【完結】誰も知らないアブノーマリティー   作:名無しの権兵衛

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Days-30 O-01-i74『警告はしましたよ』

「……なぁ、ジョシュア」

 

「おっ、どうしたんだ?」

 

 今日もゲブラーとの特訓を終えてから、『O-01-i74』への作業を行うところだ。

 

 しかし、今日の『O-01-i74』はなんだか様子が変に感じる。

 

 何かを恐れているような、焦っているような……

 

「お、おかしいんだ。この部屋に来ているのは君だけのはずなのに、ジョシュア以外は誰も俺のことを知らないはずなのに……」

 

 『O-01-i74』は頭を抱えて蹲っている。

 

 そして、突然顔を上げると、そこの見えない顔をこちらに向けて叫び始めた。

 

「どうして、どうしてみんな私のことを知っているんだ!?」

 

 その迫力は、普通のものではなかった。

 

 おそらくは、俺以外に知られることを、本気で恐れているのだ。

 

「お、落ち着け。それは……」

 

「これが落ち着いていられるか!! お、俺は、君以外に知られたくなんてなかった」

 

「僕は!! これ以上知られてしまったら、自分が己ではなくなってしまう……」

 

「……」

 

 つまり、俺の話したことが原因で、こいつは苦しんでいると言いうことだろうか?

 

 そして、情報が洩れていることを、こいつは知ることができるのだろう。

 

 ……いや、感じ取ってしまうということか。

 

「すまない、その情報を他の奴らに教えたのは、俺だ」

 

「……!?」

 

 おそらく誤魔化しても状況は好転しない。

 

 むしろ、隠していては被害が広がる可能性もある。

 

 そして、こいつはおそらく自分の特性を知っているし、状況が悪化するのを阻止したがっている。

 

 ならば、正直に話して協力を仰ぐ方がいいだろう。

 

「はっ、はぁ! き、君はっ!! ……くっ、うぅ、す、すまない、君は悪くないんだ」

 

「いや、すまなかった。俺が情報を共有しようとして、みんなに話したんだ」

 

「……いや、違う。(わたくし)が君に話すことができなかったから、この事態を招いてしまった」

 

 『O-01-i74』は頭を抱えながら、自らを悔いるようにそうつぶやいた。

 

 ……それにしても、話していなかったからではなく、話すことができなかったとは、いったいどういうことだろうか?

 

「なぁ、お前のことを話したのは、そんなにまずいことだったのか?」

 

「…………そう、なのかもしれない」

 

「わからないのか?」

 

「あぁ、わからないんだ。某のことが、わからないんだ……」

 

 どうやら『O-01-i74』は、かなり憔悴しているようだ。

 

 これ以上話を聞くのはやめた方がいいだろうか?

 

「とりあえず、これからはなるべく他の奴らには話さないようにするよ。とはいっても上の人たちには報告しないといけないけど……」

 

「……すまない、そうしてくれると助かる」

 

「あぁ、とりあえず今日はここまでにしておこうか」

 

「……あぁ、またな」

 

 とりあえず『O-01-i74』が落ち着いてから収容室を後にする。

 

 これからは『O-01-i74』の情報の取り扱いを気を付けないといけないな。

 

「……なぁ、輪廻」

 

『どうしたジョシュア、お前から話しかけるとは珍しいな』

 

「お前、あいつのこと何か知ってないか?」

 

 俺の問いかけに、輪廻は口を噤んだ。

 

 俺がそう思ったのは、何も勘だけではない。

 

 こいつは『O-01-i74』と出会ってから、一度も話しかけてこなかった。

 

 今まではなんだかんだで俺に話しかけてきたというのに……

 

『だめだ、それはお前たち人間のやるべきことだ』

 

「……どういうことだ?」

 

『俺が関われば、余計なものが混ざりこむ。これで終わりだ、本来これだけでもリスクのあることなのだ』

 

「……」

 

 輪廻の話からして、余計なことをすれば厄介なことになるから、何も言わないようにしていたということだろうか?

 

 なんだかんだでこいつは嘘をついたりはしない。

 

 これもきっと、本当のことではなるのだろうな。

 

「あっ、ジョシュア先輩!」

 

「ようロバート、大丈夫か?」

 

 気が付けばメインルームの目の前にまでやって来ていた。

 

 そこで、偶然扉の目の前にいたロバートが話しかけてきたのだ。

 

「はい、まだちょっと怖いところはあるっすけど、もう大丈夫っす!」

 

「そうか、でも無理はするなよ?」

 

「はいっす!」

 

 少し元気を取り戻したロバートと話しながら、メインルームの中に入っていく。中には、すでにリッチたちもゆっくりしていた。

 

「ようジョシュア、今日も『O-01-i74』の作業か?」

 

「あぁ、そうだな」

 

「それで、今日はどうだったんだ?」

 

「……いや、できれば話したくないな」

 

「そうか、お前がそういうんだったら、言わないほうがいいんだろうな」

 

 俺が返答に渋ると、リッチはこっちの意図を汲んでそれ以上は聞いてこなかった。

 

 ……だが、ここで予想外のことが起きる。

 

「そういえば、『O-01-i74』っていうと俺たちが危なくなったら無償で助けてくれるんすよね?」

 

「なっ」

 

 なぜそれを知っている。

 

 そう言葉を発しようと思ったが、突然のことで声がとっさに出なかった。

 

 しかも、異常はこれだけにとどまらなかった。

 

「あぁ、そういえばそうらしいな」

 

「あれ、リッチさんも知ってるんすか?」

 

「もちろん、というか、みんなそれくらいは知っているんじゃないか?」

 

「まぁ、それはそうっすよね」

 

 どうやら、ここにいる人間だけでなく、他の職員たちも知っているらしい。

 

 ……いったい、どうなっているのだろうか?

 

 俺は、みんなが楽しそうに『O-01-i74』について話しているのを、唯々見ているしかなかった……

 

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