【完結】誰も知らないアブノーマリティー   作:名無しの権兵衛

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これからも『誰も知らないアブノーマリティ』をよろしくお願いいたします!


Days-07 T-02-i46『脳みそが揺さぶられる』

「今日からこの部門で世話になるマイケルだ、よろしく頼む」

 

「ぼ、僕はハイルディンです。よろしくお願いします」

 

 今日からまた新しい職員がやってきた。

 

 一人はマイケル、潔癖症の男で以前は『T-09-i97』*1に沈んで行ってしまったが、現状あのツールはないのでそこは心配しなくてもいいだろう。

 

 もう一人はハイルディン、痩せこけててどこか幸薄そうな印象がする。

 

 昨日フリッツが帰らぬ人となってしまったからな、できれば二人とも最後まで生き残れるといいのだが……

 

「二人ともよろしくな、それじゃあ二人には早速簡単な作業を行ってもらう、まずは……」

 

 二人に作業を振り分けて、さっそく俺も作業に向かうことにする。

 

 今回新しく収容されたアブノーマリティは『T-02-i46』、また動物系のアブノーマリティだ。

 

 廊下を歩きながら今回のアブノーマリティについて考える、できればモフモフがいいが、そう何度もモフモフは来ないだろう。

 

『お前の頭の中は大概だな……』

 

「うるせぇ、お前に呆れられるとかマジで嫌なんだが」

 

『だったら少しは自分の行いを考えろ』

 

 輪廻魔業と雑談をしながら『T-02-i46』の収容室へと向かっていく。

 

 収容室までの道はあっという間で、すぐについてしまった。

 

 いつものように収容室の扉に手をかける、そしてお祈りをしてから勢いよく扉を開いた……

 

 

 

 

 

「さーて今回は…… ひっ」

 

 収容室にいたのは、気味の悪いピンク色の胴体をしたサソリのような生き物だった。

 

 胴体はピンクの肉塊に皴が走っており、まるで脳みそのような風貌をしていた。

 

 さらにそこから6本の足と鋭利な顎、そして後部からはサソリのような針のついたしっぽが伸びている。

 

「き、きもっ……」

 

『きもいって、今までこれよりも気持ち悪い奴は見てきただろう』

 

「いやいや、でもこいつは虫でこの見た目だぞ!? きもがらないほうが無理だろうが!!」

 

『まったく、虫くらいで大げさな……』

 

 頭の中で輪廻魔業が頭を振っているイメージが浮かぶ。

 

 仕方ないだろ、ただでさえ虫が苦手なんだから!!

 

『ほら、そんなにビビってないでさっさと作業でもしてろ』

 

「うるさい、さっさとやるって!」

 

 輪廻魔業が呆れた声を出す、ちょっとくらいは気持ちの整理をさせてくれ。

 

「くそっ、とりあえず肉でも与えてみるか」

 

 まずは本能作業を行ってみる。

 

 鶏肉をとりあえず投げ与える、すると『T-02-i46』は嬉しそうに顎を鳴らして鶏肉にかぶりついた。

 

「……やっぱり肉食なのか」

 

 これ絶対人間も食べるやつだろ! やだよこんなきもいのがかみついてくるなんて。

 

「と、とりあえず作業も終わったし行こうかな」

 

 『T-02-i46』に餌を与えたので、とりあえず作業を終わらせる。

 

 もうこんな奴の作業はやめよう、絶対もうやりたくない!!

 

 

 

 

 

「マオさんはぁ、素敵な綿毛をつけていますねぇ」

 

「……やめろイカレ女、こんなもんに興奮するな」

 

「えぇ、そんなこと言わないでくださいよぉ。私ぃ、マオさんの話もっと聞きたいですぅ」

 

 『O-04-i31』*2のギフトをもらったマオがサラに絡まれている。

 

 どうやらサラはこの世界線でもギフト狂いのようだ、さっそく初ギフトの綿毛に興味津々だ。

 

 絡まれているマオがこちらに助けの目を向けてくる。すまんそんな目をされても巻き込まれたくない。

 

「なぁジョシュア、そういえば今日来たアブノーマリティはどんな奴だったんだ?」

 

「えっ、あぁなんかきもい奴だったよ」

 

「きもい奴って、もう少しましな情報はねぇのかよ」

 

「あーっと、判明した範囲でいうならなぁ……」

 

 マオが俺と話をし始めると、サラが少しふくれっ面になっていた。

 

 まぁさすがにかわいそうなので、とりあえず『T-02-i46』についてわかっていることを伝えていく。

 

 話を始めると最初は不満そうにしていたサラも、マオと一緒に話を聞き始めた。

 

 まぁこの会社で生き残るためには情報がすべてだからな、サラも短い間にそこのところは理解しているのだろう。

 

「そういえばぁ、今はだれが『T-02-i46』の作業をしているのですかぁ?」

 

「えっ、今はハイルディンが作業に行っているけど、それがどうしたんだ?」

 

「いえぇ、あの人落ち着きのない人だったのでぇ、大丈夫なんですかねぇ?」

 

「うーん、どうだろうなぁ」

 

 確かにハイルディンは落ち着きのない、あまり慎重な人間ではなさそうだったが、あのアブノーマリティと相性が悪いかどうかは現状わかりようがないからなぁ。

 

「うわぁぁぁぁ!!」

 

「なっ!?」

 

 叫び声とともに、ハイルディンがメインルームに走って入ってきた。

 

 その目は明らかに正気ではなく、よだれをぶちまけながら一心不乱に走っていた。

 

 ハイルディンは必死に走っていて足元に気が付かなかったのか、大きめの何かを蹴飛ばしていった。

 

 謎の物体は液体をまき散らしながら壁に当たり、跳ね返ってこちらに跳んできたので思わずキャッチする。

 

 そして俺は、その物体と目が合ってしまった。

 

 それは、ハイルディンの頭だった。

 

 思わずハイルディンのほうに目を向けると、彼は自身の首が取れていることにも気が付いていないのか断面から血を吹き出しながら走り続けていた。

 

 ハイルディンは血の通り道を作りながら走っていき、目の前が見えないせいか扉にぶつかって倒れてしまった。

 

 そしてその倒れた体は暫くの間痙攣すると、やがて動かなくなってしまった。

 

 あまりの光景に思わず目を奪われていると、手元が震えていることに気が付いた。

 

 手元のハイルディンの頭に目を向けると、白目を向けながら痙攣を始めていた。

 

 思わず手を放し距離をとる。

 

 頭部の痙攣は徐々に小さくなっていき、やがてほとんど動かなくなると、突然はじけ飛んだ。

 

「!? 来るぞ!!」

 

 ハイルディンの頭から飛び出してきたのは、『T-02-i46』だった。

 

 それは満足そうに顎をカチカチと鳴らすと、こちらに目を向け襲い掛かってきた。

 

「畜生、結局こうなるのかよ」

 

 三人で“綿毛”を構える、たとえアブノーマリティであっても数の暴力の前にはどうしようもなかったようで、鎮圧は一瞬で終わったのであった……

 

 

 

 

 

 それはまず人体の頭部に卵を産み付けます。

 

 卵は頭の中で孵化し、内部を食い散らかしてどんどん成長していきます。

 

 やがて成長したそれは、犠牲者の頭部と胴体を切り離して外界へ出る準備を始めます。

 

 卵を植え付けられた人々は、しばらくの間違和感を感じ、そして苦悶の表情でこう答えます。

 

 脳みそが揺さぶられる、と……

 

 

 

 

 

T-02-i46 『ブレインシェイカー』

 

*1
『極楽への湯』

*2
『幸せの贈り物』

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