「ジョシュア先輩、本当に行くんですか?」
「大丈夫だって、心配するなよパンドラ」
俺がもう一度『F-0
前回の作業が曖昧なこともあって、心配なところはある。
だがやらなければならない、ならばこいつを心配させないようにしないといけないな。
「……ジョシュア先輩」
「どうした?」
「ならせめて、作業の時は奴の機嫌に気を付けてください」
パンドラのアドバイスを素直に聞く。
ちゃんと聞いておかないと、後悔するような気がしたから。
「奴は機嫌が良くても悪くてもまずいです、絶対にいい感じの普通を狙ってください!」
「いや、なかなかに無茶を言うなぁ」
それってつまりオーケストラみたいにいい感じで作業しろってことだよな?
気軽に言っているがかなり難しいことを言っているじゃないか。
「それでもです! 頑張ってください!」
こいつ、いい顔で無茶ぶりをするなぁ。
……まぁ、やれるだけやってみるか。
「わかったよ、それじゃあ行ってくる」
「はい、行ってらっしゃい!」
パンドラに背を向けて、メインルームから出ていく。
もちろん向かうは『F-0
『……ジョシュア、いけそうか?』
「あぁ、一応対策を考えているんだ」
『対策?』
輪廻が不思議そうに尋ねてくる。なんというか、新鮮な反応だ。
「あぁ、相手は精神干渉系っぽいからな。ちょうどいい力があるじゃないかって気づいてな」
『……あぁ、なるほど』
輪廻と話をしているうちに『F-0
いつものルーティンをする前に、手に“残滓”を出現させる。
そのまま“残滓”の力を引き出し、俺自身を炎で包む。
そうすることで、俺への精神干渉を焼き尽くすのだ。
「……ふざけるな!」
そして、ようやく俺は認識した。
この悍ましいアブノーマリティの力を。
「どういうことだ、『F-06-i61』!!」
「あらっ、いきなり来るなりどうしたのよ?」
収容室に入れば、『F-06-i61』がキノコに腰かけてくつろいでいた。
俺は奴に詰め寄ろうとして、冷静さを取り戻す。
おそらく感情的に詰めたところで、こいつの思い通りになるだけだ。
「お前、ロバートやオフィサーたちに何をした!?」
それでも、怒りが収まるわけではない。
思わず声を荒げながら『F-06-i61』に問いかける。
しかし奴は、俺を見ながら楽しそうに笑っていた。
「うふふっ、私は彼らとお友達になっただけよ? それの何がいけないの?」
「貴様……!?」
そうだ、やはりアブノーマリティとはこういう存在だった。
こいつらは平気で人々の命を、精神を、尊厳を破壊する。
悪意もなく、そもそもそういう存在なのだ。
「あ~ぁ、残念。ついにばれちゃったかぁ」
「……パンドラは、すでに気が付いていただろう」
「はぁ? あんなケダモノ、インチキしてるんだからノーカンに決まっているでしょ?」
「まぁ、でもいっぱい楽しんだし、もうそろそろかくれんぼも終わりにしてあげる」
そういうと、奴はキノコから飛び降りて、俺の目の前まで歩いてきた。
「さぁ、ここからは手加減なんてしないわ」
「いっぱいいっぱい楽しみましょう?」
「さて、楽しい時間はもう終わり」
「楽しいパーティーの時間が待ち遠しいわ……」
Emergency! Emergency! Emergency!
Risk Level ALEPH
F-06-i61 『終わらぬ夢のアリス』