【完結】誰も知らないアブノーマリティー   作:名無しの権兵衛

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今回の話の時系列は、前回の中間報告と、Days-46-3の続きとなっています。





それは人々から生まれ

人々に害をなし

人々に恐怖を与える存在である


中間報告 純黒の夕暮『幻想体』

「それにしても、なんかすごいなこれ」

 

「ジョシュア、私とおそろい」

 

「おそろい…… なのか?」

 

 『O-01-i19』*1との戦いに勝ち、なぜか俺の“墓標”は骨の殻を破って“転生”へと昇華された。

 

 この悍ましき錫杖は、恐ろしさもさる事ながら、シロの“儺追風”と同じような強大な力を感じる。

 

 シロも同じように感じているのか、なぜかおそろいと感じているような。

 

 ……もしかしてこれ、“黄昏”二つあるようなものなのか? ついでに“超新星”のことを考えると、戦力自体はかなりそろっているように感じる。

 

「まぁそれはいいとして、やっぱり元が“墓標”だからなのか結構使いやすいんだよな」

 

「いいな、ボクはまだ慣れない」

 

「まぁ慣れてなくてもあの威力なら大丈夫だろう」

 

 正直に言えばシロの戦闘は慣れていないとは思えないほど安定感がある。実際、何度助けてもらったかわからない。

 

「それにしても、そろそろ次の試練だよな」

 

「うん、いつもはここが終わってしばらくしたらお仕事が終わるけど……」

 

「今日はコア抑制だからな、最後まで行くだろうな」

 

 次の試練は夕暮だ。今までの傾向からして、おそらく次はかなり厄介な戦いになりそうだ。

 

『情報部門、教育部門、福祉部門、抽出部門にて試練が発生しました。エージェントの皆様は至急鎮圧に向かってください』

 

「来たな、行くぞ!」

 

「うん」

 

 とりあえず今一番近い抽出部門から向かう。おそらく相手はかなり強いが、今の俺とシロなら負けることはないだろう。だからと言って油断する気もないが。

 

 

 

「さて、もうすぐだぞ」

 

「うん、気をつけよ」

 

「もちろんだ!」

 

 抽出部門の廊下の扉前につき、急いで扉を開ける。その瞬間、部屋から濃密な死の臭いが漂ってきた。

 

「シロ!!」

 

「うん!」

 

 廊下に侵入すると同時に、前方から何かを放たれる。それは死の気配を纏ってこちらに向かってきて、それを“転生”で弾いて止める。

 

 シロも“儺追風”を振って盾にしてその攻撃を防ぎ、何とかすべての攻撃を凌ぐことができた。

 

「ジョシュア、あれ……」

 

「……嘘だろ」

 

 目の前にいるのは、純白の少女だった。

 

 真っ白な長い髪は艶々で、美しく靡く。肌は雪のように白く冷たい印象を与え、赤い瞳はこちらを鋭くにらみつける。

 

 背には白く美しい片翼が生えており、どことなく威厳を放っている。

 

 そして手には白き杖を握っている。白い翼と蛇、そしてリンゴが一体となったその杖は、かの戦いを乗り越えたもののみに与えられる強力なE.G.O.。見るだけでその装備の強大さが伝わってくる。

 

 彼女は純白のウェディングドレスを身にまとい、軽やかな足取りでこちらに接近してくる。

 

 あぁ、その姿は随分と違っていても、それが何かがすぐにわかってしまった。

 

 並の職員なら、出会った瞬間に敬意を感じ生きることをあきらめるだろう。

 

 たとえ生き残っても、彼らのように入れたほうがよかったのかもしれない。

 

 もしもここにいるのが本体だけなら、まだ全力でない分気持ちは楽だった。

 

 だがこいつは、その手に恐ろしいものを持っている。

 

「行くぞ!」

 

「うん」

 

 杖の射線上に立たないように左右によけながら彼女、青の幻想体に向かって接近する。

 

 青の幻想体はこちらに向かって光弾を乱射してくるが、避けれるものは避け、避けきれないものは“転生”で弾く。

 

「ふふっ」

 

「っ!?」

 

 接近して攻撃に移ろうとしたその時、青の幻想体はかすかに笑った。

 

 “転生”が“失楽園”とぶつかり火花が散る。鍔迫り合いが起こっているうちにシロが接近して“儺追風”をふるう。

 

 青の幻想体はその攻撃をよけきれないと判断したのか、下を向いている杖から光弾を射出し周囲に爆発を起こす。

 

 爆発に巻き込まれないように後ろに跳び退くと、粉塵の中から光弾が飛んでくる。それを“転生”で弾いて凌ぐと、今度はシロが近づいて“儺追風”をふるう。

 

 青の幻想体は“儺追風”の攻撃を“失楽園”で防ぎながら隙を見て光弾を飛ばしてくる。シロはそれを“儺追風”で弾きながら回転して攻撃を続ける。

 

 青の幻想体がシロに気を取られている間に、背後から“転生”で切りかかる。

 

「なっ!?」

 

「ジョシュア!」

 

 すると青の幻想体は急に身をかがめて切りかかろうとしていたシロの斬撃がこちらに襲い掛かろうとしていた。

 

 とっさに屈んででよけると同時に青の幻想体に“転生”をたたきつける。避けられそうになったが、なんとか“転生”の刃が青の幻想体の羽を傷つけた。

 

 攻撃を受けて青の幻想体は一瞬目を見開いたが、すぐに余裕のある表情に戻るとこちらに光弾を飛ばしてきた。

 

「くそっ!」

 

 光弾を受けている間に青の幻想体も体勢を立て直そうとする。そこをシロが切りかかり体勢を崩し、傷を増やしていく。

 

 さらに“転生”で切りかかり青の幻想体を傷つけていく。青の幻想体の純白のドレスは、どんどん赤く染まっていった。

 

「うっ」

 

「くっ!」

 

 しかし青の幻想体もタダではやられてくれないようだ。彼女は床に向かって光弾を放って煙を巻き起こしてこちらの視界を防ごうとしてきた。

 

 それをシロが回転しながら“儺追風”を振り回し、一瞬で煙を払った。だが、その一瞬の間に青の幻想体はこちらに向かって接近してきた。

 

「そろそろあきらめろ!」

 

 青の幻想体から放たれる光弾をはじいて攻撃に移る。

 

 “失楽園”による薙ぎ払いを“転生”で弾き、そのまま回転した勢いで石突をつく。

 

 青の幻想体の鳩尾に入り彼女の動きが止まる。そこをシロが“儺追風”で背中を切り刻み、その胸に“転生”を突き立てる。

 

 とどめを刺したことで急いで離れようとするが、青の幻想体が“転生”の柄をがっしりとつかんで動けなかった。

 

「素敵」

 

 青の幻想体はポツンとそうつぶやくと、最後に青い波動を体から放出した。俺はその波動を直に受けてしまい、一瞬死の気配に全身をさらされる。しかし何とか持ち直して立ち上がる、これで青の幻想体は何とか鎮圧することに成功した。

 

「ジョシュア、大丈夫?」

 

「あぁ、なんとかな」

 

「よかった、少し休む?」

 

「いや大丈夫だ、他のやつらを鎮圧しに行こう」

 

「うん」

 

 シロとともに急いでほかの場所に向かって走り始める。この後職員たちと力を合わせて、何とか赤、白、黒の幻想体を鎮圧することに成功するのだった。

 

*1
『輪廻魔業』




彼らに存在する意味はなくとも

存在する意志だけはある
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