「さて、そろそろ今回のツールのところにでも行くかな」
「ジョシュア、もう行っちゃうの?」
休憩もそこそこに、そろそろツールも使わないとだめだよなと思い作業に行くことにした。
椅子から立ち上がるとシロが残念そうな顔をするが、仕事なのでやるしかないだろう。
「そんな顔するなよ、今日も業務後に一緒に遊ぼうぜ」
「うん、わかった!」
今日も約束を取り付けると、シロは嬉しそうに笑った。今日もこの笑顔のために頑張るか。
「それじゃあ行ってくるよ」
「行ってらっしゃい」
笑顔で手を振るシロに、俺も手を振って歩き出す。今日のツールは『T-09-i82』だ、まぁツール型に番号なんてほとんど関係ないけどな。
「さて、ついたな」
しばらく歩き、ようやく『T-09-i82』の収容室の前に到着する。
ツール型は入るだけなら安全なので、いつものように収容室の扉を開ける。できれば即死のないツールでありますように。
「さてと、これは枷か?」
収容室の中にあったのは、錆び付き鎖のついた枷であった。
大きさからして手首にはめるタイプのようだが、特にカギ穴などが付いているようには見えない。なんというか、別に拘束具という感じはしない。
「しっかしどういうツールだ? 装着型なんだろうけど、使い道がわからない」
とりあえず装着後に即返却はなんかまずい気がする。できれば何らかの作業を行い鎮圧もしておいたほうがいいかもしれないな。
「さて、とりあえずつけるか」
俺には少し小さいような気もするが、試しに着けてみる。すると枷は俺の手首の大きさに合わせて大きくなり、俺の腕に着けられた。
「こっちに合わせるって、本当にこれ枷か?」
まぁどんな相手にも使えるという意味では、優秀なのかもしれない。しかしこれで行動が阻害される感じもない、特に体の変化もないのでよくわからない。
何気に、こういうやつのほうか恐ろしかったりするんだよなぁ……
「とりあえずダメージの受けすぎにも注意しておこうかな」
ダメージを受けすぎたらダメだったり、回復を阻害されるかもしれないので可能なら避けれるようにしよう。
それにしても厄介だなこの手のやつは……
「とりあえず次の作業にでも行こうかな……」
確か次の作業は『O-05-i47』*1だったはずだ。奴なら作業と鎮圧が同時に行えるから、条件に合うしラッキーだな。そんなに強くないし。
「そうと決まれば早速行くか」
ちょうど収容室はすぐ近くだ、このままさっさと行くとしよう
「ジョシュア、ちょっと顔色悪い」
「本当か? 確かに体の動きも鈍っているし、そろそろ危ないな……」
『O-09-i82』を付けてからしばらくたったが、そろそろきつくなってきた。
使ってみた感じからして、おそらく装着者をどんどん弱らせる能力だ。面倒なことこの上ない。
おそらく何らかのメリットもあるのだろうが、そんなものないに等しいだろう。さすがにもう即死はないだろうし、返却しに行くか。
「悪いシロ、そろそろこいつを返しに行くよ」
「大丈夫? 少し休んでからでもいいんじゃない?」
そういってシロは自分の太ももをポンポン叩く。非常に魅力的だが、時間がかかると悪化しそうだし先に戻しに行こう。
「これを返してからにするよ、それじゃあまたあとで」
「うん、待ってる」
シロに手を振ってから『T-09-i82』を返却しに行く。
返却する際に少しドキドキしたが、何も起こらなくて少しほっとした。
かつて一線で戦い続け、栄光の道を歩んだこの体は、もはや見るも無残な状態だ
武器を持つ腕も、大地を駆る足も、すべて骨と皮だけのようにほっそりとしている
目もかすみ、声も枯れ、もはや考える力も弱まった
もはや私にできることは、過去の栄光を思い出すばかり
この薄暗い牢の中で微睡ながら、上を見上げる
なぜ、どうしてこうなったのか
永遠に答えの出ないその問いを頭に浮かべながら
弱り果て、涙を流す
T-09-i82 『惰弱の枷』