ギュオアァァァァァッァァァァァァァァアアアアアアアア!!!!!」
「うおっ!?」
奇妙な叫び声と共に意識を取り戻す。
気が付けば、抽出部門の廊下の前に来ていた。
「俺はいったい何を……?」
手には鉄パイプを持っていた。
もしかして、パニック状態になっていたのか?
「くそっ!? 一体どれくらいの時間パニックになっていたんだ……」
『ジョシュア、大丈夫か!?』
「管理人?」
意識を取り戻したからか、管理人から連絡が来た。
とりあえず情報を把握することができるチャンスだ。
「管理人! 今一体どうなっているんだ!?」
『今『F-02-i45』*1、『O-02-i38』*2、『F-05-i66』*3が脱走して、設計部門にいた職員全員がパニックになってしまった』
『今他の職員たちにはそれぞれ無事だった職員を向かわせている、とりあえず脱走したアブノーマリティの対処を頼む!』
「わかった!」
くそっ、いきなりなんなんだこれは!?
いきなりこんなことになるなんて……
「管理人! こんな状況になっている原因はわかるか!?」
『……おそらくは、『O-02-i56』の特殊能力、だと思う』
『こちらから確認しているが、明らかに奴の様子がおかしい。翼が大きく広がり、赤い部分が激しく点滅している』
……やっぱりあいつだったか。
意識を失う前に、そういえばあいつにしばらく作業をしていなかったと思い出した。
くそっ、しかも、この様子だとまだ終わりじゃない……!!
『ジョシュア、今中央第二で再び閃光が放たれた! 職員は全員避難させていたから大丈夫だが、今度は『T-05-i14』*4、『T-04-i62』*5、『F-02-i49』*6が脱走してしまった』
「くそっ!? ……いや、もしかして」
こいつ、まさかあの『赤ちゃん』と同じなのか!?
いや、やってることを考えれば、奴の強化版……
……ということは。
「……管理人、今『O-02-i56』に作業はできるか?」
『……現状は、生贄作業しかできない』
……やっぱり。
それならば、おそらくは奴を満足させれば何とかなるはずだ。
しかしそれは、犠牲を伴うということでもあった。
「管理人、生贄は、試したか?」
『……まだだ、だが、しかし!』
「おそらくは、この状況を解決するにはそれしかない」
「……運が良ければ、『O-09-i93-1』が選ばれる」
『……わかった、恨むなよ』
「恨まれるなら、それは俺だよ」
結局この事態をどうにかするために、犠牲を伴う提案をしたんだ。
管理人が通信を切ると、その瞬間に絶望のルーレットが回り始める。
誰が選ばれたのかわかるように、施設全体にルーレットの映像が流れている。
そして、『O-09-i93-1』が選ばれたとともに、設計部門の廊下にたどり着いた。
「悪いが、すぐに鎮圧させてもらうぞ!!」
“墓標”と“骸”を取り出して、真っ先に『F-02-i45』にたたきつける。
そして“骸”で肉塊を生み出し全身を包み込む繭を作って爆発をやり過ごす。
「くっ! 管理人! 『O-02-i56』の様子はどうだ!?」
繭から抜け出してすぐに管理人と連絡を取る。
するとすぐに返事が返ってきた。
『ダメだ! 点滅は少し緩やかになったが、いまだに収まらない! 次はコントロール部門に光が集まっている!』
「……マジかよ」
生贄じゃダメだったのか!?
……いや、でも変化はあったといっていた。
つまり、生贄は一人ではダメだということか?
「……管理人」
『大丈夫だ、言わなくてわかっている』
「……すまない」
再び、絶望のルーレットが回り始める。
その間に『F-02-i45』の爆発が直撃しひるんでいた『F-05-i66』に“墓標”を突き立て、内側から骨の華を咲かせる。
『F-05-i66』が動かなくなったことを確認すると、瞬間移動で俺との距離を詰めてきた『O-02-i38』に向かって“骸”を叩きつける。
「……くっ」
しかし、奴も“骸”の一撃には警戒をしているのか、すぐに瞬間移動で距離を取ってきた。
……とにかく、これ以上時間をかけるわけにはいかない。
“骸”を床にたたきつけ、“残滓”を取り出し、青白い炎を“墓標”に移す。
『O-02-i38』は武器を構えたかと思えば、今度は俺の側面に瞬間移動で現れ武器を振り下ろす。
俺はそれを“残滓”で受け止め、そのまま心臓めがけて“墓標”を突き立てる。
『O-02-i38』は再び瞬間移動をしようとしたようだが、そのまま何もできず“墓標”に貫かれる。
「……悪いな」
あらかじめ“骸”で床に蜘蛛の巣のように肉塊を張り巡らせ、着地した時点で足を絡めて瞬間移動を封じさせてもらった。
「……ふぅ」
『O-02-i38』の鎮圧が終わると、ちょうどルーレットが『O-09-i93-1』を示していた。
「管理人! これで……」
『ダメだ! かなり弱弱しくなっているが、まだ点滅を続けている!』
『おそらくもう一度使わなければ…… まずい! 次は懲戒部門に光が!!』
「なっ!?」
あそこには『O-01-i74』*7がいる。
奴の脱走はかなりまずい、下手をすれば施設が崩壊してしまう!
「くそっ!!」
“骸”と“墓標”の力を引き出して、改造した肉体の力を最大限に使う。
ここからは少し遠いが、この調子で走っていけば、誰かがエンカウントする前に奴の所に行けるはず……!!
走り出すと同時に三度ルーレットが回り始める。
頼むから、最後まであたりを引いてくれ……!!
『……すまんジョシュア、今『T-05-i28』*8が脱走した』
「……えっ?」
その瞬間、目の前が真っ白になった。
「……まったく、ひどい目にあった」
結局あの後は、運よく『O-09-i93-1』が当たったことで最後の生贄作業を果たすことができたようだ。
そのついでに脱走していたアブノーマリティたちも収容されていき、あのおぞましき『T-05-i28』もすぐに収容されたおかげで、被害者は俺とボブだけで済んだようだ。
「これもすべてお前のせいだな」
そういって目の前の白い肉塊をにらみつける。
『O-02-i56』、それと相対した結果、あの感覚がやってくる。
……目の前の真っ白な肉塊は、無機質な瞳でこちらを見つめる
背中の枝のような翼を広げるその姿は、まるで抱擁をしようとしているようにも、大きな口を開いて獲物を食らおうとしているようにも見えた
表裏一体、禍福は糾える縄の如し
果たして目の前の存在を受け入れていいものだろうか?
そんな考えが頭をよぎる
何かを期待するかのような瞳が俺を射抜く
俺はこの白い肉塊に……
抱擁を交わした
どこか暖かなものが体の中に流れ込んでくる
それらは顔に集まっていき、丸い宝石のようなものとなって顔面に張り付くのであった
O-02-i56『アザナエル』