【完結】誰も知らないアブノーマリティー   作:名無しの権兵衛

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Days-47-2 T-09-i78『期待に耐え切れず、仮面をつけるしかなかった』

「ようジョシュア、『F-05-i66』*1の討伐お疲れ様」

 

「あぁリッチか、鎮圧自体は楽だったよ」

 

 『F-05-i66』の鎮圧が終わって設計部門の収容室に向かうと、リッチがくつろいでいた。

 

 とりあえず俺も椅子に座ってくつろぐことにする。

 

「聞いたよ、あいつにやられた二人がまだ眠ったままなんだろ?」

 

「あぁ、早く起きてくれることを祈っているが……」

 

 とりあえず治療はしたが、いまだに目覚める気配はない。

 

 何か嫌な予感がするが……

 

「そういえば、今日のツールはもう使ったのか?」

 

「……いや」

 

 そういえば、いろいろとドタバタしていたせいでまだだったな。

 

「はぁ、行ってくるか」

 

「おう、頑張って来いよ」

 

 リッチに見送られながら収容室に向かって歩いていく。

 

 今日収容されたツールは『T-09-i78』だ。

 

 できればツールは使いたくないけど、結局誰かが使わないといけないからなぁ……

 

「……はぁ、できれば使いたくないなぁ」

 

 だが、残りの日数もあと少しだ。

 

 とりあえず頑張っていかないといけないな。

 

「おっ、もう着いたのか……」

 

 気が付けばもう『T-09-i78』の収容室の目の前に来ていた。

 

 とりあえず、今まで通り雑に扉を開いて中に入った。

 

 

 

 

 

「……なんだこれ、仮面か?」

 

 収容室の中に入っていたのは、奇妙な仮面であった。

 

 顔全体を覆うような真っ白な仮面には、真っ赤な三日月のような目と口が描かれている。

 

 ……まぁこれをつけろってことだろうな。

 

「あんまりつけたくないなぁ……」

 

 でも、つけるしかないので、ポッドの中からツールを取り出す。

 

 とりあえず手に取ってみたものの、手触りも普通の物と大差ないように感じる。

 

 そしてしばらく『T-09-i78』を見つめた後に、思い切って仮面をつけてみた。

 

「……あれ?」

 

 とりあえず、仮面に目や呼吸のための穴はなかったが、特に問題なく見えるし呼吸もできた。

 

 それにしても、なんだろうか?

 

 これを付けているだけで、心が安らぐようだ。

 

「せっかくだし、このまま作業をしに行くか」

 

 なんとなく作業をしに行く。

 

 このままのほうが、うまくいきそうな気がしたから……

 

 

 

 

 

「……すげぇ」

 

 『O-02-i56』*2の作業をかなりスムーズに行うことができた。

 

 精神的な負担もかなり少ないし、これはいいかもしれない……

 

「……お帰り、ジョシュア」

 

「おう、ただいま」

 

 メインルームに戻ると、知り合いが話しかけてきた。

 

 彼女は仮面をつけている俺のことを見て一瞬驚いた顔をしていた。

 

「……ジョシュア、その仮面何?」

 

「おっ? こいつはつけてるとなんて言うか…… いろいろうまくいく気がする仮面だよ」

 

 名前は…… あれ、なんだっけ?

 

 まぁいいか、特に気にする必要はないしな。

 

「……ジョシュア、それ外して」

 

「えっ?」

 

 何を言っているんだこの人は?

 

 これを付ければ心が軽くなるし、周りのことも気にならないというのに……

 

「……あれ?」

 

 そういえば、なんで俺はこれを付けてるんだっけ?

 

 別につけるくらいいいのか?

 

 これを付けて何するんだっけ?

 

 これからどうすればいいんだっけ?

 

 あれ?

 

 そもそも俺って……

 

 

 

 

 

「だめですよ、ジョシュア先輩。仮面なんて被っちゃ」

 

 隙間に冷たく鋭い何かが挟まり、動く感触がする。

 

 気が付けば、顔についていた何かが外れていた。

 

「ジョシュア先輩には、こんなもの似合いませんよ」

 

「……パンドラ?」

 

 目の前ではパンドラが『T-09-i78』を手に持って悲しそうな表情をしていた。

 

 周囲を見渡せば、シロやリッチが心配そうに俺を囲んでいた。

 

「それじゃあこれは、私が戻しておきますね」

 

 そういうとパンドラは、『T-09-i78』を収容室まで運んでいった。

 

 ……これは、ツールにやられそうなところをパンドラに助けられたのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……いや、そもそもツールって、他人が外せるのか?

 

 

 

 

 

 いつも、周りの人間は自分に期待していた

 

 しかし自分には、その力はないと自覚していた

 

 それでも期待に応えようと、必死になって努力をしていた

 

 すると余計に、期待は高まった

 

 どれだけ頑張っても報われぬ、負のスパイラルにとらわれた結果……

 

 

 

 

 

 期待に耐え切れず、仮面をつけるしかなかった

 

 

 

 

 

T-09-i78『忘却の仮面』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そういえば、なんか忘れてないか?」

 

「えっ?」

 

 ツールの事件も終わりしっかりとエネルギーを集めてもう少しで目的達成というところで、ふとそんなことを思い付いた。

 

 なんだろうか? かなり大事なことだったような……

 

「まぁ、もうすぐ今日の業務も終わるし大丈夫だろう」

 

「……そうか?」

 

 確かにもうそろそろエネルギーも溜まるし、今パンドラが作業に向かったところだし、大丈夫か?

 

「まぁ、でも次でクリフォト暴走だから気を付けないとな」

 

「あぁ、そうだな……」

 

「……クリフォト暴走?」

 

 そういえば、『O-02-i56』に作業してたっけ?

 

 そんな疑問に答えを見つける前に、メインルームの中心に光の塊が出現し……

 

 

 

 

 

 弾けて、光がすべてを塗りつぶした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Emergency! Emergency! Emergency!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Risk Level ALEPH

 

 

 

 

 

 

 

 

 

禍福糾縄

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは 獣に堕ちた母

 

 純真で 純情で 純白な彼女は 慈しみをもって見守っている

 

 彼女が願うは皆の幸福

 

 それを叶える力が 彼女にはある

 

 しかし 禍福は糾える縄の如し

 

 良きことも悪しきことも表裏一体なのだ

 

 大きな幸福があれば 大きな災いが待っている

 

 

 

 

 

 幸福とは、そういうものだ

 

 

 

 

 

O-02-i56『アザナエル』

 

*1
『茨に眠る王国』

*2
『白い肉塊』

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