【完結】誰も知らないアブノーマリティー   作:名無しの権兵衛

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Days-28 O-01-i74『警告します』

「よし、今日はここまでだ」

 

「ふうっ、はぁっ、ようやく終わった……」

 

 今日もゲブラーによる鬼のような特訓が終わり、床に手足を放り投げて寝転がる。

 

 自分から望んだことではあるが、毎度のごとく死にかけているのでちょっと後悔している。

 

 ついでにゲブラーが強すぎて強くなっている自覚がない、本当に大丈夫だろうか?

 

「ジョシュア、お前はかなり筋がいい」

 

「……ふぅ、ほんとうかよ?」

 

「あぁ、まだ特訓を始めて3日目だというのに、もうすでにE.G.O.の振るい方を理解している。この調子なら、そろそろ次のステップに言ってもいいはずだ」

 

「……もしそれが本当なら、ありがたいんだけどな」

 

 体を起こしてゲブラーと目線を合わせる。

 

 正直この体のゲブラーに手も足も出ないのに、本当に強くなっているのだろうか?

 

 ……いや、さすがに高望みしすぎか?

 

「さて、それじゃあ俺は仕事に行ってくるよ。ありがとうゲブラー」

 

「あぁ、明日も楽しみにしている」

 

 ゲブラーと別れて今日の業務に向かう。

 

 懲戒部門のメインルームには、すでにリッチが準備をして待っていた。

 

「ようジョシュア、今日も随分としごかれたみたいだな」

 

「ようリッチ、良かったらお前も一緒にやってみるか?」

 

「はっ、ただでさえ儚い命なのに、余計に寿命を縮めてどうする?」

 

「いや、酷いいいようだな」

 

 お互いに軽口を言いながら笑いあう。

 

 なんというか、この時間があるからこそ、頑張ろうと思えるな。

 

「そういえば、お前最近新人にあったりしてるか?」

 

「えっ、そういえば最近あまり関わっていないな……」

 

「たまには上層のほうにも顔を出してやってくれ、マオが寂しがってたぞ」

 

「それならその面を拝みにいかないとな」

 

 そういえば確かに最近マオとまともにあっていない気がする。

 

 そもそもあいつの性格的に懲戒部門が適任のはずなのに、何故か教育部門のチーフをさせられているのが謎なんだよ。

 

「さて、それじゃあそろそろ作業に行ってくるよ」

 

「おう、今日も気を付けていってこい」

 

 リッチと別れて今日の業務に向かっていく。

 

 今日収容されたアブノーマリティは『O-01-i74』だ。

 

 最近変な奴が多かったから、できればまともな奴であったほしいな……

 

 いや、猫様は別枠だぞ?

 

「さてと、それじゃあ行くとするか」

 

 懲戒部門の廊下を歩いていく。

 

 そして、『O-01-i74』の収容室の目の前までたどり着くと、いつものように収容室の扉に手をかけてお祈りをする。

 

 そして、思い切り収容室の扉を開いた……

 

 

 

 

 

「……やぁ、初めまして」

 

 収容室に入るなり挨拶の言葉をかけられる。

 

 いきなりのことに面食らうも、とりあえず返事を返す。

 

「……おう、初めまして」

 

 目の前にいるのは、深緑色のスーツを着た男だ。

 

 身長180㎝ほどで、スーツと同じ帽子をかぶり、質のよさそうな腕時計と革靴を身に着けている。

 

 『O-01-i74』は壁に背をもたれかかりながら座り込み、こちらに顔を向ける。

 

 その顔は、どういうわけか認識することができなかった。

 

「久しぶりに人に会えてよかったよ、随分長い間一人きりだったからね」

 

「……そうか」

 

 こんな風に話しかけてくる奴は、正直苦手だ。

 

 今までの経験からしてもろくな奴がいないし、大体厄介ごとがやってくる。

 

 しかし『O-01-i74』は俺がそんなことを考えているだなんてつゆ知らず、一方的に話しかけてきた。

 

