【完結】誰も知らないアブノーマリティー   作:名無しの権兵衛

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まだ9月1日の24時2分だな……よし!


Days-04 T-09-i92『叫び声が聞こえる』

「ようジョシュア、なんか面倒なことに巻き込まれたみたいだな」

 

「リッチか、あれは面倒なんてもんじゃなかったぞ」

 

 リッチがにやにやしながら話しかけてきたので、何があったかをあえて誇張せずに話してやった。

 

「はははっ、それは大変だったなぁ!」

 

 しかしリッチはこの話を聞いて大爆笑しやがった。

 

 畜生、自分が何の被害にもあってなかったからって、完全に他人事じゃないか!!

 

「うるせぇ、お前も『F-01-i63』*1の担当をすればそんなこと言えなくなるさ」

 

「悪かったって、そうすねるなよ」

 

「拗ねてねぇよ、それよりも早く次の作業に行ってきたらどうだ?」

 

「あぁ、そうするよ」

 

 一通りリッチとじゃれ合ってから、お互いに次の作業へと向かっていく。

 

 次の作業は今日追加されたツールである『T-09-i92』だ。

 

 正直ツールなんてどう頑張っても番号から予想できるものでもないし、入っただけで即死なんてこともないから気分がだいぶ楽だ。

 

 速足で廊下を歩いていき、『T-09-i92』のある収容室の前までたどり着く。

 

 いつものように乱雑に扉を開けて、収容室の中に入る。

 

 どことなく、ひんやりとした空気が漏れてきた気がした……

 

 

 

 

 

 

「……えぇ、何だこれ?」

 

 そこにあったのは、明らかにシャワールームだった。

 

 シャワールームはカーテンで区切られており、微妙に光が透過しているため中に誰がいるかが丸わかりだ。

 

 その隣には柵のようなものあり、恐らくそこに脱いだ装備をかけておくのだろう。

 

「いや、でもこれを使うのか……」

 

 なんというか、シャワールームということに不安があるのもそうだが、管理人にもみられているというのに使うのは少し恥ずかしい。

 

 まぁ、管理人もわざわざ野郎のシャワー姿なんて見たいとも思わないだろうが。

 

 だがそう考えると、これ女性が使うのはまずいのでは?

 

 シロとか見られたらブチ切れそう……

 

「はぁ、とりあえず使うか……」

 

 ひとまず使うために仕切りの向こうに入る。

 

 内部も普通のシャワールームだ。正直デメリットどころか、メリットすら思いつかない……

 

 装備を脱いで外の柵にかけ、生まれたままの姿となる。

 

 そしてさっそく蛇口をひねろうとして、あることに気づく。

 

「うわぁ、これ熱湯と冷水で別れてるタイプか」

 

 面倒なことに、蛇口のひねり具合で温度を調節するタイプのものらしい。

 

 ロボトミーの寮にあるシャワーは普通に温度調節してくれるタイプなので、不便でしかない。

 

『いちいちこんなことで文句を言うな、早く使え』

 

「うるさいなぁ、わかったよ」

 

 グダグダ考えていたせいか、輪廻魔業にせかされてしまった。

 

 まったく、もう少し余裕を持ってほしいね。

 

「はぁ、なんていうかふつうだなぁ」

 

 シャワーを浴びてみるも、特に何か感じるわけでもない。

 

 しばらく浴びてみるも、何か力がわくような様子もなければ体が溶けるような様子もない。

 

「もうやめてもいいかな? おーい管理人!」

 

『……一応聞こえてはいるが、いつでも聞いているわけじゃないからな?』

 

 なんと本当に聞こえていたようだ。とはいえさすがに盗聴なんてするわけじゃない…… よね?

 

「これいつまでやってればいいんだ?」

 

『こちらとしても何の変化も見られないため、もう少し使ってほしいのだが…… 大丈夫か?』

 

「大丈夫かといわれても、命令なのでやらせてもらいますよ。でも本当に何なんだこれ?」

 

『正直私にも…… あっ、少し変化があったようだ。今確認するからもう少し使っていてくれ』

 

「了解」

 

 どうやら何か進展はあったらしい。いったいどんな変化があったのか、少し興味があるな。

 

『……もう使用を中止してくれてかまわない、ある程度効果はわかった』

 

「了解した」

 

 とりあえずもう大丈夫なようだ。さっそくシャワーの使用を中止して着替える。

 

 ……なんというか、濡れた体がすぐに乾くといいう慈悲はあったようだ。

 

 今思えば、体を拭くものがなかったからこの効果がなかったら大惨事だった。

 

「さて、いったいどんな効果だったんだ?」

 

『周囲の職員のステータスを上昇させる効果があるようだ』

 

「……そうか」

 

 これ、使えるか? いや、上昇量によっては使えるのかもしれないけれど。

 

「まぁいいか、とりあえず戻ろう」

 

 とりあえずメインルームへと戻ることにする。

 

 メインルームに戻ると、職員たちが全員待っていた。

 

「……どうしたんだよ皆、そんな雁首揃えて?」

 

「いや、お前のシャワーを浴びる音が聞こえてな……」

 

 あぁ、もしかしてシャワー音を聞いている奴のステータスをあげるのか。

 

 ……でもどうしてそんなことで?

 

「俺やリッチは特に気にしなかったんだが、女どもはそうはいかなかったみたいだな」

 

 どういうことかとシロに視線を向けると、目をそらされた。

 

「正直私たちはちょっと興奮しちゃったのよね、だから気恥ずかしく感じちゃったみたいね」

 

 シロの代わりにルビねえが答えてくれる。なるほど、そういうことか……

 

「まぁ、そういうこともあるよな」

 

 フォローしたつもりが、シロにぽかぽかと叩かれた。……仕方なくないか?

 

 

 

 

 

「はぁ、今日もまたこれを使うのか」

 

 ある程度の使い道があるからか、定期的に『T-09-i92』の使用を命令される。

 

 こんなの使わなくてもいいとは思うのだが……

 

「はぁ、気持ちいい……」

 

『『F-01-i63』が脱走しました。職員の皆様は至急鎮圧に向かってください』

 

「えー」

 

 どうやら『F-01-i63』が脱走したようだ。

 

 まぁあいつはほっといてもいいだろうと考えたその時、なぜか視線を感じそちらを見ると……

 

 なぜかそこには、『F-01-i63』がいた。

 

「「きゃあぁぁぁ!!」」

 

 あたり一面に、二人分の叫び声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 T-09-i92『真夏の夜のシャワールーム』

*1
とりあえずやばい女

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