【完結】誰も知らないアブノーマリティー   作:名無しの権兵衛

196 / 335
日記

 ☆月 〇日

 

 今日から日記を書くことにする。

 

 というのも、今日不思議なことがあったからだ。

 

 あれは友人と遊びに行った帰り道、人気のない道を歩いていると目の前に不思議な風貌をした、風貌をした…… だめだ、思い出せない。

 

 たぶん人の形をしてたと思う、そんなやつに声をかけられたんだ。

 

 奴は不思議な契約書をもってきて、いきなり説明をし始めたんだ。

 

『不要なものの処分に困る、そんな経験はありませんか?』

 

『わざわざ捨てるのが面倒なもの、処分のしかたが大変なもの、処分するところを見られたらまずいもの』

 

『どうやって処分したらいいのかわからない、そんな日々とはもうおさらばです!』

 

『この契約書にサインしていただければ、私が責任をもって処分いたしましょう!』

 

『大きいもの小さいもの、重いもの軽いもの、鋭利なもの丸いもの、神聖なもの穢れたもの、死んでるもの生きてるもの、はては呪いから祝福まで』

 

『それらすべてが、あなたの前からきれいサッパリ消え失せるでしょう』

 

『使い方は簡単』

 

『まずこの契約書にお名前をサインしていただき、不要なものを思い浮かべながら不要なものリストにその名前を書くだけ!』

 

『それだけでどんな面倒事からもおさらばです!』

 

『この契約書を使えば、あなたの世界が変わるでしょう』

 

 ……俺は、奴のセールストークに押し切られ、その契約を結んでしまった。

 

 今思えばもっとよく考えて契約をするべきだった。

 

 なぜかというと、これが本当に不思議な力を持っていたからだ。

 

 この契約書に書いたものは本当に消えてしまったのだ。

 

 試しに捨てるのが面倒だったごみ袋を書いてみると、目の前で消えてしまった。

 

 びっくりして辺りを探してみたけれど、どこにも見つからなかった。

 

 正直これほどの力、代償が何だと言われてなかったらきっとむやみやたらと使っていたことだろう。

 

 今後これをどう使っていくかは保留だな。じっくり考えて使っていかないといけなさそうだ。

 

 

 

 

 

 ☆月 □日

 

 とりあえず一日様子を見たが、代償として何を払ったのかよくわからなかった。

 

 自分では気が付けないのか、それとも消したものが大したものではなかったから代償が小さすぎたのか。

 

 まだわからないが警戒するに越したことはないだろう。

 

 それにしても足の裏が痛い。今朝いつ買ったかすら覚えていないどっかのお土産を踏んでしまい怪我してしまった。

 

 はぁ、この怪我も契約書で消してしまえればいいのに……

 

 

 

 

 

 ☆月 ◇日

 まさか本当に契約書で怪我を治すことができるとは。

 

 昨日日記で書いたことが気になって試しに怪我を契約書に書いてみると、次の瞬間にはきれいさっぱりなくなっていた。

 

 これは本当にすごいものかもしれない。

 

 もしかしたらこれで、母さんの病気も治せるかもしれない。

 

 そう思って契約書に書いてみると、母さんの体調がよくなったって連絡が来た。医者に話を聞くと奇跡の回復だったそうだ。

 

 まさか本当にこんなことができるだなんて、もしかしたらこれはもっと人のために使えるかもしれない。

 

 追記

 

 母さんの病室に趣味の悪い花が飾ってあった。話を聞くといつの間には置いてあったらしい。

 

 俺が来るまでに誰か来ていたわけでもないみたいなので、誰かのいたずらだろう。まったく、暇なやつもいるもんだ。

 

 というか母さん、その花を珍しいからって理由で家に持って帰るのはやめてくれないか?

