「ジョシュア先輩、どうかしたんですか?」
「いや、別にそういうわけじゃないんだが……」
「じゃあどうしたんですか?」
「今日のアブノーマリティーについてなんだが……」
今日収容されたアブノーマリティーは『Fett-is-awesome』と『O-09-i80』、なんか明らかにおかしい番号があるんだが……
正直英語が苦手だから、どういう意味かいまいちわからない。それに、ゲームのほうにこんな奴いたか?
「あー、確かに変な感じですね。でも大丈夫じゃないですか?」
「本当かぁ?」
正直、こいつに言われてもいまいち信用できない。
だがそれがパンドラにも伝わってしまったのか不服そうだ。
「あっ、信じてませんね? そんなんだからこの前もひどい目に合うんですよ」
「この前?」
「いえ、別にいいですけど。でも本当に危険じゃないと思いますよ?」
「そうか、でも不気味じゃないか?」
「えー、別にそんな感じしませんけど……」
「あれ、ジョシュア先輩どうしの?」
そんな話をしていると、マキが話に入ってきた。どうやら今作業が終わったところらしい。
「いや、今回のアブノーマリティーの番号がおかしいって話をしていてな」
「へぇー」
「もういいじゃないですか、ササっと行きましょうよ。どうせ行くんですから」
「まぁそうだけどな、それじゃあ行ってくるよ」
「頑張ってね!」
確かにパンドラの言う通り、どのみち行かなければいけないんだ。だったらぱっぱと行くべきだろう
「さて、頑張るか」
ようやく『Fett-is-awesome』の収容室にたどり着く。
何となく嫌な気配を感じながら、俺は収容室の扉に手をかける。
少し深呼吸をして、お祈りをしてから収容室の扉を開ける。収容室の中からは、なんか酸っぱい匂いがした。
「さてと、どんな奴が…… あっ」
収容室の中には白い球体が浮かんでいた。
それはきれいな球体に見えて、よく見れば下のほうが少したるんでいた。
そして中央には文字がかかれている。
そいつを見た瞬間、俺の脳裏にこれに近い存在の記憶と、これから俺に降りかかる未来が思い描かれた。
そいつは俄かに光始める。そしてその光はどんどん大きくなっていき……
「いや、ちょっと待ってくr……」
光が収容室全体を包み込んで、俺は『
「ただいま……」
「ジョシュア先輩、お帰りなさい」
「あっ、ジョシュア先輩お帰ブホッ!!」
休憩室に入った俺を待っていたのは、いつも通りのパンドラと、口に含んでいたお茶を噴き出したマキだった。
どうやらマキは今の俺の姿を見てツボに入ったらしい。口元を手で押さえながら肩を震わせている。
「ジョ、ジョシュア先輩どうしたんですか?」
「あー、もしかしてさっき言ってたやつのせいですか? なんかかわいいですね!」
「……はぁ」
もはや無遠慮に俺の腹をタプタプさせるパンドラに怒る気力すら残っていない。
その光景を見てマキはついに耐え切れず、噴き出してしまった。ついでに端のほうでアセラもプルプル震えていた。お前もか……
今俺は、先ほどとはずいぶん違う姿になってしまった。
今までの作業で鍛え上げられ引き締まった体は、見るも無残な姿となった。
タプタプの三段腹、ムニムニの二重顎にたるんだ二の腕、首も余計な肉が付き呼吸も荒くなり、尋常でないくらい汗が流れる。
正直体が重く感じるが、動くのにはさほど影響がないのが憎たらしい。
言ってしまえば、俺はデブになっていた。
「おー、きもちいぃ」
パンドラは俺のおなかの感触が気に入ったのか顔を埋めて感触を楽しんでいた。今までこれほどじゃれてきたことないぞ?
