【完結】誰も知らないアブノーマリティー   作:名無しの権兵衛

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Days-34 F-07-i77『今、逢いに行きます』

「……ジョシュア、最近かまってくれない」

 

「いや、だからそれはごめんって」

 

 どうやら最近あまりかかわれていなかったせいで、シロが拗ねてしまっているようだ。

 

 何とか機嫌を直してほしいところだが……

 

「ほら、今日の限定チョコパフェあげるからさ!」

 

「…………」

 

 俺の提案に対して、動きを止めるシロ。

 

 ……これは、どっちだ?

 

 緊張の走る静寂がしばらく続き、ついにシロが口を開く。

 

「……今回だけだから」

 

「わかったよ、本当にすまなかった」

 

 よっしゃあ! ちょろいぜシロ!!

 

 まったく、こんなんじゃ将来が心配だなぁ!

 

「……」モグモグ

 

 どうやらチョコパフェがお気に召したようで、目を輝かせながらモグモグとパフェを口にほおばっている。

 

 なんというか、小動物を見ているようで癒される光景だ。

 

「おいしいか、シロ?」

 

「……うん」

 

「よかった」

 

 少しにこりと笑うシロ、どうやら機嫌は直ったみたいだ。

 

「……ジョシュア」

 

「どうした?」

 

「……また、ボクと一緒に食べようね」

 

「……あぁ、もちろんだ」

 

 そのあとは、シロと一緒に他愛のない話をして食事を楽しんだ。

 

 

 

 

 

「……さて、今日はいったいどんなツールだろうか?」

 

 福祉部門の収容室を歩きながら、今日収容されたツールについて考える。

 

 今日収容されたツールは『F-07-i77』だ。

 

 もう07って時点で嫌な予感がするんだけど、大丈夫だよな……?

 

「まぁ、どうせツールだし、気を付けて使うしかないよなぁ」

 

 そう一人でぼやいていると、ようやく『F-07-i77』の収容室の目の前までたどり着く。

 

 いつものように収容室の扉に手をかけて、お祈りをする。

 

 そして、思い切り収容室の扉を開いた。

 

 

 

 

 

「……うわぁ、もうこれそういうことじゃん」

 

 『F-07-i77』の収容室の中に入ると、そのあまりの光景に思わず声を漏らしてしまう。

 

 全体的に薄暗い収容室の中央に存在するカプセルの中には、星のような煌めきが存在していた。

 

 この『F-01-i70』*1との共通点に加え、07という特徴的な分類……

 

「つまり陰陽竜とおんなじってことだろ? そんなの使いたくないって……」

 

 完全に時間制限系の厄介ツールじゃん! 『F-01-i70』と会わせたらダメなやつじゃん!!

 

 そもそも、こんなお星さまをどうやって使えっていうんだよ……

 

 そんなことを考えてうなだれていたが、いつまでもそんな調子じゃ仕方がない。

 

 とりあえず使わなければ始まらないのだ。

 

「えっと、とりあえずカプセルから出して…… うおっ!?」

 

 『F-07-i77』をカプセルから出してみると、輝く星々が俺の体にまとわりつき、やがて防具にしみついて輝きとして周囲に残った。

 

「えっと、装備型…… で、いいんだよな?」

 

 とりあえず収容室からでて次の作業に行くことにする。

 

 どうせ装備型なら多少は作業を行わなければいけないのだ。

 

 それなら一回作業に行ってから外して、そのあともう一回使うような感じで使っていくのがおそらくはベストだろう。

 

「それなら、せっかくだし『O-01-i74』のところにでも作業に行こうかな」

 

 『O-01-i74』の作業はほとんど俺の役目みたいになっているし、こいつの使い方もかねて行ってみてもいいだろう。

 

「なら、善は急げだな」

 

 あまり時間的な猶予もないだろうし、さっさと作業を終わらせるに限るな。

 

 そう考えながら、駆け足で『O-01-i74』の収容室へと向かっていった。

 

 

 

 

 

「……なるほど、君も大変だね」

 

「まぁ、それでも俺がやらないといけないことだからな」

 

 『O-01-i74』と雑談をしながら、作業を行う。

 

 洞察作業で部屋をきれいにしながら、ツールの性能を考える。

 

 なんとなくだけど、いつもより体へのダメージが低い気がする。

 

 それに、受けた傷の治りも早いし、条件次第ではかなり有用なツールなのではないだろうか?

 

「……ところで、その防具のお星さまだけど」

 

「えっ?」

 

 少し考えごとをしていると、『O-01-i74』に話しかけられた。

 

 こいつが防具のことに興味を持つなんて珍しいなと思っていると、彼は不思議そうに口を開いた。

 

「それ、あんまりのんびりしているとまずいんじゃないか?」

 

「えっと、わかるのか?」

 

「なんとなくだけど、もうすぐ時間切れじゃないか?」

 

「えっ!?」

 

 マジか、もしかして時間をかけすぎたか!?

