「おい、そろそろ動いたらどうなんだ?」
「もぉ~、マオさんはぁいっつも怖いですねぇ~」
「別に何にもしてねぇだろうが!」
せっかくの休憩だというのにぃ、マオさんのせいでぇ台無しじゃないですかぁ。
マオさんとお話しするためにぃ、抱き枕にしていた私の翼から手を放しまぁす。
マオさんはぁいっつも怒ったような言い方で勘違いされますけどぉ、本当はそんなつもりはなくてぇそのことを気にしてるかぅわいいところもあるんですよぉ。
けどぉ、なんでかジョシュア先輩の前だけではぁ、いっつもけんか腰なんですよねぇ。
昔誰かがぁ、あれは照れ隠しって言ってたけどぉ、なんか違う気がするんですよねぇ。
「それよりそろそろ作業に行くぞ、てめぇもさっさと使えるようになりたいんだろ?」
「それはそうですけどぉ、マオさんだって戦いだけでしょう?」
「俺はそっちができる分ましだろうが!」
「も~ぅ、わかりましたよぉ」
マオさんはいっつも声が大きいので困りますぅ。これ以上言われるのも嫌なのでぇ、そろそろお仕事に向かうとしましょうかぁ。
「おっ、サラじゃないか」
「あれぇ、ジョシュア先輩ぃ、もしかしてぇ新しいギフトが付きましたかぁ?」
「……お前って本当にそういうところはよく気が付くよなぁ」
「えっへん」
ギフトは私の生きがいですからねぇ。こうやって誰かの意識を身に着けているとぉ、私は私なんだって実感できるんですよぉ。
それにぃ、ジョシュア先輩のもらうギフトってぇ、なんだかおもしろい感じがして好きなんですよねぇ。
「別に褒めてないけどな、それよりお前もまたギフトが増えたのか?」
「はいぃ、条件を調べるのもぉ、私のお仕事ですからねぇ」
今私が持っているギフトはぁ、『F-04-i27』*1のティアラ、『O-01-i01』*2のおしゃぶり、『T-06-i30』*3の目隠し、『T-05-i22』*4のロザリオ。
そしてぇ、この前の『O-01-i44』*5との戦いで授かったぁ美しき翼。この美しく優しい翼の素敵なことぉ、本当にうれしいわぁ。
さらにぃ、ついに今日『O-01-i02』*6の翼を授かることができたのぉ! ジョシュア先輩がとってもうらやましかったからぁ、もう夢みたいでびっくりだわぁ。
「ほんとよくこんなにギフトをつけられたよな、大丈夫か?」
「大丈夫ですよぉ、ちゃあんと自我を保ててますからぁ」
「それならいいんだけどな」
なんだかジョシュア先輩は心配しているみたいですねぇ。そんなに心配しなくてもまだ見ぬギフトがある限り私は自分を見失ったりなんてしませんよぉ?
「それにしてもこっちの翼まで手に入れたんだな」
「ひゃうっ!」
お話をしていたらジョシュア先輩がいきなり翼を触ってきました! 突然触られてちょっとびっくりしちゃいました、くすぐったい。
「いきなり何をするんですか!」
「いや別にいいだろ? 感覚がつながっているわけでもないし……」
「えっ、いやっ、ちょっと……」
そういうとジョシュア先輩は、私の翼を遠慮無しに触ってきました。
乱暴なようで優しく、最初はくすぐったかったのにだんだん気持ちよくなってきて、気が付いたらもう動けなくなってしまいました。
「あっ、んんっ……」
「いやぁ、本当に肌触りがいいなぁ。自分のだとうまく触れないからなぁ」
「うっ、いやっ……」
「変な声出すなって」
すごく丁寧で的確にこちらの気持ちのいいところを撫でまわし、私の心をかき乱します。その触れる手から彼の悦びや満足感が伝わってきて、こちらまで変な気持ちになってきました。なんでこんなことするんですかぁ?
「んっ、くっ」
「あぁ~、やっぱりモフモフはいいなぁ」
「~っ、~~~///」
「おっ、おいどうした!?」
そしてついに私は……
うぅ…… もうお嫁に行けませぇん……!!
「あー、ジョシュアさんがサラさんにセクハラしてるー。シロさーんこの人でーす」
「メッケンナイス! ジョシュアお話がある」
「いや、ちょっと待ってくれ……!!」
「はぁっ//、はあっ//」
なんだかぁ、急に回りが騒がしくなってきましたがぁ、まだちょっと余裕がないですぅ。
「ジョシュアさん、これはちょっと言い訳できませんよね」
「い、いやこれは……」
「ジョシュア、何したの?」
「ただ、ちょっと翼を撫でただけで……」
「いや、がっつり触ってましたよね?」
「うっ、ふぅ…… なんなんですかぁもう!」
ようやく落ち着いてきたからぁ、ちゃあんと文句を言ってやります! よりにもよってぇ、敏感なところを触るなんてぇひどいですぅ!
