Days-36 T-03-i50『祭囃子が聞こえてくる』
「祭りも久しぶりだなぁ」
最後に祭りに行ったのなんて、いつぶりだろうか?
この世界に生れ落ちて23年、確か最後に行ったのは高校最後の夏休みだから、大体23年ぶりだろうか?
「たまには、こういうのもいいのかもしれないな」
周囲を見回してみる。
射的や金魚すくい、りんご飴や綿菓子、ベビーカステラ等の様々な屋台を柱と柱を繋ぐ紐から吊るされた赤提灯が照らしている。
影法師の雑踏の中を歩いていく。
見渡す限り、何処までも続いていそうなほど長い一本道と屋台たち。
長い長いその道は、遠くへ行けば行くほどまばゆい光となって遠くの山まで続いている。
「せっかくだし、どっか寄っていくか」
影法師たちを避けながら、屋台を見て回る。
先ほど見た者以外にも、型抜きやひよこ釣りなど、珍しいものも様々ある。
どんなものがあるのかと物色していると、何かの視線を感じた。
「……なんだよお前」
黒い何かはじっと俺の方を見ているだけだった。
「一緒に来るか?」
黒い何かを伴って、道を行く。
当てもなく、適当に屋台を冷かしながらぶらぶらする。
「それにしても、こうしていると子どものころに戻ったみたいだ」
「やっぱり、懐かしい匂いがするからかな」
懐かしい匂い、懐かしい光景、懐かしいメロディー
どこまで行っても懐かしい、ノスタルジーを感じるこの空間。
いつまでも、居たくなる。
「どうした?」
黒い何かが、屋台から綿あめを持ってきた。
しばらく食べてない、見るだけで子どものころに戻ったみたいだ。
「これをくれるのか?」
反応はないが、どうやらくれるらしい。
俺はそれを受け取る誘惑に耐え切れずに手を伸ばそうとして、止める。
「いや、やっぱりいいよ」
なんとなく気分ではないので、お断りする。
するとなんとなく黒い何かは残念そうにしていた気がした。
「おっ、どこかに連れていってくれるのか?」
なんとなく雰囲気で察して黒い何かについていく。
するすると影法師の人混みを抜けていく黒い何かについていく。
進めば進むほど、山の方に近づいていき、気が付けば山のふもとの階段のところまで来ていた。
「……」
階段の上から、黒い何かがこちらを見つめる。
まるで俺を待っているように。
黒い何かと、山の上から、何かが見つめてくる。
「……いや、俺はいいよ」
踵を返し、走る。
決して振り返らずに、ただひたすらに。
影法師たちの人混みの間をすり抜けて。
背後から何かが迫りくる気配も感じないのに。
ただひたすらに、走る。
気が付けば、屋台の並ぶ道の、端まで来ていた。
その先には、扉。
帰るための、道。
「……」
最後の最後まで、振り返らずに扉を開く。
結局最後まで
祭囃子が聞こえてくる
T-03-i50『鬼胎祭』