【完結】誰も知らないアブノーマリティー   作:名無しの権兵衛

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Days-1 O-04-i31『素敵な贈り物をありがとう』

「……で、いったいこいつらはどういうやつなんだ?」

 

 収容室の中にはソフトボール大の綿毛のようなものがふわふわといくつも漂っている。

 

 それはただふわふわと漂っているように見えて、こちらを認識したのか、ゆっくりと近づいてきているように感じる。

 

「なんだこれ、タンポポの綿毛か?」

 

 とりあえず作業を始めていこう。こういう時はとりあえず洞察作業で行ったほうがいいかな?

 

「さて、それじゃあ作業をするからあまり近づくなよ?」

 

『こいつらに言ってもわからないだろうに』

 

「うるさい、それくらいはさすがにわかってるって」

 

 くそう、いつものように独り言を言うと、余計なやつが反応してくる。

 

 正直やりにくい、もしかしてこれって俺のプライベート無くなった?

 

『まぁそう気にするな、俺とお前の仲じゃないか』

 

「殺し合った仲だけどな!!」

 

 本当にこの外道は面倒だ、こんな奴にかまってないで早く作業を終わらせてしまおう。

 

「……よし、それじゃあここらへんで終わりにするか」

 

 とりあえず収容室をきれいに清掃してみた。

 

 こいつらから感情を読み取ることは難しいが、何となく嫌がっている気がする。

 

 もしかしてあまりお好みではなかったか?

 

 それにしても俺が作業をしている間、この綿毛たちは特にアクションを起こす様子もなく、ただふわふわと俺の周りを漂っていただけだったな。

 

 気が付いたら何体か近づいてきている気がするが、まぁそれくらいか。

 

 ……いや、よく見たら周囲を漂う綿毛が少し増えてないか?

 

「おいおい、これは嫌な感じがするな……」

 

 なんだか嫌な予感がする。とりあえずこいつのことは無視して早く収容室から出たほうがいいな。

 

「さて、これでおさらばだ」

 

『おいジョシュア』

 

 とりあえず収容室から退出すると、輪廻魔業が俺に話しかけてきた。

 

 一体何の用だろうか?

 

「どうしたんだよ」

 

『そいつは連れて行っていいのか?』

 

「はぁ? そいつって…… うわっ!?」

 

 周囲を見回すと、俺の後ろから綿毛が一つついてきていた。

 

 何とか捕まえようとするも、綿毛は素早く動き回る…… というか、風圧でふわふわと逃げてしまう。

 

 ならば風を起こさないようにそーっと手を近づけるも、まるで同極の磁石のように一定の感覚で離れて行ってしまう。

 

「……仕方がない、諦めるか」

 

 もう一度収容室の中に入ることも考えたが、その結果さらに出てこられたら大変だ。

 

 正直これでも脱走扱いではないようだし、あの糞妖精のような感じだろうと考えてメインルームへと向かっていく。

 

「……はぁ、ただいま。正直ちょっと疲れた」

 

「よう、お疲れ。その様子だとあまりうまくいかなかったみたいだな」

 

 メインルームに戻ると、まずはリッチが声をかけてきた。なんだかちょっとつんつんしているけど優しい感じ、ちょっと懐かしいな。

 

「あぁ、洞察作業は避けたほうがよさそうだ」

 

「了解、次は俺が行ってくる」

 

 俺の話を聞くと、リッチはさっそく『O-04-i31』の収容室へと向かっていった。

 

「……あれ、ジョシュア先輩。その肩のあたりにいるのはなんですか?」

 

「あぁ、こいつはさっきの収容室からついてきちまったんだよ。現状害はなさそうだがあまり刺激するなよ?」

 

「えぇ~、ちょっとくらい……」

 

「訂正、これ以上近づくな」

 

「ひどい!?」

 

 謎にショックを受けているパンドラを尻目に、シロのほうへと向かう。

 

 シロはかつてのように、何事にも興味がないかのような表情をしているが、俺が近づくと少しだけ表情が柔らかくなった気がした。

 

 ……さすがに希望的観測だったかもしれない、よく見たら全然変わってない気がする。

 

「よう、調子はどうだ? ……って、まだ作業もしてないしわからないか」

 

「……」

 

「そうだ、甘いものは好きか? 今ちょうどチョコレートを持ってるから、それでよかったら……」

 

「もらう」

 

「……えっ?」

 

 なんと意外にもシロは返答してくれた。

 

 前回の週でよく甘いものを食べていたから好きだろうとは思ってはいたが、これほど食いつきがいいとは思わなかった。

 

「そうか、じゃあやるよ」

 

「……ん」

 

 彼女はチョコを受け取ると、さっそく小さな口でかじりついた。

 

 表情は変わらないが、どことなく嬉しそうにしている。やっぱりこういうところはかわいいな。

 

「よう、戻ったぞ」

 

「おう、お疲れ」

 

 シロとしばらく話をしている間にリッチが帰ってきた。

 

 どうやら作業は無事に終了したようで、傷一つなく帰ってきていた。

 

「……おい、それって」

 

「あぁ、さっきの作業でついてきた」

 

 そして彼の周囲には、俺と同じように綿毛が漂っていた。

 

 やはりあの糞妖精と同じように作業後についてくるタイプらしい。とりあえず今日はまだしも明日から気を付けたほうがいいかもしれないな。

 

 ……いや、知識に引っ張られてやらかすのはごめんだな。他の条件がないか気を付けたほうがいいな。

 

「あぁ、俺の時もついてきてたな。ほら…… って、あっ」

 

 俺の周囲に漂っていた綿毛はふわふわと俺から離れて、天に上がっていって徐々に小さくなって消えてしまった。

 