「いや、でもギフトなんて普通感触ないだろう!?」
「いやいや、ちょっとはあるでしょう? 身に着ける系以外は」
「そうですよぉ!」
でもぉ、うろたえているジョシュアさんを見ているとぉ、本当にそう思ってるみたいですねぇ。それでもおかしいと思ってぇ、途中でやめてほしかったですけどぉ。
「ジョシュア、あとで私も……」
「いや、事故なんだ勘弁してくれ……」
そんなことを思っていたらぁ、いきなり目の前でイチャイチャし始めましたぁ。うぅ…… ひとり身の前でひどいですぅジョシュアさん。
「とりあえずもういいですよぉ、今度から気を付けてくださいねぇ!」
「わかった、本当にすまなかったな」
『記録部門にて、『T-04-i57』*7が脱走しました。エージェントの皆様は至急鎮圧に向かってください』
ようやくお話が終わるとぉ、今度はアブノーマリティーの脱走アナウンスが流れてきましたぁ。まったく忙しいですねぇ。
「まったく、誰だよやらかしたのは。しかも記録部門って遠いし」
「どうせパンドラさんじゃないですか?」
『設計部門にて、『O-04-i17』*8が脱走しました。エージェントの皆様は至急鎮圧に向かってください』
『教育部門にて、『O-02-i24』*9が脱走しました。エージェントの皆様は至急鎮圧に向かってください』
「くそっ、連鎖脱走か。面倒な……」
「それにここまで出たら、もう一体来ますよ!」
ここにいる全員がE.G.O.を取り出して構えていますぅ。そういう私もぉ、もう準備は万端です!
『中央第一にて、『O-04-i16』*10が脱走しました。エージェントの皆様は至急鎮圧に向かってください』
『情報部門にて、『O-05-i18』*11が脱走しました。エージェントの皆様は至急鎮圧に向かってください』
「くそっ、すぐに鎮圧に向かうぞ! ……あれ?」
「はい!」
「……? ジョシュア、どうしたの?」
急いで皆で鎮圧に向かおうとするとぉ、なぜかジョシュアさんが止まってしまいましたぁ。何やら考え込んでいる様子ですがぁ、いったいどうしたんでしょうかぁ?
「なぁ、『O-05-i18』の作業の予定って今日あったか?」
「えっ、ないですけど…… クリフォト暴走じゃないですか?」
「いや、クリフォト暴走だったらしばらく後だ。何か、嫌な予感がする……」
そういってジョシュアさんが前を向いたとき、私たちの頭に声が響きました。いや、それは声なんかじゃありません。私たちの知らない、誰かの情景が見えてくるのでした……
「くそっ、早く鎮圧しないと。管理人、『O-05-i18』はどうなっている!?」
『だめだ、今マキとアセラが攻撃を加えているがまったく効いていない!!』
「くそっ、じゃあ『O-05-i18』が向かっている先はどこだ!? ほかに向かっているのは?」
『今確認する…… 見つけた、『O-04-i16』と『O-04-i17』だ。どうやら中央第二のメインルームに向かっているようだ』
「そこに何かないか!?」
『あぁ、縦長の石ころが一つ、さっきまではなかったはずだ』
「こうなったらそこを狙うしかない! 近場の全員を向かわせてくれ!」
『わかった…… まずい、『O-04-i16』が今石ころに接触した』
「くそっ!!」
「ああっ、あぁぁ!!」
「サラ、大丈夫か!?」
「だい、じょうぶです…… ちょっと頭に、何かがぁ……」
ようやく石ころに接近できた頃には、すでに石ころに白い花が添えられていました。
しかしここで手を止めては何か悪いことが起きる、そう直感した私は、E.G.O.を手にして振りかぶりました。
『くそっ、もうじき『O-05-i18』がそちらに向かうぞ!』
『O-05-i18』が石ころまでたどり着くと白い塊と一つとなって、青白い色が炎のように揺らめいて追加されました。
それと同時に私の頭に情報が流れ込んできて頭が痛いですが、些細な問題です。
気が付けば石ころの前には、一本の線香がお供えされていました。
ここで終わってくれればよかった。だけどそれはあり得ないことです。
『全員そこから離れろ! もう『O-04-i17』が来るぞ!』
そして、最後の一体が来ました。
今最後の一体が塊と混ざり合い、一つとなりました。
そして塊は真っ黒になると、石ころの下に吸い込まれていきます。
石ころにはお饅頭がお供えされていました。
Emergency! Emergency! Emergency!
Risk Level ALEPH
それは絶望を呼ぶもの
欲望に塗れ 溢れ 撒き散らすもの
大罪を犯し 決して許されぬもの
世界は素晴らしい
これほどの魅力に溢れ 俺にすべてを与えてくれる
この世界は俺の満たされぬ欲望を満たそうとしてくれる
だから俺が 下らない貴様らから全てを奪ってやろう
O-01-i19 『輪廻魔業』