「……ジョシュア、どうしたの?」
「あぁ、いや何でもないよ」
今日も再び同じ日が始まるのかと、少し憂鬱になっていた。
とりあえず前回の『T-05-i08』*1には作業をしないほうがいいだろうな。
「やぁ、俺だ! ボブだ! 今から『T-05-i08』に愛着作業を行ってくるぜ!」
「えっ、大丈夫かよ?」
「あぁ、大丈夫さ!」
そういってボブは『T-05-i08』の収容室に向かっていった。
……いや、管理人も何か考えがあってのことだろう。
それになんとなくボブは大丈夫そうな気がする。なんとなくだが……
「さて、そろそろ作業をしに行こうかな」
「……もう行っちゃうの?」
「そんな顔するなって、またお昼休みにでも話そう」
「……うん」
昨日と同じようなやり取りをして、少し寂しそうなシロとお別れをしてメインルームを離れる。
今日収容されたアブノーマリティは、『T-05-i08』と『T-04-i51』だ。
とりあえず『T-05-i08』はボブが作業をするようなので、『T-04-i51』に作業をすることにする。
設計部門の廊下を歩いていくと、すぐに『T-04-i51』の収容室の前にたどり着く。
いつものように扉に手をかけて、お祈りをする。
そして、思い切り扉を開いた……
「……うわっ、汚っ」
収容室の中には、薄汚い犬のぬいぐるみが転がっていた。
「可愛いなぁ」
ついに来た! 久しぶりのモフモフだ!
可愛らしいワンコを抱っこして存分にモフモフする。
あぁ、癒される……
「最近厄介な奴ばっかりだったからなぁ……」
存分にモフモフしているが、『T-04-i51』も特に嫌がるそぶりもなくむしろ喜んでいるように感じる。
『おいジョ「いやぁ、たまにはこういうのもいいよなぁ」
『T-04-i51』に頬擦りをして甘やかす。
しかし楽しい時間ほど早く過ぎるもので、気が付けば作業時間が終了していた。
「はぁ、もう終わりか……」
「でも、またくればいいか」
仕方なく『T-04-i51』を手放し、収容室から退出する。
気持ちは、いつもより軽かった。
「おいジョシュア、『T-04-i51』の作業に行ってきたぞ!」
「おっ、どうだった?」
「いやぁ、なかなかに愛らしい奴だったな」
「そうだよな!」
『T-04-i51』の作業から戻ってきたリッチが嬉しそうに報告しに来てくれた。
「おっ、リッチさん! ジョシュアさん! 俺も行ってきたぜ! すっげぇ可愛かったぜ!」
「だよな、俺も何回も行ってしまったよ」
「やぁ、俺だ! ボブだ! 今から『T-04-i51』の作業に行ってくるぜ!」
そのことをうれしく思っていると、他の職員たちからも絶賛の声が上がる。
やっぱり『T-04-i51』は最高だな!
……しかし、シロはそんな俺たちのやり取りを見て、何故か口をポカーンと開けていた。
「……みんな、いったいどうしたの?」
「どうしたって、『T-04-i51』の話だよ! あんな可愛いワンちゃんなかなかいないぜ!?」
「もしかしてまだ『T-04-i51』の作業に行ってないのか?」
「……いや、作業には行ったけど、あれってただの……」
「ジョシュア先輩!」
シロが何かを言おうとしたその時に、お人形さんがやってきた。
いったいどうしたのだろうか?
「大丈夫ですか!? なんかみんなおかしなことになってるって……」
随分と耳障りな音だ。
たとえるなら、シンバルを鳴らし続けるサルのオモチャみたいだ。
……そういえば、似た様な音がさっきから頭の中で鳴り響いているような気がする。
『『O-02-i64』*2が脱走しました。近くの職員はすぐに鎮圧に向かってください』
「えっ!? 皆さん、一緒に鎮圧に行きましょう!!」
「……あれ? 皆さんどうしたんですか?」
「……ジョシュア、みんな、『O-02-i64』の鎮圧に行かないの?」
その言葉を聞いて、思わず首をかしげてしまう。
いったい何を言っているのだろうか?
「別にいいじゃないか、おもちゃが歩いているだけだ」
「そうだ、ここは安全で、危険なんて一つもない」
「おぉ、大きなブリキのおもちゃが歩いているぞ」
気が付けば、目の前に大きなオモチャが現れた。
ブリキのロボットを無理やりいくつも繋げたかのようなオモチャだ。
いつの間にこんなところに遊びに来たのだろうか?
「皆さん!! 一緒に『O-02-i64』を鎮圧しましょう!」
「……ジョシュア、みんな! お願い戦って!!」
「……別にいいじゃないか、減るもんじゃないし」
「……えっ?」
「そんな、どうして……」
「どうして? 貴方はそんな人ではないでしょう!?」
T-04-i51『ただのいぬ』