「消えた……」

 

「あぁ、時間がたったら消えるのか」

 

 二人で消えた綿毛について話をしていると、近くでフルフルと震えている奴がいることに気が付いてしまった。

 

 しまった、これはもしかしたらやつがやらかすかもしれない。

 

「二人ばっかりずるいです、私も作業して綿毛ちゃんをゲットしてきますね!!」

 

「おいパンドラ!!  ……行っちゃったよ」

 

 声をかけるよりも前にパンドラのやつは飛んで行ってしまった。

 

 まったく、あいつはこの週でもせっかちだな。

 

「はぁ、ちなみにお前は何の作業をしてきたんだ?」

 

「あぁ、本能作業だ。とりあえず水をぶっかけてやったら喜んでたぞ?」

 

「なるほど、次からは俺もそうしようかな」

 

 そのあとはしばらく関係のない話をしていると、しばらくしてパンドラのやつが帰ってきた。

 

 ……でもなんで傷だらけなんだ?

 

「ふえぇぇん、どうしてジョシュア先輩には綿毛が付いて私にはつかないんですかぁ」

 

「……ちなみに作業は?」

 

「えっ、ジョシュア先輩と同じ洞察作業ですけど?」

 

「だからさっきそれはやめたほうがいいって言っただろうが……」

 

 とりあえずこいつは作業に失敗して、ついでに綿毛もついてこなかったらしい。

 

 まぁとりあえず、これだけ失敗しても大丈夫なようだし、作業ダメージ自体は大丈夫そうだな。

 

 とりあえず即死にだけは気を付けていったほうがいいな。

 

「さて、この調子で今日のノルマを終わらせてしまおう」

 

「そうだな、さっさと終わらせて部屋に戻ろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジョシュア先輩、見てくださいよ! かわいいですよ!」

 

 この週に入ってから結構時間がたち、ついに試練が来る日数になった。

 

 そんなときにこの新人職員であるフリッツは、のんきにも作業でついてきた『O-04-i31』を嬉しそうに見せびらかしてきた。

 

「まぁそうだな、確かにかわいいがそいつもれっきとしたアブノーマリティなんだから気をつけろよ」

 

「はい、もちろんわかっていますよ」

 

「わかっているならいいが…… っと、どうやら試練のお出ましだ。青空の試練だから気をつけろよ」

 

「はい、わかりました!!」

 

 フリッツは元気よく返事をすると、警棒をもって俺についてきた。

 

 ……正直、もうちょっとましな装備を付けてやってもいい気がするが、それは俺の仕事ではないから考えても仕方がないか。

 

「よし、気をつけろよ!」

 

「はい、ってうわぁ!?」

 

「フリッツ!!」

 

 元気な返事とは裏腹に、さっそく青空の黎明の攻撃を受けてよろけるフリッツに、急いで駆け寄る。

 

 しかし先ほど攻撃を受けたにしては、傷が見当たらない。どういうことだと考えていると、フリッツが口を開いた。

 

「大丈夫ですジョシュアさん、さっき綿毛さんが僕を守ってくれましたから」

 

「『O-04-i31』が……?」

 

 よくみると、フリッツの周りにいる綿毛が2体に増えている。

 

 ……これは、あまり攻撃を受けないほうがいいかもしれないな。

 

「フリッツ、あまり攻撃を受けるなよ」

 

「はい、でも綿毛さんがいるから大丈夫ですよ!!」

 

「おい、だからそいつにあまり頼りすぎるな!! ……くそっ」

 

 俺の制止を無視して青空の黎明に向かうフリッツを追いかけようとするが、俺のほうにも黎明が向かってきた。

 

 とりあえず黎明を叩き落とし、急いでフリッツのほうへと向かう。

 

 しかしフリッツは複数の青空の黎明の攻撃を受けて防戦一方だった。

 

 何とか防いでいるも傷を受けるたびに綿毛が増えて、それが邪魔でうまく動けないようだ。

 

「くそっ、フリッツから離れろ!!」

 

 なんとか近づいて黎明を少しずつ落としていくも、すべてを倒すころにはフリッツは綿毛に埋もれて羊のようになっていた。

 

「くそっ、フリッツ!!」

 

 綿毛を手で払いフリッツを中から引きずり出す。

 

 しかしフリッツは苦悶の表情ですでにこと切れていた。

 

「……畜生」

 

 フリッツの口元を見ると、どうやら綿毛が喉までぎゅうぎゅうに詰まってしまっていたようだ。

 

 ……やっぱり、アブノーマリティに安全な奴なんていない。

 

 俺は改めてそう思い知らされた。

 

 

 

 

 

 僕が一人で森の中を探索していると、そこでふわふわしたかわいい綿毛に出会ったんだ。

 

 そいつは人懐っこくて、僕の周りについてきたんだ。

 

 なんだかそれがとっても嬉しくて、そいつと追いかけっこしたしして遊んでいたら、転んでけがをしてしまったんだ。

 

 そいつは僕の傷に近づくとまるでよしよししてくれるみたいに傷にすりすりしてきたんだ。

 

 最初はくすぐったかったけど、気が付くと痛みがなくなってて傷もなくなっていたんだ。

 

 そしてそいつは2匹に増えていて、僕の周りを嬉しそうに飛び回っていた。

 

 ……もしかしたら、こいつらは神様からの贈り物なのかもしれない。

 

 僕は綿毛たちを抱きしめると、心の中でこうつぶやいた。

 

 素敵な贈り物をありがとう、って。

 

 

 

 

 

 O-04-i31『幸せの贈り物』

 

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