【完結】誰も知らないアブノーマリティー   作:名無しの権兵衛

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Days-25 鍵『終わらぬ悪夢』

「はぁ、はぁ、ジョシュア様、そろそろ休憩させてください……」

 

「まぁ、別にいいけど…… お前が協力する意味あるのか?」

 

「なっ、失敬ですね! ちゃんとありますよ!」

 

 今俺は、“骸”を使いこなすために『F-01-i63』*1と訓練をしていた。

 

 最初は脱走しやすい『T-05-i14』*2や『巡礼者』相手に訓練を行っていたが、何処から聞きつけてきたのか、『F-01-i63』も訓練相手になりたいと言ってきたのだ。

 

「いいですか! そのE.G.O.はお肉を食べたい、そして私はお肉として食べられたい。つまりWin-Winの関係ということです!」

 

「……はぁ?」

 

「ですので、私めがそのE.G.O.の本能を刺激して、より力を引き出せるようにお手伝い使用を思ったのですよ!」

 

「……うーん」

 

 まぁ、言いたいことは分かる。

 

 確かにWAW装備である“骸”は、今の俺では力を引き出せずにいるところはある。

 

 だけどこいつ、ガガンボ並みに脆いんだよなぁ……

 

「そこまで言うなら、こいつを本気にさせてみろよ」

 

「……ふぅ、私もなめられたものですね。そこまで言うならお見せしましょう!」

 

 そういうと『F-01-i63』は身にまとっていた服を脱ぎだし、一糸纏わぬ姿となった。

 

 そして自身の指を艶めかしく口元までもっていき、血が出るほどに指をかんだ。

 

「うおっ!?」

 

 すると、今までにないほどの飢餓感が俺を襲い、右手の“骸”が暴れ始めた。

 

「くっ、この……!」

 

 暴れ出した肉塊が、触手のように伸びて『F-01-i63』に向かって襲い掛かる。

 

「収まれ、“骸”……!」

 

 何とか無理やり“骸”を抑え込もうとするも、『F-01-i63』めがけて肉塊が暴れまわる。

 

 いや、“骸”が暴れまわるどころか、俺までもが、『F-01-i63』をおいしそうだと錯覚してしまう。

 

 やがて触手ではなく、そこから芽が出るように手足が生えてきて、やがて人間の形を作り出した。

 

「ぐっ、この…… いい加減にしろ!」

 

 大声を上げるとともに、“骸”を人型の肉塊に打ち付ける。

 

 すると、床がありえないほどに陥没し、ひび割れる。

 

「これが、“骸”の力……?」

 

「いかがでしたか? ジョシュア様」

 

「……『F-01-i63』」

 

 これが、『F-01-i63』の真骨頂。

 

 普段まったく脅威にならなかったが、極限的な飢餓状態でこそ、こいつは危険なのだろう。

 

「ありがとう、これでこいつの力の引き出し方がわかった」

 

「ふっふっふっ、そうでしょうそうでしょう! お客様のお役に立ててよかったです! それではさっそく私の肉でお料理でも……」

 

「よーし、もう用済みだからここでクシャっとつぶしちゃうな~」

 

「そ、それだけはご勘弁を~」

 

 土下座する『F-01-i63』の寛大な心で許してやると、彼女はどこか別の場所へと向かっていった。

 

「……これで行けるか、輪廻?」

 

『まぁ、さっきの力を十全に使えたならば、大丈夫だろう』

 

「十全か…… でも、やるしかないよな」

 

 今から向かうのは『F-06-i61』*3の所だ。

 

 これから安定作業を行うために、この力を利用する。

 

 収容室の前まで歩いていき、収容室の前で“骸”の力を引き出す。

 

 先ほど同様の、狂えるほどの飢餓感。

 

 そして自身の血肉が引きちぎられるような激痛。

 

 しかし、それらを全て精神でねじ伏せ、己の肉体をイメージする。

 

『……上出来だ』

 

 そして、俺の隣には、へその緒でつながった俺そっくりの肉人形がたっていた。

 

「……よし、行くぞ」

 

 そして俺は、いつものようにお祈りをしてから、『F-06-i61』の収容室の扉を開くのであった……

 

 

 

 

 

「あら、よく来たわね」

 

「あぁ、来てやったぞ」

 

 収容室の中には、いつも通りアリスがいた。

 

 いや、いつも通りではないか。

 

