目が覚めた瞬間に、何かに見守られていることに気が付いた。
「……輪廻」
『もちろん気が付いている』
この違和感は、確実にアブノーマリティのものだろう。
とりあえず今すぐに影響があるわけではなさそうだが、気を付けたほうがよさそうだ。
「何かしてくる様子はあるか?」
『現状はないな、それこそ本当に見守っているようだ』
「そうか……」
とりあえずベッドから立ち上がって、仕事の準備をする。
……今日の業務は、大変なものになりそうだ。
「……またこれか」
記録部門のメインルームに到着すると、あの悪魔の装置が鎮座していた。
運命の輪、或いは絶望のルーレット。
これがあるということは、今日収容されたアブノーマリティは生贄を要求するということだ。
今朝のことと言い、今日収容された奴は確実にヤバい奴だな……
「……ジョシュア」
「よう、シロ」
ルーレットを見ていると、シロが話しかけてきた。
彼女もこのルーレットには思うところがあるようで、少し悲しそうな表情をしていた。
「……今日のアブノーマリティ、たぶん危険」
「シロも分かるか?」
「……うん、ずっと見守られている」
どうやらこの視線はシロにもわかっているようだ。
だとしたら、こいつは俺だけじゃなくてこの施設の人間全員を見守っているのだろうか?
とりあえず、他の奴にも聞いてみたいな……
「でも、そろそろ作業に行かないとな……」
シロと別れてから、今日収容されたアブノーマリティの収容室へと向かっていく。
今日収容されたアブノーマリティは、『O-02-i56』だ。
現状わかっているだけでもヤバそうなやつであることがわかるが、一体どんな能力を持っているのやら……
とにかく、気を引き締めていかなければ。
「……もう着いたか」
気が付けばもう『O-02-i56』の収容室の目の前に来ていた。
あの見守られている感覚がどんどん強くなっている。
確実に、この向こうにこの視線の主がいる。
いつものように扉に手をかけ、お祈りをする。
より強い視線を感じながらも、思い切って収容室の扉を開いた……
「……なんだよ、これ?」
収容室の内部は、異様な光景が広がっていた。
収容室の床と壁の一部を、白い何かが侵食している。
その中心には、白いブヨブヨしていそうな何か。
その塊は、背中から鹿の角のような、或いは木の枝のような何かをはやしている。
塊の中心部分には真っ赤な球体が目玉のように輝いている。
それは、一目で悍ましいナニカと理解できるものであった。
……だが、そんなことはどうでもよかった。
「う、あ……」
そんなことがどうでもよくなるくらいに、俺は余裕がなくなってしまう。
「あっ、ああぁぁぁぁ!!!!」
不安、戦慄、恐怖、失意、そして……
それは目の前に対峙しただけで、俺の精神を蝕んだ。
絶望のあまり、思わず床に膝をつく。
その時白いナニカに膝が触れると。
まるで生肉に触れているかのような感触が返ってきた……
Emergency! Emergency! Emergency!
Risk Level ALEPH
O-02-i56 『白い肉塊』