「ジョシュアせんぱぁい、最近またいいものをいただけたようでぇ~」
「……サラ、そんなこと言っても渡してあげれないぞ?」
「それはもちろんわかってますよぉ~」
廊下を歩きながらサラと他愛のない話をする。
サラとこうして話をするのはかなり久しぶりなので、ギフトに目がない彼女の圧が強くて困ってしまう。
「それにしても、サラも色々とギフトが増えてきたな」
「えへへぇ、そうですかぁ?」
そう褒められてうれしそうにしているサラ。
こういう時は、可愛いんだよなぁ……
「そういえば先輩は、これから今日来たツールの所行くんですか?」
「あぁ、そろそろ使いに行かないといけないからなぁ」
ある程度作業を終えた昼休憩前、そろそろツールを使っておかないと後々面倒になるかもしれないしな。
適当に雑談をしながら廊下を歩いていく。
どうやらサラも一緒についてきてくれるようだ。
いつもはツールになんて興味を示さないくせに。
「それにしても、なんか今日人が多くないか?」
「えぇっ? 確かに言われてみればそうですねぇ……」
いつもはそこそこまばらな抽出部門のオフィサーたちが、何故かいつもより多い気がする。
それに、今日収容されたツールの収容室の方に近づくほどに多くなっていっているような……
「なんか、いやな予感がするぞ」
「なんだか私もですぅ」
今日収容されたツールは『O-09-i93』だ。
その収容室の目の前までようやくたどり着く。
そしていつものように扉に手をかけ適当に扉を開こうとすると、それより先に扉が開いた……
「「……えっ?」」
俺たちの目の前の扉を開いたのは、ただのオフィサーだった。
服装も見た目も普通の人間そっくりの、ただ表情だけが一切ない、人形のような何かだ。
「お前、所属はどこだ?」
すぐに手元に“残滓”を呼び寄せて、目の前のオフィサーに突きつける。
彼がオフィサーでなければ危険であるし、そうでなく普通のオフィサーであっても彼らが収容室の中に入ることは禁止されている。
そう考えていると、目の前のそれは自分に“残滓”の刃が食い込むことを気にもせず動き始めた。
「お前何を……!?」
その切り口は、明らかに人間の、いや動物のものではなかった。
それは肉と言うよりも、むしろ……
「……大根?」
その断面は、瑞々しい大根のようであった。
「……えぇっとぉ、これはどうするんですかぁ?」
「と、とりあえずそいつを拘束してくれ。そのあとに収容室の中を確認しよう」
サラと一緒に根菜人形を拘束して、収容室の中に入ってみる。
収容室の内部は、言ってしまえば畑のようになっていた。
いや、一点だけ異なる点がある。
それは……
「畑に頭が埋まってる?」
育てられているのが、人間の頭のようなものであるということだ。
それらは大小さまざまなサイズで、中には自ら這い出して来る者も……
「えぇ……」
一番大きい野菜が、畑から這い出てそのまま人間のように歩き始めた。
もちろん、服もすでにきている状態であった。
『ジョシュア、彼らは基本的に無害であることが判明した。無視していいぞ』
「……はい」
とりあえず生えてくる彼らを呆然と眺めていることしかできなかったが、サラが畑に近づき始めた。
「おい、サラ……」
「大丈夫ですよぉ、ちょっと引っこ抜いたらどうなるか確かめようとぉ……」
そういってサラが頭を引っこ抜いた瞬間、言葉で説明しがたい奇声が鳴り響いた。
あまりの声の大きさに耳を塞いで膝をつくと、サラが抜いた状態で倒れていた。
「サラ!!」
「だ、大丈夫ですぅ。ちょっと頭がグワングワンするくらいでぇ……」
どうやら意識はあるようだが、かなり疲れているようだった。
「とりあえず、こいつのことは無視してここから出よう」
「あ、ありがとうございますぅ……」
サラに肩を貸しながら、メインルームの方に向かっていく。
その間にも、どんどん畑からは人形がはい出てくるのであった……
その畑を耕したものは、数百年も前の男であった。
彼の代からその畑は綿々と受け継がれていき、いくつもの野菜を作り出していった。
やがてそのうち、畑にも意識のようなものが芽生え始める。
そして時が過ぎて、その畑を持つ農家が野菜がなかなか売れないと嘆いていたころ、たまたま人のような形をした大根が採れて大喜びしていた。
どうやらその形の野菜で、客寄せができていたようだ。
……なるほどそうか
それならどんどん人型の野菜を作ろう。
人の形をまねて、人の姿に寄せていって……
そして完全な人型の野菜が完成したころには、その畑には誰も寄り付かなくなっていた……
あれぇ?
O-09-i93『産声を上げる畝』