「聞いてくださいよジョシュア先輩~」
「ほいほい、聞いてやるよ」
昨日のマイケルの話に疲弊していた俺は、カッサンドラの話にも生返事になってしまった。そもそもこういうときのカッサンドラの話は、大体占いの結果が悪かったって話だからな。
「むぅ~、ジョシュア先輩ちゃんと私の話聞いてますか?」
「聞いてる聞いてる、だからそんなかわいい顔するなよ」
「かわいいって何ですか、怒ってるんですよ!」
そう言いながらプリプリほほを膨らませるカッサンドラは、言っては悪いが小動物みたいでかわいかった。
「ほれほれ、そろそろ仕事だ戻れ」
「ひどいですよジョシュアせんぱい~」
ぶつくさ言うカッサンドラを引きずって職場に連れて行く。とりあえずこいつの機嫌をとっておくか。
「とりあえず『T-09-i98』*1にでも行ってくれば良いだろ?」
「そういえば私の機嫌が良くなると思ったんですか?」
「それじゃあ行かないのか?」
「……それは行きますけど」
どれだけ言っても日課の『T-09-i98』への作業はする。結局彼女は、占いには弱いらしい。
なんだかんだで機嫌を直したカッサンドラを収容室まで連れて行き、俺の今日の作業する収容室まで行くことにした。
今日やってきたのは『O-02-i25』、今日はいったいどんなやつが来るのだろうか? 出来れば大人しいやつであって欲しいな……
「さて、今日も行くとしますか」
日課を終わらせて収容室の扉に手をかける。扉を開いて中に入ると、また懐かしい磯の香りが漂ってきた。
「あぁ、招かれざる客が来たみたいだね」
「おいおい、会っていきなり随分な挨拶だな」
収容室の中にいたのは、これまた巨大なヤドカリだった。巨大なヤドカリは俺の存在に気がつくと、すぐに殻にこもって目だけを出してこちらの様子をうかがっている。
「そうかな、君に対してはこれくらいで良いと思うけど」
「俺、何かしたか?」
『O-02-i25』の突き放すような言動に、疑問が生じる。いったいこいつは俺の何が気にくわないのだろうか、それとも人間全体が嫌いなのだろうか?
「いや、君の臭いが嫌いなのさ。僕たちの敵の臭いがする」
「臭いって何だよ、それに敵って……」
「君たちが気にする必要は無いよ」
「はぁ、そうか」
とりあえず面倒なので、今日の作業のための道具を用意する。
「……それは、食料ですか?」
「そうだよ、いるだろ?」
「……まぁ、無駄にするものでもないですし」
何というか、渋々受け取ってます感を出しているが、結局ほしがっているのが丸わかりだ。『O-02-i25』はこれまた器用に鋏で食料をつかむと、それを殻の中の口まで運んで引きこもりながら食べていた。
「……まぁ、もし困ったことがあれば、貴方に力を貸してあげても良いですよ」
「そうか、それは良かった」
……何というか、ついこの前も同じ事を言われたような気がする。もしかしてこいつも『O-02-i24』の仲間だろうか?
「ちなみに、あんたは何が出来るんだ?」
「あぁ、あんたを悪意から守ってやるよ。もちろん対価はもらうけどね」
「対価って?」
「……まぁ、おなかいっぱい食べられたらそれで十分だよ」
これまた同じような事を聞いた覚えがある。やっぱりこいつら同類だろ!? あいつの言っていた兄貴ってこいつか?
「もし私に依頼をしていただけたら……」
「その時は、必ず貴方をお守りしましょう」
殻から飛び出してきた『O-02-i25』は、格式張った挨拶をしてお辞儀をした。
そのあと俺は、何も言わずにそのまま収容室から出て行った。結局やつがなぜ俺を嫌っていたのかわからなかったが、このまま作業を行っていけば、いずれはわかるかもしれない。何事も根気が必要だろう。
「そうだ、せっかくだし『T-09-i98』でも使ってみるか」
なんとなく思いついて、『T-09-i98』の収容室に向かう。今日出てきた飴玉は、紫色だった。
O-02-i25 『おいしくなさそうなヤドカリ』