【完結】誰も知らないアブノーマリティー   作:名無しの権兵衛

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EXTRA 4 『禍福、或いは最も優しい獣』

ギュオアァァァァァッァァァァァァァァアアアアアアアア!!!!!」

 

「うおっ!?」

 

 奇妙な叫び声と共に意識を取り戻す。

 

 気が付けば、抽出部門の廊下の前に来ていた。

 

「俺はいったい何を……?」

 

 手には鉄パイプを持っていた。

 

 もしかして、パニック状態になっていたのか?

 

「くそっ!? 一体どれくらいの時間パニックになっていたんだ……」

 

『ジョシュア、大丈夫か!?』

 

「管理人?」

 

 意識を取り戻したからか、管理人から連絡が来た。

 

 とりあえず情報を把握することができるチャンスだ。

 

「管理人! 今一体どうなっているんだ!?」

 

『今『F-02-i45』*1、『O-02-i38』*2、『F-05-i66』*3が脱走して、設計部門にいた職員全員がパニックになってしまった』

 

『今他の職員たちにはそれぞれ無事だった職員を向かわせている、とりあえず脱走したアブノーマリティの対処を頼む!』

 

「わかった!」

 

 くそっ、いきなりなんなんだこれは!?

 

 いきなりこんなことになるなんて……

 

「管理人! こんな状況になっている原因はわかるか!?」

 

『……おそらくは、『O-02-i56』の特殊能力、だと思う』

 

『こちらから確認しているが、明らかに奴の様子がおかしい。翼が大きく広がり、赤い部分が激しく点滅している』

 

 ……やっぱりあいつだったか。

 

 意識を失う前に、そういえばあいつにしばらく作業をしていなかったと思い出した。

 

 くそっ、しかも、この様子だとまだ終わりじゃない……!!

 

『ジョシュア、今中央第二で再び閃光が放たれた! 職員は全員避難させていたから大丈夫だが、今度は『T-05-i14』*4、『T-04-i62』*5、『F-02-i49』*6が脱走してしまった』

 

「くそっ!? ……いや、もしかして」

 

 こいつ、まさかあの『赤ちゃん』と同じなのか!?

 

 いや、やってることを考えれば、奴の強化版……

 

 ……ということは。

 

「……管理人、今『O-02-i56』に作業はできるか?」

 

『……現状は、生贄作業しかできない』

 

 ……やっぱり。

 

 それならば、おそらくは奴を満足させれば何とかなるはずだ。

 

 しかしそれは、犠牲を伴うということでもあった。

 

「管理人、生贄は、試したか?」

 

『……まだだ、だが、しかし!』

 

「おそらくは、この状況を解決するにはそれしかない」

 

「……運が良ければ、『O-09-i93-1』が選ばれる」

 

『……わかった、恨むなよ』

 

「恨まれるなら、それは俺だよ」

 

 結局この事態をどうにかするために、犠牲を伴う提案をしたんだ。

 

 管理人が通信を切ると、その瞬間に絶望のルーレットが回り始める。

 

 誰が選ばれたのかわかるように、施設全体にルーレットの映像が流れている。

 

 そして、『O-09-i93-1』が選ばれたとともに、設計部門の廊下にたどり着いた。

 

「悪いが、すぐに鎮圧させてもらうぞ!!」

 

 “墓標”と“骸”を取り出して、真っ先に『F-02-i45』にたたきつける。

 

 そして“骸”で肉塊を生み出し全身を包み込む繭を作って爆発をやり過ごす。

 

「くっ! 管理人! 『O-02-i56』の様子はどうだ!?」

 

 繭から抜け出してすぐに管理人と連絡を取る。

 

 するとすぐに返事が返ってきた。

 

『ダメだ! 点滅は少し緩やかになったが、いまだに収まらない! 次はコントロール部門に光が集まっている!』

 

「……マジかよ」

 

 生贄じゃダメだったのか!?

 

 ……いや、でも変化はあったといっていた。

 

 つまり、生贄は一人ではダメだということか?

