「婆さん、今日も薬を頼むよ」
「ひっひっひっ、毎度あり〜」
今は『F-01-i34』*1に依頼を出して、薬を作ってもらっている所だ。
こいつの薬は有用だし、毒も鎮圧用として使用出来る優れ物だ。エネルギーに猶予があるなら頼んで損はない。
「はぁ、でも待ってる間暇だなぁ」
「おやそうかい、ならワタシの話に付き合ってはくれんかね?」
「えっ? 別にいいけど……」
話とは一体なんだろうか?
あの婆さんみたいにやばめの話をしたりはしないだろうが……
「お前さん、今歩き出そうとしているね?」
「はぁ? 一体何のことだよ?」
『F-01-i34』に問いかけられたのは、よくわからない言葉だった。
歩き出す、つまり何かを始めようとしてるって事か?
「おやおや、まだ気付いてはいなかったかい。それは悪いことをしたねぇ」
「……何のことだよ?」
よくわからない奴に知った様なことを言われて、思わずムカついてしまう。
そんな俺の様子の何が面白いのか、目の前の老婆はひっひっひっと笑いながら語りかけてくる。
「それは自分で気付くべきだろうねぇ。まぁ、すぐに自分でも気付くだろうさ、気長に待ちなさい」
「はぁ、意味わかんねぇ」
「それでも一つアドバイスをするなら、欲張りすぎないことだねぇ」
「……」
それはそうだろうと思ったが、口に出さないでおく。
『F-01-i34』は何も言わない俺のことなんて無視して、一方的に話しかけてくる。
「何事も過ぎれば毒となる、あんたは今からしようとすることできっと欲張ってしまう」
「それはきっとあんたを蝕む毒となって、辛く険しい道へと向かわせるよ」
「なら欲張らずに慎ましく生きろって事か?」
魔女の言葉に、思わず反応する。するとやつは待ってましたと言わんばかりに口元を歪めた。
「そうは言っても、あんたはきっと欲張ってしまうよ」
「なんでわかんだよ?」
「そりゃあ魔女の勘さ、これでも長い間生きてるんでねぇ」
魔女は楽しそうに笑う。なんというか、この見透かしたような態度が気に食わない。
「だからあんたは、一つも零したらいけないよ? 隅々まで見回して、取りこぼしがないかしっかりと確かめなきゃいけない!」
「それで、なんで俺にそんな話をするんだよ?」
「ひっひっひっ、そりゃああんたが特別な力を持ってるからさ」
……こいつ、まさか『異界の主』の力のことを知ってるのか? それとも、輪廻の方か?
「何か勘違いしている様だけどねぇ、ワタシが言ってるのはあんた自身の力さ」
「……俺自身?」
『扉』は『異界の主』の力だし、『持ち越し』は恐らく『輪廻魔業』の力だ。
それ以外となれば…… E.G.O.の力の引き出しか?
いやそれも力というより技能の類だし……
「ひっひっひっ、そう悩むもんでもないさ。きっとあんたがやろうとする事の手助けをしてくれる」
「一体俺にどんな力があるって言うんだ?」
正直、アブノーマリティの戯言だと切り捨てても良かった。
だが、それで片付けてはいけないと直感してしまった。
「なぁに、強いけれど弱い力さ、ワタシをこんなにお喋りにしてしまうくらいにわね」
「そうか……」
結局よくわからないまま話が終わってしまった。
こいつの言うことを信じる訳では無いが、そのうち分かるというのであれば、いま気にしても仕方がないのかもしれない。
「はいよ、お待たせ」
「ありがとさん。 ……なんか多くないか?」
『F-01-i34』から薬を受け取ると、何故か薬が2本あった。
どういうことかと説明を求めると、魔女は楽しそうに笑いながら答えた。
「なぁに、こんな年寄りの長話に付き合ってくれた礼だよ」
「……ありがたくいただくよ」
『F-01-i34』からもらった2本の薬は、どちらも毒々しい見た目をしていた……