「……はぁ」
「どうしたんだジョシュア、ため息をつきたいのは俺の方だぞ」
「いや、笑えねぇよリッチ……」
今日も記録部門のメインルームにいると、リッチが笑えない冗談を飛ばしてきた。
……冗談だよな?
一応保留になってるっぽいし、そんなに気にするなよ。
「それで、どうしたんだ?」
「いや、最近やばい奴ばっかり収容されているから、今日収容されたアブノーマリティも心配で仕方がないんだ」
「なるほど、まぁ不安になるのも理解できるな」
ただでさえ厄介なのとヤバそうなのが来てるのに、昨日さらにヤバそうなアブノーマリティがやってきやがった。
ここまでくると呪われているのかとすら思えてしまう。
「まぁ、今日くらいは大丈夫そうなやつであることを祈ろう」
「そうだな、それじゃあ行ってくるよ」
「あぁ、いってらっしゃい」
リッチと別れてメインルームから退出する。
今日収容されたアブノーマリティは、『O-04-i67』だ。
……また04だ、正直嫌な予感がしている。
いや、だがまだ希望はあるはずだ。
収容室の前にたどり着くと、いつものように扉に手をかけ、お祈りをする。
そして、希望をもって扉を勢いよく開いた。
「……結局これかよ!?」
収容室の内部に入ると、そこには背の高いカリフラワーのような一本の木がそびえたっていた。
それは静かにそこに立っているように見えるが、しばらくすると自ら上部を激しく振り始め、白い雪のようなものを収容室の内部に振らせ始める。
「なんだこれ、無駄にきれいだな……」
とりあえず、植物型ということで警戒心を強くする。
空から舞ってくる雪が腕に触れるも冷たさは感じず、腕に乗ったまま溶けもしない。
やがてそれはプルプルと震えだし、しまっていた足を広げると元気よく動きだ…… えっ?
「ちょっ、これっ、虫じゃねぇか!?」
腕に小さな白い蜘蛛が乗っていたことに驚き、思わず払いのけた。
どういうことだとでっかいカリフラワーの方に視線を向けると、よく見ればあれは木じゃなくて棒にしがみついた巨大な蜘蛛であることに気が付いた。
「畜生!! なんでこんなことに!?」
とりあえずやけになって食料を投げ捨てると、そこにさっきの粉雪…… 子蜘蛛たちが群がってあっという間に白い毛玉のようになってしまった。
「えぇ…… 嘘だろ?」
仕事だからやるしかないが、できる限り奴らに触れ合いたくない。
仕方がないので子蜘蛛や親蜘蛛に餌を遠くから投げ与えることにしたのだった。
「……あれ、お前イメチェンした?」
「へっ? 何のことですか?」
最近やってきたジョンの髪型が面白いことになっていたから、思わず声をかけてしまった。
いつもは黒髪で角刈りだったジョンが、何故か真っ白なアフロになっていたのだ。
それこそまるで『O-04-i67』みたいに…… いや、待てよ。
「僕何にもやっていないですよ?」
「……もしかして、最近『O-04-i67』の作業をやったか?」
「はい、今さっきやってきたところですけど…… あ、あれ?」
すると、ジョンは目を丸くしたかと思うと、急に白目を剥いて痙攣を始めた。
徐々に頭の方から体の端にかけて真っ白になっていき、全身を覆った。
よく見れば、体の表面が蠢いているが、それの正体を探る気にはならなかった。
「せめて、楽にしてやるからな」
“残滓”と“墓標”を手元に出して、“残滓”で体の表面で蠢く何かを焼き払う。
そして丸見えになった胸に“墓標”を突き立てて、ジョンに安らかな眠りを与えるのであった。
その雪はとっても素敵なものだった
真っ白でフワフワしているのに まったく冷たくない
そしてそれが全身を覆うと とっても素敵な気分になれるんだ
この気持ちをなんと表現したらいいのだろうか?
言葉では表せないこの素晴らしさ
そうだ 言葉で伝えられないなら実際に体験してもらえばいいんだ
だから僕たちは 両手を一杯広げて
この素敵な世界を 君にも伝えたい
O-04-i67 『喜びのお裾分け』