 そこにいるのは、4人のアリス。

 

 気が付けば、収容室の内外問わず、こいつは増殖していく。

 

「うふふっ、なんだかとっても面白そうなことをしているわね」

 

「面白いものか、こっちはめちゃくちゃ厳しいんだよ」

 

「……でも、それじゃあ全然つまらないわ」

 

「何?」

 

 楽しそうに笑っていたアリスたちが、一瞬で真顔になる。

 

 それはまるで、不気味な人形に見つめられているかのようだった……

 

「だって楽しくないわよ、ちゃんと遊んでくれないんだもの」

 

「だって楽しくないわよ、遊びを楽しいと思ってくれないんだもの」

 

「だって楽しくないわよ、叫び声が聞こえないんだもの」

 

「だって楽しくないわよ、アリスが増えないんだもの」

 

「「「「だってそうでしょ? みんなアリスなんだから」」」」

 

 4人のアリスたちの圧で、思わず逃げ出しそうになる。

 

 だが、しっかり足を踏みしめて、『F-06-i61』をにらみつける。

 

「お前の勝手で、俺たちは死ぬわけにはいかないんでな」

 

「……そう、まぁいいわ。せっかくだから、それもアリスに変えてあげる」

 

「……やけにあっさり引き下がるんだな」

 

 肉人形がアリスに代わる。

 

 なんというか思っていたほど、怒っていない……?

 

 いや、何か嫌な予感がする。

 

 もしかして、何かの条件を満たしてしまったか……

 

「ようやくみんなで遊べるんですもの、さっそくお散歩に行きましょう」

 

「いやいやダメよ、まずはかくれんぼからしましょうよ」

 

「せっかくなのだから、お人形遊びを楽しみましょう!」

 

「うふふっ、でも最初はいつも決まっているでしょう?」

 

「そうね、最初の遊びはみんなで楽しめるものだものね」

 

「「「「「まずは追いかけっこから、始めましょうか」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『『F-01-i63』が脱走しました、近くにいる職員は至急鎮圧に向かってください』

 

『『F-02-i32』*4が脱走しました、近くにいる職員は至急鎮圧に向かってください』

 

『『F-05-i60』*5の収容室で異常が発生しました。職員の皆様は安全を確保してください』

 

『『F-01-i36』*6が脱走しました、近くにいる職員は至急鎮圧に向かってください』

 

『『F-01-i34』*7の収容室で異常が発生しました。職員の皆様は安全を確保してください』

 

『『F-02-i49』*8が脱走しました、近くにいる職員は至急鎮圧に向かってください』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Emergency! Emergency! Emergency!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Risk Level ALEPH

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少女帝国

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは世界を貪る甘い夢

 

 

 

怖い      怖い      ここはどこ?

 

 

 

 幼き夢を叶える永遠の味

 

 

 

いやだ      いやだよ      ここから出してよ

 

 

 

 さぁ さっそく舞台に上がりましょう

 

 

 

違う      違うの      ここから出して      話を聞いて

 

 

 

 ずっとずっと 踊りましょう

 

 

 

お願い      出して      おうちに返して      お願いだから

 

 

 

 だってあなたが言ったのだから

 

 

 

違う      そうじゃない      そんなこと      言ってない

 

 

 

 だってあなたが望んだのだから

 

 

 

知らない      わからない      望んでない      こんなの聞いてない

 

 

 

 だってあなたが 約束したのだから

 

 

 

違うの      こんなことになるなんて      知らなかった      わからなかった

 

 

 

 (アリス)は約束を守るのだから あなた(アリス)も約束を守らないと

 

 

 

私はこんなの望んでない      こんな約束をしたんじゃない      約束なんてどうでもいい

 

 

 

 さぁ 舞台の幕あけよ

 

 

 

お願いだから      返してよ      私のすべてを      返してよ

 

 

 

 世界を笑顔(アリス)で満たすまで

 

 

 

それが      それができないなら      いっそ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうか私を 殺してください

終わらぬ夢で 遊びましょう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

F-06-i61『終わらぬ夢のアリス』

 

*1
『桃源の甘露』

*2
『記憶の棺桶』

*3
『終わらぬ夢のアリス』

*4
『小さくて意地悪な狸』

*5
『お菓子の家』

*6
『泡沫の夢』

*7
『古い森の魔女』

*8
『愚かな施し』

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