「おいパンドラ、その抱えているものは何だ?」
「あっ、え~と…… チョコレート、です?」
「そんなわけあるか!? 何収容室から『T-01-i12』*1を連れ出そうとしてるんだ!!」
「ひぃ~、すいませんかわいかったのでつい~」
新しく入ってきたパンドラは、早速問題を起こす疫病神だった。E.G.O.を食べようとしたり、振り回したり、面倒事しか起こさない。今日も早速やらかしたのでしかっていると、横から声をかけられた。
「ジョシュア先輩、そんなに怒っても仕方ないですよ?」
「カッサンドラか、だがこいつはほっとくとろくな事を……」
「まぁまぁそう言わずに、今日のジョシュア先輩がそんな事をすると運気が落ちますよ」
「また占いか、ほどほどにな」
カッサンドラは占いが大好きで、よく自分だけで無く他の奴らの運勢も占っている。
ちなみに彼女が俺に話しかけている間に、パンドラはどこかに逃げたらしい。後でしめるか。
「それで、何か話があるんだろ?」
「はいジョシュア先輩、今日来たアブノーマリティーはもう使いましたか?」
「使ったって、そういえば今日はツール型の来る日か……」
そういえば、今日の最初の仕事は初めてのアブノーマリティーでは無かったな。何というか、そろそろ初手俺はやめて欲しい……
「はい! なんと今日は占いが出来るんですよ、なんだか良いことがありそうですね!」
そう言うと、カッサンドラは鼻歌を歌いながらスキップをしてどこかに行ってしまった。なるほど、だから機嫌が良さそうだったのか。今朝は運勢が悪かったって落ち込んでいたのに。
「まぁ、とりあえず行ってみるか」
占いとかろくでもない気がするが、さすがに今日死にますとかドストレートなのはないだろう。 ……無いよな?
「さて、今日はどんなものかな」
早速今日来たツール型アブノーマリティーである、『T-09-i98』の収容室の前に来た。とにかくツール型と言うことで雑に入って一目見ることにする。
収容室の中には、チープなキャンディボックスが置いてあった。透明な容器の中には赤、白、紫、青の四色の飴が入っている。地味に大きめなので舐め終わるまでに時間がかかりそうだ。
何というか、カッサンドラの話でだいたいどうやって使うかわかる。わかるが、もう占いと言うことで嫌な予感はぬぐえない。
だってここ、ロボトミーだよ。あのロボトミーだよ、安全なんて一番遠い言葉のこの場所で、占いなんて悪いことしか起こりそうに無い。
「まぁ、とりあえず使っておくか」
今日の作業もほとんど終わりということもあり、せっかくなので使用してみることにする。
「さてさて、何が出るかな?」
コインの入れ口は無いので、とりあえず取っ手を回す。こんなの前世の子ども時代に回したガチャガチャ以来だな。
「うーん、赤色か」
『今日のあなたの運勢は、勇気を持って行動すれば良いことが起こるでしょう。ただし、慎重になりすぎではいけませんよ』
『今日も良い日でありますように』
「うおっ」
飴玉が出てくると、いきなり頭の中に声が響いた。いきなりのことにどきっとしてしまったが、特に害はなさそうだ。
「う~ん、イチゴ味か……」
ツールから出てきたものを食べるのはどうかと思うが、逆に食べない方がやばそうなので口に入れることにした。少し大きめの飴は口の中で転がすと、結構あごが疲れて大変だ。
「さて、勇気を持ってって何だよ。もしかして本能作業を行えってか? さすがに安直すぎるか……」
とりあえず収容室を出て、今日最後の作業を行いに行く。ちょうど本能作業だが、大丈夫だろうか?
「まぁ、やってしまったことは仕方が無いか……」
とにかく即死がない事を祈りつつ、収容室に入る。意外にも、作業自体はいつもよりうまくいった気がした。
「さて、今日は紫色か」
『今日のあなたの運勢は、強く己を律して行動すると良いでしょう。本能の赴くままに行動してはいけませんよ』
『今日も良い日でありますように』
あれからこいつの効果を色々と検証してみたが、どうやら色に対応する作業を行うと効率が上がるようだった。逆に、やらない方が良いと言われた作業を行うと効率が落ちてしまうようだ。自分がなめた飴の色は忘れない方が良いだろう。
「さて、それじゃあ今日は愛着作業を中心に行っていくか……」
のびをしながら廊下を歩いていると、前方からご機嫌のカッサンドラが歩いてきた。
「あっ、ジョシュアせんぱーい!」
「おう、カッサンドラか。なんだか機嫌がよさそうだな、今日の占いが良かったのか?」
「はい、今日の『T-09-i98』の結果がすごかったんですよ!」
「すごかった?」
どういうことかと尋ねると、カッサンドラは得意げに語ってくれた。
「なんと青い飴が出てきたんですよ、こんなの初めてです! 『自分の正義に従えば、すべてが良くなるでしょう』って、今までで一番良い結果ですよ!」
「いや、そもそもパターンが少なすぎるだろうが……」
「いいんですよ、別に。私はこの後『T-04-i09』*2の作業があるので失礼します。それではまた後で!」
カッサンドラはそういうと、また機嫌良くスキップしていった。全く、いつも通り元気なやつだな……
いやまて、なんだか嫌な予感がする。いつもなら何がいけないかちゃんと教えてくれるのに、今回はすべてが良くなる? それに、今まで『T-09-i98』を使ってきた奴らの話を聞いてきたが、青色なんて聞いたことが無い。
「おい、カッサンドラ、待て!」
すぐにカッサンドラを追いかけるが、もうすでに見当たらない。すぐに追いかけなくては、まずいことになる気がする……
だが、その行動は結局、無駄となってしまった……
人とは、極限状況になれば普段は信じないものでも信じてしまいたくなるものだ
このような普段から死と隣り合わせの場所であれば、その傾向は多くなる
占いなんて、外れればそんなもの、当たれば印象に残ってすごいって思うものだ
特に私の占いには実利がある、自分の死から遠ざかるには私の占いを信じるしか無い
何度も利用すれば、その分だけ信頼されていく
不思議なものだ、完璧な占いなんて無いというのに
占いを信じて、信じて、信じて、そして裏切られる
占いが良かったからって自分は安全だと信じ切っている
その信じ切った眼が絶望に変わる瞬間が、何よりも美しい
私は今日もその結末を見るために占い続ける
私にとって、今日も良い日でありますように
T-09-i98 『フォーチュンキャンディ』
次回のアブノーマリティーの情報は?
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管理番号と台詞の一文
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上記に加えてアブノーマリティーの姿
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さらに加えて第一印象など