 

 

 

 

 

 ☆月 △日

 

 今日友人にゲームを薦められた。

 

 ゲームの名前は『Lobotomy Corporation』、職員が化け物に殺されないように管理しながらエネルギーを集めていくすごいゲームだ。

 

 こういうゲームはしたことがなかったが、ゲームシステムや世界観が面白くってついついはまってしまった。

 

 友人曰くこういう世界観が好きならSCPというのもおすすめらしい。

 

 正直そっちも気になるが、まずはこのゲームからクリアしていきたい。

 

 このゲームを教えてくれた友人には感謝しかないな。

 

 

 

 

 

 ☆月 〇□日

 

 ついついゲームに熱中しすぎて気が付けば長期休みが半分すぎてしまった。

 

 しかしそれに見合う面白いゲームであった。

 

 最初は一人でやっていたが、友人がせっかくだからと隣で解説しながらワイワイやっていると、面倒な残業時間も楽しく進めることができた。

 

 本当にあいつはいい奴だな。今度飯でもおごってやろう。

 

 そういえば、あいつに契約書を見られたときは焦ったな。

 

 何とか「かっこいいから買った」と誤魔化したが、若干怪しんでいたように感じた。

 

 さすがにこれの異常性には気が付いていないと思うが、これからはなるべく人目に触れないようなところに置いておこう。

 

 ……それにしても、この契約書はゲームに出てくるアブノーマリティみたいだな。

 

 いや、どちらかというとツールだろうか?

 

 だったらもう少し気を付けて使っていったほうがいいだろうな。

 

 さすがにごみ捨てが面倒だから使うのはよしておこうかな。

 

 どうせ使うなら、もっと人のためになることに使っていきたいな。

 

 

 

 

 

 ☆月 〇◇日

 

 やばい、これは本当にやばいものかもしれない。

 

 近場の山奥に不法投棄されているごみや最寄りの海辺のごみなど、色々なものを消していっていたが、これは本当にピンポイントで消せるからありがたい。

 

 しかしどれだけ消してもごみはまた新しく捨てられていく。

 

 ……もうこれは、大本から消していくしかないのだろうか。

 

 

 

 

 

 ☆月 ●△日

 

 ……大本を消し去ると、驚くくらいきれいになった。

 

 海辺のほうは漂っている分があるからまだなくならないが、山のほうはぱったりだ。

 

 海辺のほうも全体のごみを消してしまえば済むかもしれないが、さすがにそれは目立つだろうからまだ駄目だ。

 

 そういえばきれいにしたからかテレビでも取り上げられていたな。

 

 なんでも新種の植物や魚が現れたって、もしかしたらきれいな環境になったことが影響があるのかもな。

 

 さぁ、このままもっともっときれいにしていこう。もっと消して、もっときれいに。

 

 

 

 

 

 ★月 〇▽日

 

 この世で最も危ないごみとは何だろうか?

 

 そう、それは核廃棄物だ。

 

 あれほど危険なのに生活にどうしても必要だから増え続ける。

 

 ならその廃棄物はどうしたらいいのだろうか?

 

 ……そう、解決策はここにある。

 

 俺がこの契約書を使えばもっともっと世界はきれいになる。

 

 正直このことが世界にばれるのは怖かったが、誰も俺がやっただなんてわからないはずだ。

 

 ならば存分にこの力を使っていこう。

 

 すでに契約書には書いている。

 

 明日のニュースが楽しみだ。

 

 

 

 

 

 ☆月 ●★日

 

 正直、もっと明るいニュースが流れていると思っていた。

 

 邪魔な危険物が消えて、多少混乱はあれどみんなが喜ぶって。

 

 だけどそのニュースは別の話題にかき消されていた。

 

 もともと核廃棄物があったところには、未知の汚染物質が大量に置いてあったとのことだ。

 

 今自衛隊が必死にその物質を隔離しようと運び出しているとのこと。

 

 そういうことならこの契約書だろうと思い、さっそくその物質を書いたが、結果的にそれは消えなかった。

 

 むしろ、最初にあったところに戻っていて、テレビでは瞬間移動だなんだと大騒ぎになっていた。

 

 何度も試したが、結局消えるどころか元の位置に戻るだけ。

 

 ……まさかと思って母親が以前持ち帰ってきた花を契約書に書いてみると、あの花はどこかに消えていた。

 

 そのあとすぐに母が入院していた病院に連絡をしてみると、その花は母がいた病室にまた落ちていたらしい。

 

 他にもごみを書くたびに見かけたよくわからないお土産の置物のようなものも書いてみると、捨てたはずのそれが最初に見かけたところに戻ってきていた。

 

 ……これで確証が持てた。もしかして代償とはこれのことだったのか?

