「……ジョシュア、どうしたの?」
「あぁ、いや何でもないよ」
少し考え事をしていると、シロが話しかけてきた。
もう少しで、この地獄の物語も終わりを迎える。
セフィラ抑制はすでに前の週ですべて終わらせている。
そして前の週の失敗の原因である『O-07-i99』*1はこの週で収容されていない。
今回こそは、50日の向こうまで、いけるだろう。
「さて、そろそろ作業をしに行こうかな」
「……もう行っちゃうの?」
「そんな顔するなって、またお昼休みにでも話そう」
「……うん」
少し寂しそうなシロとお別れをして、メインルームを離れる。
今日収容されたアブノーマリティは、『T-05-i08』と『T-04-i51』だ。
ちょっと前に収容されたのはFカテゴリーのアブノーマリティが多かったが、今回はTカテゴリーのアブノーマリティが多いな。
まぁ、正直Fカテゴリーのアブノーマリティでさえなければそこまで気にならないのだが……
「おっと、もう着いたのか」
気が付けばもう、『T-05-i08』の収容室の目の前までやってきていた。
今日は先にこっちから行こう。
そんなことを考えながら、収容室の扉に手をかけて、お祈りをする。
そして、思い切って扉を開いた。
「……これは」
そこにあったのは、何らかの機械であった。
冷蔵庫ほどの大きさの機械に、何やらシュレッダーのような装置が取り付けられている。
そして冷蔵庫の上には、なにやらコック帽をかぶった男性のキャラクターのポップがのっかっていた。
まぁ、この見た目から察するに、料理をするための機械ということだろう。
……料理、機械、アブノーマリティ、なんか嫌な予感がする。
しかし、もう収容室の中に入ってしまったからにはしょうがない。
このまま作業に入るしかないだろうな。
「とりあえず、いつも通り洞察作業を行おうか」
掃除用具を取り出して、収容室の中を清掃していく。
収容室の清掃が終われば、次はアブノーマリティ本体の清掃だ。
とりあえず…… シュレッダーのような機械の方には、嫌な予感しかしない赤黒い汚れがあるので綺麗に清掃していく。
「……これ絶対血だろ」
血のついた機械と言えば、もうあのアブノーマリティしか思いつかない。
もし、あいつと同じようなら……
いや、余計なことは考えないでおこう。
「……ふぅ、とりあえず作業が終わったな」
作業も終わり収容室から出ようとしたその時、チンという音と共に何かが出される音がなった。
まさかと思い『T-05-i08』のほうに振り向くと、冷蔵庫のような機械の方から料理が出されていた。
「……いや、ダメだろこれ」
明らかに食べてはいけない料理だ。
そう考えながら『T-05-i08』に近づいていく。
とてもおいしそうな匂いを嗅ぎながら料理を確認する。
それはとても香ばしい匂いを漂わせるチャーハンであった。
「……おいしい」
一口食べてみると、非常においしかった。
パラパラしていてべたつかない、俺の貧相な語彙力ではすべてを語りつくせないほどの美味であった。
「……ふぅ」
気が付けば、お皿は空になっていた。
とてもおいしくて素晴らしい料理だった。
しかし、肉がないのだけは残念だった。
……あぁ、そうか。
肉ならここにあるじゃないか。
『……おい、ジョシュア!?』
シュレッダーのような機械に自分の身を投げる。
まぁ、おいしい料理の為ならば、仕方ないよな。
「……はぁ!?」
気が付けば、朝の時間に戻っていた。
どうやら管理人がちゃんと時間を戻してくれたようだ。
「……これ、まさか」
『……あぁ、魅了されていたぞ』
輪廻の声が頭の中に響く。
……やっぱり、あいつ『クソ機械』じゃねぇか!?
となると、たぶんステータス制限タイプのアブノーマリティだこれ。
あぁもう、最悪じゃないか。
こうなると、もう俺ができることはないか……
「仕方ない、もう片方を作業するしかないか」
とりあえず準備をしてから部屋を出る。
今度こそは、死なないようにしないとな……
それは食材さえ入れればどんな料理だって作ってくれる夢のような機械だ
いつだって、どんな料理だって、食材さえあればちゃんと作ってくれる
……しかし、一回だけ食べた料理が忘れられないんだ
あの料理を食べたい、もう一度食べたい
ほかの料理をどれだけ食べようとも、あの味を忘れることはない
どれだけ時がたとうとも、胸を焦がすこの気持ちが収まることはない
やはり、やはりあれでなければいけないのだろうか?
あの料理を食べるには……
やはり、人でなければならなかった
T-05-i08『フレディのワクワクわんぱくレストラン』