲った。
「ジョシュア、大丈夫!?」
「……っ あぁ、大丈夫だ」
「でも、体が……」
「これくらいたいしたことない、少し『T-09-i97』*1にでも浸かっておけば治る」
奴は最後に自爆し、あのハリを周囲にばらまいたようだ。幸いこの付近には俺たちしか居なかったため、シロをかばったことで俺一人だけの被害だったようだ。
体にいくつか刺さったが、これくらいなら大丈夫だろう。幸いここには最高の回復装置が存在しているからな、命さえあればなんとかなる。
唯一の欠点は、ここから遠いことだ。だが毒でも無いから大丈夫だろう。
「それじゃあ肩を貸す、それならいい?」
「あ-、気持ちはありがたいが、体の大きさ的に難しくないか?」
「そっ、そんな事無い!」
「大丈夫だって、それよりも今日が終わったら何するか考えておいてくれ。ついでにお菓子の準備も頼むぞ」
「……わかった」
なんとか納得してくれたようで、彼女は体を引きずる俺を見送ってくれた。
……さすがにこんな姿をずっと見られたくないからな。とりあえずリッチでも呼んで運んでもらおう、あいつならこんなことでも喜んで引き受けてくれるだろうしな……
隣にいる物が突然に姿を変える
平等に訪れる異常に 人々は恐怖した