【完結】誰も知らないアブノーマリティー   作:名無しの権兵衛

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設計部門 Ⅱ
Days-46-1 F-02-i45『落っこちて、割れてしまった』


「……ふぅ、祭りも終わりだな」

 

「そうですね、結局危険だからって『T-03-i50』*1への作業は極力やらないことになりましたからね」

 

 パンドラと一緒に話をしながら廊下を歩いていく。

 

 奴が脱走した場合の鎮圧がかなり困難であること、作業時のエネルギー量は多いものの管理にあまり作業が必要がないことなどからあまり作業をしないようにしようということになったのだ。

 

「あ~あ、もっと屋台の食べ物食べたかったなぁ~」

 

「そういうなよ、なんなら食堂に作れないか頼んでみたらどうだ?」

 

「はっ、その手がありましたか!? それではさっそく行ってきます!」

 

「あっ、おい! 仕事中だぞ…… 行っちまった」

 

 もしかしたら余計なことを言ってしまったかもしれない。

 

 そう走り去っていくパンドラの背中を見つめた後、気を取り直して廊下を歩いていく。

 

 今日から設計部門の開放だ。この日からは2体ずつアブノーマリティが収容される。

 

 今日収容されたのは、『F-02-i45』と『O-02-i38』だ。

 

 どっちも動物型であることに少しの期待を持ちつつ、まずは『F-02-i45』の収容室へと向かっていく。

 

「……さて、できればまともなのだといいのだが」

 

 そしてもっと欲を言うならば、モフモフが望ましい。

 

 そんなことを考えながら歩いていると、気が付けば『F-02-i45』の収容室の目の前についていた。

 

 いつものように収容室の扉に手をかけて、お祈りをする。

 

 そしてそのまま、思い切り扉を開いた……

 

 

 

 

 

「なんだお前は、私のことをジロジロと見つめよって」

 

「……はぁ」

 

「なんだそのいかにもがっかりしたとでも言いたげなため息は!?」

 

 収容室に入ると、部屋の端の方に高い塀がたっており、その上に卵のおっさんが座っていた。

 

 ……いや、本当に卵のおっさんとしか言いようのない奴が塀の上でふんぞり返っている。

 

「まったく、ここの奴らは躾がなってないな」

 

 そう偉そうに語っているこいつは、正直相手にするのが面倒な気配がプンプンしていた。

 

 面倒だからさっさと作業を終わらせるか。

 

「おいお前!」

 

「……なんだよ」

 

「なっ、なんて下品な口の利き方だ! 目上の者に対して礼節がなってないじゃないか!」

 

「……まぁ、ある意味目上の物か」

 

 実際に俺よりも目線高いし…… 物理的に。

 

「それで、なんか用ですか?」

 

「あぁまったく、いいか? こういう時はどうしたらいいかというとな……」

 

 一応丁寧に接してつもりだったが、どうやら逆鱗に触れてしまったようだ。

 

 その後、お説教が始まったかと思ったら流れるようにこいつの自慢話に移行して、随分上機嫌に語っている。

 

 正直興味がなさ過ぎて話の半分も覚えていないが、適当に頷いているだけで機嫌を良くしてくれるのでしばらくの間ボブルヘッド人形になっていた。

 

「……ということだったのだ!」

 

「なるほど、素晴らしいですね」

 

「ふっふっふっ、いやはや、君はかなり見込みがあるようだね!」

 

「はぁ、光栄です」

 

「まぁそう謙遜するな! 私が認めているのだ、ほれ」

 

 そういうと、『F-02-i45』は2本指をこちらに向けて差し出してきた。

 

「えっと、これはいったい……」

 

「なんだ察しの悪い奴だな! 握手に決まってるだろ!?」

 

「えぇ……」

 

 なんで指2本で握手なんだよ……

 

 そう思いながらも『F-02-i45』に近づいて、握手をする。

 

 なんというか、本当に面倒な奴だ。

 

「うむうむ、それじゃあまたよろしくな」

 

「はい、また今度……」

 

 なんだこいつ、二度とこねぇわ!?

 

 そう心の中で悪態をつきながら収容室から出る。

 

 まったく、なんて面倒な奴だ。

 

 そんなことを考えながら、次の作業へと向かっていくのだった……

 

 

 

 

 

「やぁ、俺だ! ボブだ! 今から『F-02-i45』に抑圧作業をしてくるぜ!」

 

「……おう、頑張って来いよ!」

 

 陽気な男、ボブが今から作業に向かうようだ。

 

 なんというか、今からあいつに抑圧作業って大変だな……

 

「まぁ、たぶん大丈夫だろ」

 

 なんだかんだでうまくやっていける奴らしいし、マオ曰く『不死鳥みたいなやつ』らしいし……

 

「くっ、失敗したぜ……」

 

「はやっ!? ……って、そうじゃなくて大丈夫か!?」

 

 かなり出血しているように見えたから急いで治療をしようとすると、よく見れば全体的に傷は浅く出血量も見た目だけのようだ。

 

 ……というか、ほとんど表皮しか傷ついていないぞこいつ。滅茶苦茶ケロッとしてるし。

 

「いったいどうしたんだ?」

 

「いやぁ作業を失敗しちゃって」

 

「そ、そうか……」

 

「それで、『F-02-i45』を逃がしちゃって……」

 

「……えっ?」

 

 あいつ脱走したのか? というか、そもそも脱走するタイプだったのか!?

 

「ふんっふふんっふんっふふんっふっふっふっふん~♪」

 

 そんなことを考えていると、廊下の方から『F-02-i45』が鼻唄交じりにスキップしてきた。

 

 ……なんだこいつ。

 

「おぉ、あの時の臣下ではないか」

 

「……俺のことですか?」

 

「まったく、察しの悪い奴だ…… どれ、今そっちに行くから待ってろ」

 

 正直うざいだけで無害なんじゃないかと思ったんだが、こうして脱走している時点でその線はないだろう。

 

 とりあえず“残滓”を手元に出して構えるが、こちらにたどり着く前に『F-02-i45』がその場でこけた。

 

「「……えっ?」」

 

 思わずボブと声がハモってしまう。

 

「いっててて…… まったく、これだから地上は好かん!」

 

 そう悪態をつきながらも再び立ち上がってこちらに向かってくる『F-02-i45』は、よく見ればひび割れていた。

 

 ……なんだかいやな気がする。

 

「ぶへっ」

 

 そして再びコケると、その罅がさらに広がる。

 

「……ブ、ブラザー?」

 

「あぁ、ボブ……」

 

 そして俺たちの目の前まで来て三度目の転倒で、ひび割れた間から強烈な光が漏れ始めた。

 

「マジかよ……」

 

 慌てて“骸”を取り出し、ボブを引き寄せて肉塊の盾を作り上げる。

 

 すると少し遅れて部屋全体を揺さぶる様な衝撃が俺たちを襲う。

 

 何とか肉塊で守ったおかげか直接的なケガこそないものの、肉塊の焼ける恐ろしいほどの悪臭が漂う。

 

「……これは、しばらくは肉が食えそうにないな」

 

「……そうっすね」

 

 

 

 

 

 それは塀の上からいっつも見下してくるの

 

 いっつも偉そうで、よくわからないことばっかり言う

 

 だから寝てる間にドーンと押してやったの!

 

 そしたらね、どうなったと思う?

 

 

 

 

 

 落っこちて、割れてしまったのよ

 

 ふふっ♪

 

 

 

 

 

F-02-i45 『割れる卵』

 

*1
『鬼胎祭』

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