 

 俺はこの契約書を使うことが怖くなってしまった。

 

 きっとこれ以上使えば、被害はもっと広がってしまう。

 

 この契約書は、封印するべきだろう。

 

 下手に捨てて誰かの手に渡ったら大変だ。

 

 そう思って焚火に入れたが、この契約書だけが燃え残った。

 

 水没も、電気も、薬品も、思いつく限りのことはやったがそれでもだめだった。

 

 もう、自分が責任をもって保管するしかない。

 

 俺はあの契約書を秘密の場所に隠した。

 

 この日記にも場所を書くつもりはない。

 

 

 

 

 

 ☆月 ●×日

 

 ……今日、友人と一緒に遊びに行った時のことだ。

 

 あいつが目の前でトラックにひかれて、血がドバドバと出てて。

 

 周りに人気もないし運転手もひき逃げしやがったし、どうすればいいかわからなかったがどう考えても助からないってことだけはわかって……

 

 そこで、気が付けば手元にはあの契約書があって。

 

 俺はとっさにそれを使ったよ。こいつの全身の怪我を消してくれって。

 

 そしたら傷はきれいに消えてあいつは何とか生きてて、代わりに周りに不気味な花が咲いて。

 

 よかったって思ったのもつかの間、あいつに俺が契約書を使ったことがばれてしまった。

 

 あいつは察しがよかった。俺が使った契約書のせいで、最近の怪奇現象が起こっていることに薄々勘づいていた。

 

 俺は白状して全部話した。今までどう使ってきたか、それでそうなったか。

 

 あいつはかなり怒っていた。本気で俺のことを心配してくれていた。

 

 だけど俺はその時裏切られた気分になって、ついカっとなって、契約書にあいつの名前を書いてしまった。

 

 あぁ、今後悔しても遅いことは理解している。

 

 何とか呼び戻せないかいろいろ試してみたけど、結局ダメだった。

 

 あいつに使ってしまったことを後悔して、そして思い出を振り返ろうとしたときに、その思い出を思い出せないことに気が付いた。

 

 どれだけ思い出そうとしても、どれだけ長い付き合いだったかも。あいつの声も顔も思い出せるのに、思い出だけが思い出せない。

 

 ……そこで気が付いた、きっとこれが代償なのだと。

 

 俺があいつを消してしまったことに対する、重い罰なのだと。

 

 

 

 

 

 ★月 ■●日

 

 もう、どうでもいい。

 

 あいつのいないせかいなんでどうでもいい。

 

 せっかくだからすべてをけしてしまおう。

 

 せかいじゅうのごみをけして、ぜんぶきれいにしよう

 

 そおだ せかいお きねいに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  月  日

 

 正気に戻るのに随分と時間がたってしまった。

 

 もちろんそのころには、世界はもう手遅れで、何もかもが壊れてしまった。

 

 あぁ、崩れ逝く

 

 我が家も 学校も 駅も街も 国も大地も 世界も

 

 大切なものが この星が 世界が

 

 もはやこの肉体も いずれは字も書けない姿に変貌してしまうのだろう

 

 ならばこの日記に 後悔の名をつけて 終わりにしよう

 

 友よ すまなかった

 

 俺は君にひどいことをしてしまった

 

 どこに飛ばされたのかはわからないが

 

 どうかそこで 無事でいてくれ

 

 たとえどれだけ厳しい道のりだろうと

 

 俺が必ず 助けに行くから

 

 あぁ 聞こえる

 

 崩海の潮騒が

 

 すぐそばまで

 




後悔日記
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。