【完結】誰も知らないアブノーマリティー   作:名無しの権兵衛

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二度目の出会いに衝撃が走る

きっと これが運命である


Days-15-2 苺の白昼『衝動は再会と共に』

「ジョシュア先輩、この前作業したアブノーマリティーなんですが……」

 

 今日の作業も半ばまで終わり、メッケンナが今日発見したアブノーマリティーの情報について聞いている。彼はとても仕事熱心なので、話を聞いている俺も嬉しい。

 

「なんだよメッケンナ、まだそんな事をしているのか?」

 

 そこを通りかかったジェイコブが、あきれたような声を出した。ジェイコブはメッケンナと同期だというのに、いい加減なところが多すぎる。

 

「ジェイコブ、あなたもいい加減真面目に……」

 

「そういうの良いから、真面目君。それよりもジョシュア先輩、誰かかわいい子がいたら紹介してくださいよ」

 

「おう、パンドラで良いか?」

 

「……それ、本気で言ってます?」

 

「なんならサラでも良いぞ?」

 

「え、遠慮しておきます」

 

 俺の話を聞いて、ジェイコブは引きつった笑みを浮かべる。なんだよ、パンドラは顔だけは良いだろ?

 

 なんというか、ジェイコブは軽いやつだ。面倒事が嫌いで、女に目が無い。そのおかげで女性陣からはあまり評判が高くないという。しかし、そんな彼でもサラとパンドラはNGらしい。まったく、失礼なやつだよ。

 

「ジェイコブ、お前も……」

 

『安全部門にて、試練が発生しました。エージェントの皆様は、至急鎮圧に向かってください』

 

「はぁ、本日二回目の試練だ。お前ら、気合いを入れていけ」

 

「「はい!」」

 

 新人二人と一緒に、試練の鎮圧に向かう。今回はいったいどんなやつが出てくるのだろうか、新人二人を連れて行くことに不安を感じるが、こいつらも戦わなければ成長できない。せめて危険で無い相手だと良いのだが……

 

 

 

「いくぞ、油断するなよ!」

 

 新人二人に声をかけて扉を蹴り飛ばす。安全部門のメインルームに到着すると、そこには異様な光景が広がっていた。

 

「まずいな……」

 

「うぷっ」

 

 そこでは背の高い、ひまわりのような植物がたっていた。いや、それはひまわりなんかでは無い。茎は細く、表面は筋繊維のようなもので覆われており、所々内部の骨がむき出しになっている。葉の部分は何かの動物の皮がめくれているようになっており、花はおぞましい臓物が混ざり合った何かが中央に存在し、その周囲には歯のような、骨のような何かが並んでいる。それは、ただ踊るようにユラユラと揺れている。

 

 さらに、それの周辺には何人ものオフィサーが避難もせずに立ちすくんでいる。よく見ると、彼らの目はよどんでおり、まともな状態には見えない。

 

「おい、あんたたち……」

 

「まて、様子がおかしい」

 

 明らかに正常でない彼らを助けようと前に出たジェイコブを引き留める。立ちすくむ彼らは様子が変わり、がくがくと震えだした。白目を剥き、口から泡をぶくぶくと吹くと、唐突に頭がはじけて倒れ落ちた。

 

「うっ」

 

「おいおい、何かいるぞ」

 

 倒れ落ちた彼らの頭部のあった部分から、おぞましい花が顔を覗かせる。それは、かつて見た苺の黎明であった。

 

「まずい、早くその花たちを刈り取れ!」

 

「しかし、もしかしたら『T-09-i97』*1で……」

 

「そんなわけあるか、あれは万能でも善性の物でもない」

 

「メッケンナ、あきらめろ。俺はやるぞ」

 

「くっ……」

 

「刈り尽くしたら俺の方に合流しろ、あの本命を伐採するぞ」

 

 新人たちに指示を出して中央のひまわりに突撃する。幸福で突き、薙いで攻撃するが、やつは何も抵抗をしない。いや、出来ないのかもしれないし、する必要の無いのかもしれない。

 

「くっ、地味に堅い」

 

「ジョシュア先輩! こちらの掃討は終了しました!」

 

「わかった、それじゃあ……!? よけろ!!」

 

 黎明たちを打ち倒したメッケンナとジェイコブを、嫌な予感がしたので突き飛ばす。背後を見れば、白昼が胞子のようなものをこちらに飛ばしてきていた。

 

「ぐっ」

 

「ジョシュア先輩!?」

 

 彼らを助けた代わりに、その胞子は俺に直撃してしまった。そしてその瞬間、俺の脳内を何かが浸食しようとしてくる。体を動かし抵抗しようとするが、体が全く動かない。

 

「ジョシュア先輩! ジョシュア先輩!?」

 

「まずいってメッケンナ、このままだと俺たちもおんなじ様に……」

 

「でも、このままだとジョシュア先輩が……」

 

「なら、管理人に任せて俺たちはあれを潰さないと!」

 

「そ、そうですね。管理人! ジョシュア先輩を頼みます!」

 

 体を動かそうとしても動かし方を忘れた、どうにか考えようとしても頭が働かない。どうすれば良い、何をすれば良いと頭の中でぐるぐる回る。

 

「ぐっ、ふっ」

 

『エージェントジョシュア! しっかりしろ!』

 

 そこで、頭の中に声が響いた。この声は、管理、人?

 

『ジョシュア、君はこの施設の要だ。君をここで失うわけにはいかない! どうか、戻ってきてくれ!』

 

 管理人、そうだ管理人だ。ここはロボトミーコーポレーションであり、俺はそこの職員だ。そして今、新人二人が必死に戦っている。俺は、何をしているんだ?

 

『ジョシュア!』

 

「か、管理人、もう大丈夫だ」

 

 気がつけば、俺の中から浸食しようとしてきていた何かは、俺の中から出て行っていた。それを自覚すると、俺の体は良く動くようになり、頭もしっかり働くようになった。

 

「助かったぞ新人たち! 後は任せろ!」

 

「じょ、ジョシュア先輩~」

 

「さすがっすよ先輩!」

 

 新人二人の奮闘を無駄にしないように、俺も一気呵成にたたみかける。ショコラによる援護を受けつつ、幸福で切りつける。彼らの奮闘のおかげか、白昼の茎の部分は、大分ボロボロになっていた。

 

「もうすぐ終わりだ、頑張るぞ!」

 

「はい!」

 

「了解!」

 

 次の胞子が飛んでくる前に白昼をたたき折らなければいけない。俺が何度もたたきつけ、新人二人が銃を撃ち続ける。そして、ようやく肉色の茎が軋みを上げる。

 

「ギュオオオォォォォラ」

 

「はぁ、ようやく終わったか……」

 

「な、なんとかなりましたね」

 

「いや、まだ何かあるかもしれない。警戒しておけ」

 

「「はい!」」

 

 苺の白昼が倒れる際、その茎は人が叫び声を上げるような音が出た。そして、花が地面にたたきつけられると、不快な音と共に崩れ落ちた。

 

 その後俺たちは、共に何か異常が無いかを確認し、退散した。俺はしばらく休憩をして様子を見たが、特に異変も無いので再び職務に復帰させられる事となった。

 

*1
『極楽への湯』




チャンスをものに出来無い者に

未来は無い
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