【完結】誰も知らないアブノーマリティー   作:名無しの権兵衛

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Days-23-1 T-05-i14『思い出はいつも胸の中に』

「……ねぇ、ジョシュア」

 

「どうしたんだ、シロ?」

 

 今日の業務が始まる前に、シロが話しかけてきた。

 

 いったい何の用だろうか?

 

「……ううん、何か用があるわけじゃないの」

 

「そうなのか?」

 

「…………ただ、寂しくて」

 

「えっ?」

 

「…………最近、構ってくれないし」

 

 た、確かに最近シロと話ができていないような気がするな。

 

 少し、寂しい思いをさせてしまったかもしれない。

 

「その、悪かったな、あんまりかまってやれなくて」

 

「………………だめ」

 

「えっ!? ……じゃあどうすればいいんだ?」

 

「…………ぎゅっとして」

 

「お、おぅ……」

 

 まさかの方向から要求が来た。

 

 てっきり、シロはそっち方面の欲がないと思っていた。

 

 ……いや、これかなり恥ずかしいな。

 

 その、憎からず思っている相手に抱き着くわけだし、心臓の音バクバクしてるの聞かれたら恥ずかしいどころじゃないぞ!?

 

「……その、絶対それじゃなきゃダメ?」

 

「だめ」

 

「わかった、その…… 行くぞ?」

 

「!? ……うん!!」

 

 やるって言った瞬間に、今までないくらいの笑顔を向けられた。

 

 ……その、マジでそれは威力がやばいって。

 

 とりあえず、色々な感情を抑えてシロを抱きしめる。

 

 シロは、無抵抗で俺を受け入れてくれた。

 

「……その、どうだ?」

 

「……ふにゅう」

 

「えっ?」

 

 シロから伝わってくる様々な情報を気合でシャットダウンしていると、シロから腑抜けた声が漏れ出てきた。

 

 ……その、ギャップがすごくて感情がジェットコースターになっているんだが?

 

「おい、シロ? 大丈夫か?」

 

「……えへへぇ」

 

 だ、だめだぁ。

 

 これ、もう動けないかもしれない。

 

 

 

 

 

 こうして、しばらくの間、俺たちは何も言わずに抱き合ってしまうのであった。

 

 

 

 

 

「……はぁ、もう作業の前から疲れてしまった」

 

 もうすでに、心臓を酷使してしまった俺は、廊下を歩きながら収容室へと向かっていく。

 

 今日収容されたアブノーマリティは『T-05-i14』と『T-04-i62』だ。

 

 どちらもトラウマカテゴリーか、なんとなくトラウマカテゴリーはグロいのが多い印象があるんだよなぁ。

 

「まぁ、それもこれも作業をしてみれば全部わかるか」

 

 今回先に作業をするのは『T-05-i14』だ。

 

 人工物ということは、機械やら調度品やらそこらへんだろうか?

 

 さすがにもう料理はないよな?

 

「おっと、もう着いたか」

 

 気が付けば『T-05-i14』の収容室の目の前に到着していた。

 

 いつものように収容室の扉に手をかけ、お祈りをする。そして扉を開いて中に入る。

 

 ……収容室からは、ガチャガチャと騒がしい音が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

「ない、ない、ないよぉ!」

 

「……なんだこれ?」

 

 収容室の中に入ると、古臭い、ブリキのロボットのようなものが存在していた。

 

 全身がブリキの少し古臭い形のロボットは、胸のところに鍵のついた入れ物のような扉が付いている。

 

 

 それは必死になって、自分の頭部を開いて腕を突っ込んでいた。

 

 そのロボット、『T-05-i14』は何かを必死に探しているようであった。

 

「あっ、お兄さん! ちょっといいかな?」

 

「えっ、俺? なんだよ?」

 

 いきなり『T-05-i14』に話しかけられて、思わず返答してしまう。

 

 すると、『T-05-i14』は嬉しそうに目を輝かせた。

 

「きみ、僕の思い出を知らないかい?」

 

「えっ、知らないけど……」

 

「じゃあ僕の思い出を探すのを手伝ってよ!」

 

 なんだこいつ?

 

 思い出を探してほしいって、これすごい嫌な予感がするんだけど……

 

「どれだけ頭の中を探しても、見当たらないんだよ」

 

「えーと、頭の中にないんだったらその胸にある箱の中を探してみたらどうだ?」

 

「えっ、思い出が胸の中にあるわけないだろう? 思い出は頭の中にあるんだよ、知らなかった?」

 

 うわっ、なんだこいつ!? 滅茶苦茶うっとおしいなぁ……

 

「なんだよ、じゃあ別にいいよ」

 

「えっ、思い出を探してくれるの、手伝ってくれないのぉ!?」

 

 いや、手伝うわけがないだろ。

 

 もう無視して作業を始めるか。

 

「ねぇねぇ、無視しないでよぉ」

 

 何かとかまってくる『T-05-i14』を無視して、清掃を始める。

 

 よく見れば、周囲にはよくわからないガラクタや、謎の液体が散らばっていた。

 

 とりあえず、念入りに清掃しておこう。

 

「あっ、もしかして探しやすいようにお掃除してくれているの?」

 

 いや、そんなはずないだろう。

 

 まったく、なんでそんな風に曲解するのだろうか。

 

 ……あ、あれ? もしかして、選択肢ミスった?

 

「やったぁ! 手伝ってくれるんだぁ!」

 

「いや、そういうわけじゃなくてな……」

 

「それじゃあ、君の頭の中も調べさせておくれよ!」

 

「うわっ!?」

 

 手伝うと勘違いしたことで興奮してしまったのか、『T-05-i14』がいきなり俺に襲い掛かってきた。

 

 伸びてくるロボットアームを左手に出した“残滓”で弾き、右手に“骸”を出現させる。

 

「ふげっ!?」

 

 そして思いっきり“骸”を『T-05-i14』の胸にたたきつけ、吹き飛ばす。

 

 すると『T-05-i14』は思った以上に吹き飛んでいった。

 

「このまま畳みかける!!」

 

「ぶへっ、な、なにするんだよぉ!?」

 

 呆け面の『T-05-i14』の顔面に、“骸”を思い切りたたきつける。

 

 そのまま動かなくなった『T-05-i14』に、何度も何度も徹底的に“骸”を叩きつける。

 

「ふうっ、ふうっ、もう大丈夫か?」

 

 ピクリとも動かなくなった『T-05-i14』を見て、ようやく戦闘態勢を解く。

 

 とりあえず出していた“残滓”と“骸”を左目に戻し、収容室から退出する。

 

 できることなら、こいつの作業はもうしたくないなぁ……

 

 

 

 

 

 お父さんに買ってもらったブリキのロボット

 

 僕の大切な、大事な友だち

 

 僕とずっと一緒の友だち

 

 ご飯もお風呂も、寝るときも一緒

 

 うれしい時も、悲しい時も

 

 いろんな思い出を、一緒に過ごして

 

 いろいろな宝物は、いつだって

 

 

 

 

 

 思い出はいつも、夢の中に

 

 

 

 

 

T-05-i14 『記憶の棺桶』

 

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