 

 これはまずいかもしれない。ここはひとまず急いで収容室から出て、『F-07-i77』を返却しに行かなければ……

 

「わるい、もう行かせてもらう」

 

「そうか、気をつけてな」

 

「ありがとう!」

 

 急いで収容室からでて、『F-07-i77』の収容室へと向かって走りだす。

 

 しかし、もう時間が来てしまったようだ。

 

「うおっ!?」

 

 いきなり防具が光ったかと思うと、何かにはじき出されるように体を投げ出された。

 

「こ、これって……」

 

『『F-01-i70』が脱走しました、近くの職員はすぐに鎮圧に向かってください』

 

『『F-07-i77』が脱走しました、近くの職員はすぐに鎮圧に向かってください』

 

 服からはがれた光はやがてカプセルに収められていた時のように星の形になると、それらが集まって一つの形となる。

 

 ……それは、美しい女性の姿となって現れた。

 

「これが、『F-07-i77』……?」

 

 『F-07-i77』の変化に驚いた者の、このままではいけない。

 

 急いで“残滓”を手元に出して切りつけるも、まるで手ごたえがなかった。

 

「なっ!? もしかして効かないのか!?」

 

 確かに陰陽魚たちも免疫属性を持っていた。

 

 そういうことなら、こいつらも持っていてもおかしくはないか……

 

「なら、これならどうだ!」

 

 今度は手元に“骸”を出して、『F-07-i77』の顔面を思い切りたたきつける。

 

 すると確かな手ごたえはあったものの、『F-07-i77』は気にしたそぶりもなく動き始めた。

 

 ……やはり、福祉部門の方に向かっている。

 

 ここは懲戒部門だから、向こうまでかなり近いし、『F-01-i70』も脱走して動いている。

 

 これは早くこいつを鎮圧しなければ……

 

「一度でダメなら、何度でも……!!」

 

 左手の“残滓”でブーストしながら、右手の“骸”でたたきつける。

 

 最初はあまり聞いてない様子であった『F-07-i77』も、何度もたたきつけられていくうちに少しずつダメージが蓄積されていったようだ。

 

「そろそろ…… うおっ!?」

 

 強めの一撃をお見舞いしてやろうとしたときに、ついに『F-07-i77』が反撃に出てきた。

 

 白い霧のようなものが『F-07-i77』を中心に広がり、俺を襲ってくる。

 

 おそらくは精神に対する攻撃だろう。

 

 “残滓”から火を噴き出して、上空に回避する。

 

 そしてそのまま天井を蹴って勢いのまま“骸”を『F-07-i77』にたたきつけた。

 

「どうだっ! ぐはっ!?」

 

 しかし、まだダメージが足りなかったようだ。

 

 『F-07-i77』からのさらなる反撃を受けて床を転がる。

 

 何とか体勢を立て直すも、すでに『F-07-i77』は懲戒部門の廊下から、中央本部のメインルームに向かって進んでしまった。

 

 急いで『F-07-i77』の後を追うが、もうすでに遅かったようだ。

 

「くそっ、『F-01-i70』か!!」

 

 すでに正面の扉からは『F-01-i70』がメインルームにやって来ていた。

 

 すでにシロとリッチが鎮圧に向かってくれていたようだが、向こうもあまり削ることができなかったようだ。

 

 そうしている間にも、二体の距離は縮まっていく。

 

 このままだと、まずい……!!

 

「シロ! リッチ! 逃げろ!!」

 

「えっ!?」

 

 そして『F-01-i70』と『F-07-i77』が手を伸ばして近づいて、その距離が0になろうとしたその時に……

 

 

 

 

 

 施設の下の方から、星々の奔流が溢れ出してきた。

 

 

 

 

 

「……うっ」

 

 どうやら少しの間気を失っていたようだ。

 

 周囲を見渡すと、リッチとシロが倒れていた。

 

 すぐに確認すると、どうやら二人も大丈夫なようだ。

 

 しかし……

 

「ここは、コントロール部門か?」

 

 先ほどまで中央本部第二のメインルームにいたはずなのに、気づいて時にはコントロール部門のメインルームに寝転がっていた。

 

 とりあえず管理人に状況を確認し、二人を起こす。

 

「……あれ、ここは?」

 

「くっ、無事なのか?」

 

「よかった、二人とも、大丈夫なのか?」

 

 二人が目覚めたので、けががないかを確認して状況を整理する。

 

「たぶん俺たちは、さっきの光に飲まれてこのコントロール部門まで飛ばされてしまったようだ」

 

「……なるほど」

 

「無理やり動かされたのか」

 

「さっき管理人にも確認したが、とりあえず『F-01-i70』と『F-07-i77』は収容室に戻ったようだ」

 

「ほかに被害は?」

 

「……コントロール部門と情報部門にいた職員が行方不明だ」

 

 もしかしたら、さっきの光の波に流されて、コントロール部門よりも上に行ってしまったのかもしれない。

 

 つまり、この地下においてその意味は……

 

「とりあえず、俺たちでも捜索活動を行っていこう」

 

 その後捜索を続けるも、結局彼らを見つけることはできなかった。

 

 

 

 

 

「……ジョシュア」

 

「どうしたんだ、シロ?」

 

「……あのアブノーマリティたち、光の波で引き裂かれたように見えた」

 

「……そうか」

 

「……ジョシュアは、ボクの目の前から、消えない?」

 

「………………そうだな、大丈夫だよ」

 

 

 

 

 

 F-07-i77『ベガ』

 

*1
『アルタイル』

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