【完結】誰も知らないアブノーマリティー   作:名無しの権兵衛

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 楽しいわ、楽しいわ

 とっても楽しいわ

 だってこの星は、すべて■■■でうまってしまったのだから

 皆で楽しく、毎日遊んで暮らしましょう

 お菓子もケーキも紅茶も、いっぱい用意しないとね

 ……あれ、もしかしてこの感じ

 素敵なさざ波の音色に、懐かしい磯の香り

 あぁ、もしかしてまた、間抜けな(可愛い)契約者さんが現れたのかしら

 それならこうしてはいられないわ

 さっそく扉を探しましょう

 もちろん今回も、本体を連れて

 さて、今回の契約者さんも随分大盤振る舞いするのね

 だって■■■を招待しちゃうほどなんだから……


Menu 6 メイン

 

「ちくしょう、こんなものまで持っていかれるのかよ……」

 

 今思い出しても震えが止まらない。あれは格が違うなんてものじゃなかった。

 

「無情座衛門、ペペロンチーノ政宗、贄贄……」

 

 『終末鳥』、その天を仰ぐほどの巨大な怪物は先輩の活躍もあってついに崩れ落ち、その死骸の上に彼は顔を覆って座り込んでいた。

 

「俺が、ちゃんとE.G.O.を振るえていれば……」

 

 この戦闘で、多くの人たちが犠牲になりました。彼は自分がもっとうまく戦えていればと思っているのかもしれない。でも、そんなわけがない。先輩は十分に頑張っていた、ただただ相手が悪かった。

 

「先輩!!」

 

「えっ?」

 

 だから、そんなに自分を追い詰めないでください。

 

「食べましょう、一緒に」

 

「おいしいご飯を!!」

 

 

 

 

 

Menu 6 メイン ~黄昏の親子丼~

 

 

 

 

 

「それで、今回はどうするんだ?」

 

「今回は、さっきのやつを使って料理をしたいと思います」

 

「終末鳥を……?」

 

 そう、今回はあの怪物を使っての料理、正直あれがおいしいのか、そもそも食べれるのかもわからない。

 

 だけど先輩が、このまま悲しそうな顔をしているのは、耐えきれそうになかった。

 

「そうか……」

 

「だから、ちょっと待っててくださいね」

 

 目指していたのは、正攻法による味の限界の超越。

 

「絶対においしい料理を、作りますから!!」

 

 大切な人ひとり笑顔にできずに、そんなものは目指せません。

 

 

 

 

 

「さて、それではできましたよ」

 

 先輩の待つ部屋へと入ると、彼はいつもの笑顔はどこはいったのやら、暗い表情で項垂れていた。

 

「ほら先輩、いつまでそんな暗い顔をしているんですか?」

 

「後輩……」

 

「さぁ、ご飯の時間ですよ」

 

 先輩の前に皿を置いて、蓋を取る。

 

 すると暖かい湯気とともに、とてもおいしそうな匂いが漂ってくる。

 

 肉汁溢れる鶏肉を、黄金色の卵が包んでいる。その下からはキラキラした白米が顔をのぞかせ、一つの芸術のような輝きを放っている。

 

「これは一体……?」

 

「親子丼です、前に先輩が教えてくれた、先輩の故郷の料理」

 

「そうか、親子丼って名前だったな……」

 

 先輩はなんだか懐かしそうに目を細めて、嬉しそうにしている。

 

「それじゃあ、食べましょうか」

 

「そうだな、それじゃあ……」

 

「「いただきます!!」」

 

 さっそくスプーンですくって口に運ぶ。

 

「……おいしい」

 

「でしょう、今回のはかなりの自信作ですよ!」

 

 口にした瞬間にわかる、これはとても素晴らしいものだ。

 

 どんどんと体が馴染んでくることがわかる。もしかしたら彼女には悪影響かもしれないが、とても心地が良かった。

 

「うまい、うまい……」

 

「これが、俺の故郷の味だったのか……」

 

 先輩は、涙を流しながら食べていた。それはとてもおいしそうで、何かを必死に取り戻すように、ほおばっていた。

 

「先輩、どうですか?」

 

「あぁ、うまいよ。うまい……」

 

 そして結局、彼は全てを食べきると、顔を覆って泣き崩れた。

 

「大丈夫ですよ、よしよし……」

 

 それを、あやすようにただただ背中を撫でた。いつもの偉大な背中は、この時だけは同じ大きさに見えた。

 

「すまない、情けない姿を見せたな」

 

「大丈夫ですよ、それに少しでも先輩の役に立てたようでうれしいです。だっていつも助けてばかりですし……」

 

「何言ってんだよ」

 

 彼は涙を指で拭うと笑顔でこちらに顔を向け、いきなり抱き着いてきた。

 

 ドクンと、心臓が跳ね上がる。さすがにこの不意打ちは卑怯だと思う。

 

「お前は、俺にとって最後の希望なんだよ……」

 

「先輩……」

 

 その言葉に胸が暖かくなり、抱きしめ返す。彼の頭をあやすように撫でると、温もりのような、不思議な感覚が伝わってくる。

 

「後輩、お前だけは死なないでくれよ……」

 

「大丈夫ですよ、だって……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いずれ星となって、再会できるのですから」

 

 

 

「……えっ?」

 

 

 

 

 

 

 

「随分と引き金が軽くなりましたね」

 

「……アンジェラか」

 

「それは、あなたが思っているようなものではありませんよ」

 

「……そんなことは、わかっている」

 

「今度は何を失うのですか? 郷愁も強さも失ったあなたに、払えるものはあるのですか?」

 

「もしかしたら、もう代償は足りないかもしれない」

 

「それでも、あいつだけは失いたくない」

 

「……あなたにはわからないかもしれないけれど、私はそれの存在を今まで知らなかったわ」

 

「なに?」

 

「口ぶりからして入社前から持っていたのでしょう? 今まで使ってこなかったそれを、随分と気軽に使う様になりましたね」

 

「……まさか、そういうことかよ」

 

「まぁ、私には関係のないことですが」

 

「いいのか? もしかしたらあんたの計画を邪魔するかもしれないっていうのに」

 

「私の予想が正しければ、その可能性は低いわ」

 

「えっ?」

 

「それはあなたが考えているように消滅させているのではないわ」

 

「消滅ではないって……」

 

「そう、消滅ではなく、交換。結局あなた程度では、代償を全ては払えなかったということよ」

 

「まさか、あいつの耳って……」

 

「それでも、やるのですか?」

 

「……あぁ、たとえ無駄でも、出来る限りのことはやってやる」

 

「そうですか、それではご自由に」

 

「蒼星、お前の好きにはさせないぞ」

 

 

 

 

 

 

 

「……スクロール、展開」

 

 

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