夢を見ていた
何も成せぬ夢を
「どうした、ジョシュア?」
「……あぁ、嫌なんでもない」
どうやら少しぼおっとしていたようだ。今日の作業はなかなかに大変だったから、少し尾を引いているのかもしれないな。
「ジョシュア、疲れてるなら休む?」
「いや、それよりも楽しもうぜ」
ここにいるのは俺とリッチとシロだ。もう仕事の時間も終わり、今は三人で集まって一緒に飯でも食おうと話していたのだ。
そんなわけで、俺たちは今リッチの部屋に集まっている。
俺の部屋はあまり見せたくないものがあるし、シロの部屋は遠慮したほうがいいと二人で話し合ったので、消去法でリッチの部屋に決まる。まぁ正直きれいだし俺の部屋よりも快適そうだ。
「まったく、本当にこの時くらいだよ心が休まるのは」
「基本的に精神を削ってばかりだからな」
「……最近、ちょっと大変」
みんなそれぞれ用意した飲み物に口をつけながらくつろぎ始める。お菓子やつまみなどを適当につまみながら話を続ける。
最初は酒を持っていこうかと思ったが、シロが呑まないこととリッチがいるため万が一のことを考えて今回は普通にソフトドリンクを持ってきた。
「ジョシュアは大丈夫?」
「今のところはな、正直先陣を切り続けるのは大変だけど、他のやつらに任せるのも怖いしな」
「だからってため込みすぎるなよ、たまには息抜きをしておいたほうがいい」
「だから今してるだろ?」
「あぁ、そうだな」
「……むう」
「なんだよその顔」
なぜかむくれているシロがかわいかったので、ほっぺを突いてみる。フニフニしていてやわらけぇ。
「むー、何するのジョシュア?」
「いや、ちょっとかわいかったから」
「そう、なら許可する」
「許可制なのか……」
シロがすりすりして甘えてくるのでじゃれていると、リッチがあきれたような声を出した。気持ちはわからなくもない。
「それにしても、コア抑制の後のセフィラたちはだいぶましになったな」
「あぁ、確かにかかわりやすくはなったかな」
確かにリッチの言うとおり、コア抑制後のセフィラたちは随分とかかわりやすくなった気がする。中でもゲブラーは随分俺のことをなぜか気に入っているようで、よく特訓に付き合わされている。
「なんだかんだでイェソドとはよく話す気がするな、意外とあいつにも冗談が通じるんだよな」
「そうか、お前はよくゲブラーと一緒にいるイメージだったけどな」
「そうだな、特訓のおかげで強くなってきているのはいいんだけど、正直かなり疲れるんだよな」
「ジョシュア、いい子いい子」
ゲブラーの恐ろしい特訓を思い出してげんなりしていると、シロが頭をなでてくれた。もう本当にこの子は天使みたいだな、本当に癒される。
「あの特訓という名の拷問は遠慮したいな」
「そういえばリッチはどうなんだ? お前もセフィラと話をしているんだろ?」
「俺はよくマルクトやホドと話をしているな、たまにティファレトにちょっかいをかけられるのは面倒だが」
リッチはどうなのかと話を振ってみると、こいつは意外と交流があるらしい。正直ゲームを知っているとティファレトはまだしもマルクトやホドとはあまり関わり合いたいとは思わないんだよなぁ。
「よくわからんがあいつらは吹っ切れた感じがするからな、以前よりは随分と話していて気が楽だ」
「あれ、お前コア抑制前から交流あったのか?」
「とはいっても普通程度だけどな、それよりお前が関わり合わなさ過ぎたんだよ」
「えぇー、そうかなぁ?」
「ジョシュア、そんなことないよ」
「だよな!」
「くっ、ここでは俺が少数派か!」
まぁ正直かなり避けてたけどな、セフィラの相手は管理人がしてくれればそれでいいと思っていたからな。あとどこでぼろが出るかわからなかったからな、特にホクマーとビナーが。
「シロはセフィラと話したことあるか?」
「うーん、酔っ払いとなら……」
「酔っ払いって、もしかしてネツァクのことか?」
「ネツァクが酔っ払いって、プッ、クフフッ!」
「……えいっ」
「いっ!」
なんかツボに入ったのか笑い始めたリッチに対して何か思うところがあったのか、シロは結構な強さでリッチのすねを蹴り上げた。
さすがのリッチも無防備な状態ですねを蹴られたのは痛かったのか、声にならない悲鳴を上げながら悶絶している。なんだかんだでこいつらも仲いいよな。
「さて、それじゃあそろそろお開きにするか」
「うん、わかった」
「ジョシュア、俺のことを無視するな」
「ジョシュア、ボク酔っちゃったみたい」
「おーおー、ヤ●ルトで酔っぱらうやつ初めて見た…… おい叩くなよ」
なんか余計なことを言ってリッチがペチペチされている、ちょっと心配していたけどこの調子だと大丈夫そうだな。
「わかったわかった、悪かったからもう叩かないでくれ」
「……別に気にしない」
「……いや、もう突っ込まないぞ」
まぁ、確かに突っ込みたくなるのはわかるが、触れないのが吉だよな。とりあえずは何とかなってよかった。
「さて、それじゃあ俺も送るよ」
「いや、別にいいよ」
「いやいや、もう少し話したいだけさ」
「……ぶぅ」
シロは少し不満そうだが、そういうことなら俺は構わない。
シロも嫌がっているように見えて、リッチにじゃれているようなものだろうしな。シロの場合、本当に嫌いだったらそもそも意識にすらないはずだしな。
「そういえばこの前なんだが……」
「ふふっ……」
これからも、この三人で一緒に楽しんで語らい合う。
そんな日常が、いつまでも続いていけばいいのに……