 

「……管理人」

 

『大丈夫だ、言わなくてわかっている』

 

「……すまない」

 

 再び、絶望のルーレットが回り始める。

 

 その間に『F-02-i45』の爆発が直撃しひるんでいた『F-05-i66』に“墓標”を突き立て、内側から骨の華を咲かせる。

 

 『F-05-i66』が動かなくなったことを確認すると、瞬間移動で俺との距離を詰めてきた『O-02-i38』に向かって“骸”を叩きつける。

 

「……くっ」

 

 しかし、奴も“骸”の一撃には警戒をしているのか、すぐに瞬間移動で距離を取ってきた。

 

 ……とにかく、これ以上時間をかけるわけにはいかない。

 

 “骸”を床にたたきつけ、“残滓”を取り出し、青白い炎を“墓標”に移す。

 

 『O-02-i38』は武器を構えたかと思えば、今度は俺の側面に瞬間移動で現れ武器を振り下ろす。

 

 俺はそれを“残滓”で受け止め、そのまま心臓めがけて“墓標”を突き立てる。

 

 『O-02-i38』は再び瞬間移動をしようとしたようだが、そのまま何もできず“墓標”に貫かれる。

 

「……悪いな」

 

 あらかじめ“骸”で床に蜘蛛の巣のように肉塊を張り巡らせ、着地した時点で足を絡めて瞬間移動を封じさせてもらった。

 

「……ふぅ」

 

 『O-02-i38』の鎮圧が終わると、ちょうどルーレットが『O-09-i93-1』を示していた。

 

「管理人! これで……」

 

『ダメだ! かなり弱弱しくなっているが、まだ点滅を続けている!』

 

『おそらくもう一度使わなければ…… まずい! 次は懲戒部門に光が!!』

 

「なっ!?」

 

 あそこには『O-01-i74』*7がいる。

 

 奴の脱走はかなりまずい、下手をすれば施設が崩壊してしまう!

 

「くそっ!!」

 

 “骸”と“墓標”の力を引き出して、改造した肉体の力を最大限に使う。

 

 ここからは少し遠いが、この調子で走っていけば、誰かがエンカウントする前に奴の所に行けるはず……!!

 

 走り出すと同時に三度ルーレットが回り始める。

 

 頼むから、最後まであたりを引いてくれ……!!

 

『……すまんジョシュア、今『T-05-i28』*8が脱走した』

 

「……えっ?」

 

 その瞬間、目の前が真っ白になった。

 

 

 

 

 

「……まったく、ひどい目にあった」

 

 結局あの後は、運よく『O-09-i93-1』が当たったことで最後の生贄作業を果たすことができたようだ。

 

 そのついでに脱走していたアブノーマリティたちも収容されていき、あのおぞましき『T-05-i28』もすぐに収容されたおかげで、被害者は俺とボブだけで済んだようだ。

 

「これもすべてお前のせいだな」

 

 そういって目の前の白い肉塊をにらみつける。

 

 『O-02-i56』、それと相対した結果、あの感覚がやってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……目の前の真っ白な肉塊は、無機質な瞳でこちらを見つめる

 

 背中の枝のような翼を広げるその姿は、まるで抱擁をしようとしているようにも、大きな口を開いて獲物を食らおうとしているようにも見えた

 

 表裏一体、禍福は糾える縄の如し

 

 果たして目の前の存在を受け入れていいものだろうか?

 

 そんな考えが頭をよぎる

 

 何かを期待するかのような瞳が俺を射抜く

 

 俺はこの白い肉塊に……

 

 

 

 

 

 抱擁を交わした

 

 

 

 

 

 どこか暖かなものが体の中に流れ込んでくる

 

 それらは顔に集まっていき、丸い宝石のようなものとなって顔面に張り付くのであった

 

 

 

 

 

O-02-i56『アザナエル』

 

*1
『割れる卵』

*2
『ナイトストーカー』

*3
『茨に眠る王国』

*4
『記憶の棺桶』

*5
『道連れの悋気』

*6
『愚かな施し』

*7
『No Name』

*8
『戦慄のナッツクラッカー』

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