Days-31 F-01-i70『たった一つの願い事』
「よう、マオ。どうやらだいぶ教育チーフとして様になってるようだな」
「……何が言いたいんだよジョシュア?」
「いや、別に悪い意味で言ってるわけじゃないんだよ。ただ、結構面倒見がいいんだなって思ってさ」
久しぶりにマオに会いに教育部門に向かってみると、そこには新人たちに慕われているマオの姿が見えた。
その新人の中には、メッケンナやミラベルの姿もあった。
「けっ、こんな奴らでも育てればそこそこ使い道があるからな」
「そんなこと言って、僕らが死なないようにいろいろと教えてくれているんですよ」
そういって俺に話しかけてきたのは、メッケンナだった。
久しぶりにあった彼に思わず名前を読んでしまいそうになったが、現在の彼は俺のことを知らないので何とか口を閉じた。
「初めまして、メッケンナです。貴方がジョシュアさんですよね?」
「あぁ、よろしく。俺のことはマオからでも聞いたのか?」
「はい! マオさんジョシュアさんのことをいっつも嬉しそうに話すんですよ! 例えば……」
「おい、メッケンナ!」
どうやら俺にばれるのは恥ずかしかったようで、マオがメッケンナのことを大声で静止した。
すると、さすがにメッケンナもやりすぎたと思ったのか、申し訳なさそうにマオに謝っていた。
「まぁ、楽しそうにやれてるみたいでよかったよ、マオ」
「これのどこが楽しそうだって?」
「なんだかんだで頬が緩んでるぞ」
そう指摘すると、マオは余計に眉に皴を寄せて俺にすごんできたので、そろそろお暇させていただくことにする。
今日収容されたアブノーマリティは、『F-01-i70』だ。
また収容されたFカテゴリーだ。脱走しないように慎重に作業をしなければならないな。
「できればおとなしい奴がいいが……」
『そんなことを言っていると恐ろしい奴がきたりするものだ』
「やめろよ、そんなこと言って本当に厄介な奴が来たらどうするんだよ……」
輪廻が唐突に恐ろしいことを言い始めるので、思わず苦言を漏らす。
少し『F-01-i70』の収容室まで向かう足が遠のこうとするが、何とか気持ちを切り替えて収容室へと向かっていく。
Fカテゴリーのアブノーマリティに関しては、『F-06-i61』*1がいるから本当に気を付けなければならない。
頼むから変なのだけはやめてくれよ……
「……おっと、もう着いたのか」
気が付けば、『F-01-i70』の収容室の前についていた。
いつものように収容室の扉に手をかけて、お祈りをする。
そして、思い切って収容室の扉を開いた。
「……なんだよ、これ?」
収容室の内部は、明かりがついているにもかかわらず、夜のように暗くなっていた。
しかし、だからと言ってまったく何も見えないわけではない。
そう、収容室の中心に瞬く、夜空に輝く星々のような何かが存在しているからだ。
「……これが、『F-01-i70』か?」
とりあえず星のような何か、『F-01-i70』を観察してみる。
それは何か動きを見せるわけでもなく、唯々瞬いているだけであった。
「……とりあえず、作業をするか」
いつものように洞察作業を行い、『F-01-i70』について観察をしてみる。
それは、俺が観察をしているというのに、何も反応を示さずに、ただ不規則に瞬いているだけであった。
「……とりあえず、終わったが」
作業が終わっても、何の変化もなかったそれを、正直どう扱っていいのかよくわからない。
もしかしたら、こういうよくわからない奴こそが、一番厄介なのかもしれないな。
「とりあえず、ここから出るか」
『F-01-i70』の収容室から出て、次の仕事に向かう。
次は『O-01-i74』への作業だ。
気を引き締めてかからないとな。
夜空に瞬く我らの想い
空に流るるは涙か罰か
もしも罪深き我らに慈悲が下るなら
我らが願うは
たった一つの願い事
F-01-i70 『アルタイル』