それでは二週目、開始します。
プロローグ
「これは私からの歓迎のプレゼントと思ってください」
今日からこの施設で管理人をやることになった私は、彼女の言葉に少しだけ安堵した。
どうやらこの施設では新しい効率的な管理方法を確立したらしく、私が来たのはちょうどそれを導入したタイミングだったらしい。
今までこのような業務などしたことがなかったが、もしかしたら私でもできるかもしれないと思えた。
「それではこれからよろしくお願いします」
そういうと彼女は笑みを浮かべたが、それはどこか仮面をかぶっているようで、冷たい印象を感じた。
しかし彼女はそこで、少しだけ何かを思い出したかのような表情を浮かべる。
「あぁ、そういえば忘れていました」
彼女はわざとらしく咳ばらいをすると、こちらに手を伸ばしてきた。
一瞬何をしているのか意図がわからなかったが、しばらくして彼女が何を求めているのかようやく理解した。
彼女に差し出された手を握る、ひんやりとしていて気持ちいい。どこか心が落ち着くような気がする。
「これからよろしくお願いしますね、管理人」
そう言葉にする彼女は、うっすらと、ほんのわずかだが微笑んでいた。
『目を覚ませ、ジョシュア』
「……えっ!?」
気が付いたら俺は、就業前の待機場所にあるベンチに座り込んでいた。
この感覚、もしかして記憶が引き継がれているのか?
今までも同じことがあっただろうに、なぜ今回だけ?
疑問はいくつがあるが、それよりも重要な点が一つ。
(この声は『輪廻魔業』だな? どうしてお前の声が聞こえるんだ?)
『そんなものは決まっているだろう? 俺とお前の間に確かなつながりが生まれたからだ』
(つながり?)
『あぁ、そうだ。貴様に渡した俺の分体たちと俺自身の力、それを通じて今話をしている。まぁ話ができるだけだがな』
……確かに、今まで感じていたあいつの禍々しさは感じない。聞こえてくる声もあの威圧的な雰囲気が消えている。
『それよりもいいのか? お仲間が待っているぞ?』
思わず周囲を見渡すと、あたりには三人分の人影があった。
「おいどうしたんだジョシュア? 初日からそんな調子じゃ大変だぞ?」
そういって俺に話しかけてきた男はリッチ、苦楽を共にした仲間のはずなのに、どこがとげとげしい態度を感じる。
「……」
後ろで黙ってこちらを見つめているのはシロ、彼女も仲よくしてきたというのに、昔のように誰にも興味がないかのような反応をしている。
……いや、少しは心配してくれているような気もするが。
「まぁまぁリッチ君、ジョシュア先輩もきっと緊張しているんですよ。ここは暖かく見守ってあげましょうよ」
「何だよその呼び方は、まぁ別にいいけどよ」
そして最後に話をしているのはパンドラ、こいつはちょっとわからない。元から存在が珍獣のようなものだったから仕方がないのかもしれないが。
……やっぱりこれは、初日に戻ったということだろうか?
だがもしそうなら、なぜ記憶が引き継がれている?
周りの反応を見るに俺だけが引き継がれているようにも感じるが……
「まぁいい、俺たち4人は最初のメンバー。今から手探りで作業を行っていかないといけない、足手まといならここで休んでくれていて構わないぞ?」
「いや、大丈夫だ。ちょっと考え事をしていてな。これからどんな化け物を相手できるかを考えていたらワクワクしてしまってよ」
「ふっ、そんな減らず口が叩けるなら大丈夫だろう」
そういうとリッチはこちらに手を伸ばしてきた。
俺はその手を握ると、リッチに手を引かれ立ち上がる。
「最初は俺だったよな? さて、今日の作業相手は誰だったかな?」
「あぁ、今日の相手は『O-04-i36』だ、どんな奴かは情報がないらしいから、気を付けて行けよ」
『O-04-i36』? 『T-01-i12』*1ではなく?
……やっぱり、俺の知っている常識は通じそうにないな。
なら、これからも今までと同様に、油断せずにやっていくしかないな。
「さて、それじゃあ行ってくるか」
「あぁ、健闘を祈る」
「……頑張れ」
「ジョシュア先輩、お土産期待してますよ!」
「変なもの期待するなよ……」
仲間たちからの言葉を受けて、収容室へと足を運ぶ。
無機質な廊下を歩き、いつもの収容室の扉が見えてきた。
『……なんだ、緊張しているのか?』
「うるさい、黙っていろ。これはいつもやってる儀式なんだよ」
『くくっ、面白い奴だ』
いつものように収容室の扉に手をかけてお祈りをしていると、『輪廻魔業』のやつがちょっかいをかけてきた。
これからはこいつと一緒ということを考えると気が滅入る。だがやっていくしかないだろう。
「……よし」
手にかけていた扉を開き、収容室の中に入っていく。
「……これは」
収容室の中に入ると、そこにはいくつもの綿毛のようなものが浮遊していた。
それはテニスボールほどの大きさをしており、風もないのにふわふわと浮いて空中を漂っている。
そしてそれはこちらに気が付いたのか、ゆっくりと近づいてきているように感じた。
……やはり、ここにいたのは、誰も知らないアブノーマリティだった。
そういえば、今年のRTA IN Japanにロボトミーコーポレーションで走る猛者がいましたね。
正直今ではこんなにも早くクリやできるのかと驚きました。
さすがRTAともなればプレイヤースキルが桁違いにうまくてびっくりですね。
それにしても、最後の落ちには笑ってしまいましたが……