「それにしても、ここはいったいどこなんだ? いきなりこんなところに連れてこられて、状況が呑み込めていないんだ」

 

「……」

 

「確かに私は人とは少し違うところはあるが、だからと言ってこんなところで人とは違う扱いをされるいわれはないじゃないか!」

 

「……」

 

「……あぁ、もしかして答えることができないのか? まぁ、君も仕事なら仕方がないよな。なら別の話をしようじゃないか」

 

「えぇーっと、そうだな…… いや、すまない。こうして人と話せるのが本当に久しぶりすぎて、話が止まらなくなってしまうんだ」

 

「そ、そうか……」

 

 どうやら随分と人間臭いアブノーマリティだ。

 

 一瞬、普通の人間なのではないかと錯覚してしまうほどだった。

 

 しかし、ここに収容されているということは、おそらくはろくでもない力を持っているのだろう。

 

「とりあえず、ちょっとおちついたらどうだ? 時間はまだあるし、俺にも作業があるからゆっくりくつろいでおいてくれ」

 

「あ、あぁ…… そうさせてもらうよ」

 

 そういうと、『O-01-i74』は借りてきた猫のように静かになった。

 

 とりあえず、収容室の清掃から始める。

 

 時折視線を感じるが、話なら作業が終わってからお願いしたいものだ。

 

「……」

 

「……よし、こんなもんだな」

 

「……」

 

 結局、『O-01-i74』は俺の掃除が終わるまで、何も話すことはなかった。

 

 なんだかんだで俺に気を使ってくれたのだろうか? アブノーマリティなのに?

 

「……何も聞かないんだな」

 

「えっ?」

 

 掃除用具の片づけをしていると、ようやく『O-01-i74』が言葉を発した。

 

 だが、その内容はよくわからないものだった。

 

「私がなぜここに来たのかとか、何が人と違うのかとか……」

 

「あぁ、そういうことか」

 

「なぜ、何も聞かないでくれるんだ?」

 

「なぜって……」

 

 そりゃあ、聞いたら藪蛇になりそうとかいろいろ理由はあるけど、一番の理由は……

 

「なんとなく、聞かれたくなさそうだったからな」

 

「……えっ?」

 

「それにさ、話したくなったら自分から話してくれるだろ? だったら俺から聞かなくてもいいかなって」

 

「……ありがとう」

 

 表情は見えないが、なんとなく『O-01-i74』は感極まっているように感じた。

 

 とりあえず、対応が間違ってなさそうでよかった。

 

「なぁ、名前を聞いてもいいかい?」

 

「えっ、あぁ…… ジョシュアだ」

 

 一瞬名前を教えてもいいのだろうかと悩んだが、『F-06-i61』*1のこともあったので、とりあえず教えることにする。

 

 すると、なんとなく『O-01-i74』は嬉しそうに笑った気がした。

 

「ありがとうジョシュア、これからよろしく」

 

「あぁ、よろしく」

 

「……なぁ、もしよかったらなんだが、これからこうして人が来るのなら、それを君にお願いしたい」

 

「えっ?」

 

「他の人とうまくやっていけるか不安ということもあるが、何より君と仲良くなりたいんだ」

 

「……まぁ、上がどう判断するかによるけど、可能な限り来ることにするよ」

 

「……ありがとう、本当に」

 

 それだけ話をして、収容室から出る。

 

 なんというか、随分とやりにくいアブノーマリティだった。

 

 本当にただの人間を相手しているみたいで、むしろ不気味だったといってもいい。

 

 だが、この作業は俺がやった方がいい気がする。

 

 なぜかと言われても、ただの勘としか言えないが……

 

「ようジョシュア、もう作業が終わったのか?」

 

「ようリッチ、作業は完ぺきだったよ」

 

「それで、どんなアブノーマリティだったんだ?」

 

「あぁ、どうやら慎重作業がお気に入りらしい」

 

「なるほどな、そういえば……」

 

 リッチとたわいない話をしながら廊下を歩く。

 

 できることなら、このわずかな楽しい時間を、最後まで守れますように……

 

*1
『終わらぬ夢のアリス』

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