「そろそろやめてくれ、次の作業に行かないと……」
「えー、仕方ないですねぇ。それじゃあ私もお仕事行ってきます」
「あぁ、頑張ってくれ……」
元気に手を振って出ていくパンドラに、うなだれながら返事をするしかなかった。
「いやすまん、俺も次の作業に向かう……」
「あー、私はもう少しここにいるよ。ジョシュア先輩もおかし食べます?」
「……もらう」
アセラは肩を震わせながらこそこそと出ていき、マキは俺を気遣ってくれたのかお菓子をくれた。うれしいが、なんだか変な邪推をしてしまった自分が恥ずかしい。
「あー、そういえば、パンドラさん大丈夫かなぁ?」
「えっどうしたんだ?」
「いやだって、大体ジョシュア先輩の後に同じやつの作業行ってるじゃないですか。そう考えるとパンドラさんも……」
「あっ、まずい。マキ逃げろ!」
「えっ……」
もしもやつと同じなら、今ここにいるマキも危ない。せめて被害者を減らそうとマキに声をかけるが、無駄になってしまった。
なぜなら、設計部門が『
「あれ、どうしたんですか二人とも?」
「……聞くな」
休憩室に戻ってきたパンドラに、そう返すしかなかった。
どうやら奴は第二形態に移行してしまったようだ。
この部門にいたマキまでもがその能力の犠牲になってしまったのだ。
少し暑苦しくなった休憩室で、気を紛らわせようと顔をあげると、そこには予想外の光景が広がっていた。
「なっ、パンドラその姿……!?」
「えっ、どうしたんですか?」
「ちょっ、なんでパンドラさん太ってないんですか!?」
そう、なぜかパンドラはふくよかになっていなかったのである。そのことに驚いていると、パンドラは頬を膨らませた。
「何言ってるんですか、ちゃんと太ってますよ」
「い、いや、それはそれで怒るところなのか?」
「ほら、触ってみてくださいよ」
そういうとパンドラは俺の手を取って、その手を自分の胸に押し当てた。
「なんか胸が大きくなっちゃって……」
「あっ、ほんとだ…… いやそうじゃなくて」
「だって私、食べても全部こっちに行きますし」
「……ずるい」
「えっ?」
「パンドラさんだけずるすぎるぅぅぅ!!!!」
あぁ、ついに耐え切れずマキが泣き出してしまった。そりゃあ自分は何もしていないのにこんなふくよかな姿になってしまって、そのうえで自分よりリスクが高かったパンドラはこれだもんな。泣きたくなる気持ちもわかる。
「ちょ、大丈夫ですか!?」
「……これはどういう状況だ?」
そこでアセラがこの場に戻ってきた。なんか面倒なことになりそうだな……
「うぅ、えっぐ…… アセラぁ」
そこで涙目のマキと、俺が推測を交えて説明をする。どうしてこうなったのか、何がまずかったのか説明すると、アセラは表情がどんどん変わっていった。
「くそっ、そういうことなら次は俺が行く!」
「えっ、アセラ!?」
「おいちょっと待て!」
「あいつについてもっと調べれば、元に戻る方法がわかるかもしれないだろ!」
「だがお前が行くと……」
「うるさい、俺には効かないから大丈夫だ! マキ、待ってろ!」
「いやそういうわけじゃなくて! おいパンドラこいつ止めろ!」
「えっ、わかりました!!」
しかし俺たちの拘束を振り切ってアセラは『Fett-is-awesome』の収容室に向かってしまう。
そしてその瞬間……
この施設は『
デイブは誰よりも誰よりもふくよかで、おおらかだった
彼が俊敏に動くときは食事の時だけ、それ以外はゆったりとしていた
ある日彼は素晴らしい夢を見たと貴方に教えてくれた
この施設の全員が、彼と同じようにふくよかな体型になったという夢だ
何をばかなと思ったが、彼はその後『T-05-i08』*1に飲み込まれて死んでしまった
その次の日、どこからともなくそいつはやってきた
そいつのビームを受けたやつは幸せだ、体型だの健康だのに気を使わなくてよくなるんだから
そう、もうこれ以上食事に煩わしさことを考えなくていいのだ
ただ幸せに食事ができるのだ
今日も貴方たちはデリバリーを頼む
アッツアツでトッピングマシマシのキングサイズピザにLLサイズのコーラを人数分注文だ
全員でその時を待ち続ける
そしてそのチャイムの音に、貴方は胸を躍らせた
Fett-is-awesome 『お前、デブだよ……』