「ようジョシュア、『F-05-i66』*1の討伐お疲れ様」
「あぁリッチか、鎮圧自体は楽だったよ」
『F-05-i66』の鎮圧が終わって設計部門の収容室に向かうと、リッチがくつろいでいた。
とりあえず俺も椅子に座ってくつろぐことにする。
「聞いたよ、あいつにやられた二人がまだ眠ったままなんだろ?」
「あぁ、早く起きてくれることを祈っているが……」
とりあえず治療はしたが、いまだに目覚める気配はない。
何か嫌な予感がするが……
「そういえば、今日のツールはもう使ったのか?」
「……いや」
そういえば、いろいろとドタバタしていたせいでまだだったな。
「はぁ、行ってくるか」
「おう、頑張って来いよ」
リッチに見送られながら収容室に向かって歩いていく。
今日収容されたツールは『T-09-i78』だ。
できればツールは使いたくないけど、結局誰かが使わないといけないからなぁ……
「……はぁ、できれば使いたくないなぁ」
だが、残りの日数もあと少しだ。
とりあえず頑張っていかないといけないな。
「おっ、もう着いたのか……」
気が付けばもう『T-09-i78』の収容室の目の前に来ていた。
とりあえず、今まで通り雑に扉を開いて中に入った。
「……なんだこれ、仮面か?」
収容室の中に入っていたのは、奇妙な仮面であった。
顔全体を覆うような真っ白な仮面には、真っ赤な三日月のような目と口が描かれている。
……まぁこれをつけろってことだろうな。
「あんまりつけたくないなぁ……」
でも、つけるしかないので、ポッドの中からツールを取り出す。
とりあえず手に取ってみたものの、手触りも普通の物と大差ないように感じる。
そしてしばらく『T-09-i78』を見つめた後に、思い切って仮面をつけてみた。
「……あれ?」
とりあえず、仮面に目や呼吸のための穴はなかったが、特に問題なく見えるし呼吸もできた。
それにしても、なんだろうか?
これを付けているだけで、心が安らぐようだ。
「せっかくだし、このまま作業をしに行くか」
なんとなく作業をしに行く。
このままのほうが、うまくいきそうな気がしたから……
「……すげぇ」
『O-02-i56』*2の作業をかなりスムーズに行うことができた。
精神的な負担もかなり少ないし、これはいいかもしれない……
「……お帰り、ジョシュア」
「おう、ただいま」
メインルームに戻ると、知り合いが話しかけてきた。
彼女は仮面をつけている俺のことを見て一瞬驚いた顔をしていた。
「……ジョシュア、その仮面何?」
「おっ? こいつはつけてるとなんて言うか…… いろいろうまくいく気がする仮面だよ」
名前は…… あれ、なんだっけ?
まぁいいか、特に気にする必要はないしな。
「……ジョシュア、それ外して」
「えっ?」
何を言っているんだこの人は?
これを付ければ心が軽くなるし、周りのことも気にならないというのに……
「……あれ?」
そういえば、なんで俺はこれを付けてるんだっけ?
別につけるくらいいいのか?
これを付けて何するんだっけ?
これからどうすればいいんだっけ?
あれ?
そもそも俺って……
「だめですよ、ジョシュア先輩。仮面なんて被っちゃ」
隙間に冷たく鋭い何かが挟まり、動く感触がする。
気が付けば、顔についていた何かが外れていた。
「ジョシュア先輩には、こんなもの似合いませんよ」
「……パンドラ?」
目の前ではパンドラが『T-09-i78』を手に持って悲しそうな表情をしていた。
周囲を見渡せば、シロやリッチが心配そうに俺を囲んでいた。
「それじゃあこれは、私が戻しておきますね」
そういうとパンドラは、『T-09-i78』を収容室まで運んでいった。
……これは、ツールにやられそうなところをパンドラに助けられたのだろうか?
……いや、そもそもツールって、他人が外せるのか?
いつも、周りの人間は自分に期待していた
しかし自分には、その力はないと自覚していた
それでも期待に応えようと、必死になって努力をしていた
すると余計に、期待は高まった
どれだけ頑張っても報われぬ、負のスパイラルにとらわれた結果……
期待に耐え切れず、仮面をつけるしかなかった
T-09-i78『忘却の仮面』
「……そういえば、なんか忘れてないか?」
「えっ?」
ツールの事件も終わりしっかりとエネルギーを集めてもう少しで目的達成というところで、ふとそんなことを思い付いた。
なんだろうか? かなり大事なことだったような……
「まぁ、もうすぐ今日の業務も終わるし大丈夫だろう」
「……そうか?」
確かにもうそろそろエネルギーも溜まるし、今パンドラが作業に向かったところだし、大丈夫か?
「まぁ、でも次でクリフォト暴走だから気を付けないとな」
「あぁ、そうだな……」
「……クリフォト暴走?」
そういえば、『O-02-i56』に作業してたっけ?
そんな疑問に答えを見つける前に、メインルームの中心に光の塊が出現し……
弾けて、光がすべてを塗りつぶした
Emergency! Emergency! Emergency!
Risk Level ALEPH
それは 獣に堕ちた母
純真で 純情で 純白な彼女は 慈しみをもって見守っている
彼女が願うは皆の幸福
それを叶える力が 彼女にはある
しかし 禍福は糾える縄の如し
良きことも悪しきことも表裏一体なのだ
大きな幸福があれば 大きな災いが待っている
幸福とは、そういうものだ
O-02-i56『アザナエル』