我々は共に進む 大いなる道の先へ
今日はシロと一緒に昼食をとっている。最近あまり一緒に食事を出来ていなかったので少し嬉しい。シロも心なしか嬉しそうにしている。
「それでこの前リッチがさぁ……」
「…………フフッ」
「えっ、今笑ったか!?」
いつもは俺が適当に会話してシロは無表情に話を聞くだけだったから、かすかにとはいえ彼女が微笑んだことがかなり衝撃的だった。今まで笑顔なんて見たことも無かったから、その表情が新鮮で、とても綺麗に見えた。
「…………元気出て良かった」
「えっ、俺そんなに元気なさそうだったか?」
俺の問いかけに、シロはこくりと頷いた。最近少しずつコミュニケーションがとれるようになってきたが、ここまで出来るようになるとは思わなかった。シロは食事の手を止めて、俺の目をじっと見つめてくる。
「…………好き」
「えっ?」
「…………貴方のお話」
「……あぁ! なるほどね!」
びっくりした、てっきり俺のことかと思ったよ。もしかしたらシロも大分人間らしくなってきたのかと思ったが、少し違ったらしい。もしかしたらいつも反応が無いから、その話が楽しいのかわからなくて少し迷っていたことがわかっていたのかもしれない。
「それじゃあなんか話をしようか?」
「…………うん」
「そうだな、それじゃあこの前パンドラが『O-02-i23』をエビフライにしようとして……」
『教育部門で試練が発生しました、エージェントの皆様は至急鎮圧に向かってください』
次の話をしようとしたその時に、今日二回目の試練が発生してしまった。なんとタイミングが悪い、しかし仕方が無いのでE.G.O.を持ってすぐに鎮圧に向かう。シロはすでに準備万端だ。
「この話は後だな、それじゃあ行くぞ」
俺が走り出すと、シロも頷いて後を付いてくる。今回は収容室前の廊下に出現したらしい、新しい試練で無ければ楽なのだが……
「おっと、早速お出ましか」
試練の出現した廊下に着くと、早速銃弾が飛んできたので幸福ではじく。幸福を構えて視線の先を確認すると、目の前には四体の小人が列を作って行進していた。
先頭にいるのは、彼らにしては大きな盾を持った小人だ。よく見ると他の連中より一回り大きい気がする。その次にいるのは剣を持った小人だ。よく見るとその姿は、以前鎮圧した黄金の黎明に似ている様な気がする。そしてその後ろにいるのは槍を持った小人だ。前二体の後ろで元気に槍を振っている。そして最後にいるのが俺に攻撃をしてきた銃を持った小人だ。どうやら俺に攻撃が効かなかった事が予想外だったのか、焦って弾を詰めようとしてうまくいっていない。それ火縄銃だったのか。
「シロ、俺を援護しろ」
「…………うん」
俺が走り出すと同時に、シロが信仰を撃って前の盾持ちを牽制する。盾持ちが構えて矢を弾くと同時に、その盾を踏み台にして高く飛び上がる。驚いた槍持ちが我を取り戻して俺に攻撃をしようとしてくるが、これも飛んでくる矢が穂先を弾いて牽制する。さすがはシロだ。
「ほらよっ!」
ようやく弾を込め終わった銃持ちの銃を、巻き込むように槍を振って奪い取る。そしてそのまま槍で数度突いて切りつけると、ついに銃持ちの小人は力尽きてしまった。
仲間が一体やられたことに腹を立てたのか、残りの三体が一斉にこっちに向かって飛びかかってきた。俺は幸福を構えて応戦すると、奴らの背後からシロが信仰で攻撃を始めた。前方から俺の幸福による突き攻撃と、背後からのシロの信仰による援護射撃に翻弄される小人たち。やがて盾持ちが気がついたのか、自分の盾で仲間を守ることにしたらしい。
「ふっ、はっ」
俺は目の前の槍持ちと交戦していた。槍持ちは見た目の割になかなか槍の使い方がうまかった。俺も同じ槍使いとして負けてはいられない。時々前に出てこようとする剣持ちを牽制しながら、槍持ちの相手をする。突きをそらして防ぎ、突いてはそらされ当たらない。こちらの方が大きい分有利だが、相手は小さいためなかなか攻撃が当たらない。
「ちっ、ちょこまかと面倒だな!」
ついに剣持ちの接近を許してしまい、いったんバックステップをして距離をとる。盾持ちはシロが引きつけてくれているため大丈夫だが、さすがに二体同時は面倒だな。
剣と槍の地味にうまいコンビネーションに一気に劣勢に持って行かれる。槍の相手をしている内に身をかがめて剣持ちが接近してきたため、薙いで足止めすると槍持ちの突きが飛んできたので身をひねってよける。
戦闘が膠着状態になってきたその時、一本の矢が飛んできて槍持ちの背中に突き刺さった。
「よし、よくやったシロ!」
シロが曲射で槍持ちを攻撃してくれたおかげで、相手に隙が出来た。仲間の負傷に動揺した剣持ちを蹴って槍持ちを何度も突く。そうすることでようやく槍持ちは力尽きた。そのままの勢いで盾持ちの背後まで接近し、後ろから幸福で突き刺す。盾持ちはしばらく体を痙攣させながら抵抗を試みたが、むなしくもそのまま力尽きてしまった。
「残りはお前だけか、すまんな」
最後に残った剣持ちは、俺のことをすごい形相でにらんでいた。意外と仲間思いだったのかもしれないが、俺には関係の無いことだ。試練が来れば鎮圧する、それが俺たちの日常だ。
「じゃあな、恨みっこはなしだぜ」
そう言うと同時にいくつもの矢が飛んできて剣持ちに突き刺さる。そして幸福で剣持ちの胸に突き刺す。俺たちの攻撃に最後まで顔一つ動かさず、剣持ちは俺をにらんだまま力尽きていった。
「……なんというか、後味が悪いな」
これから試練にこいつが出てくる度にこんなことになるのだろうか? そう考えると、すこし憂鬱な気持ちになる。
「…………ジョシュア」
「うん、どうした?」
少し立ち止まっていたためか、シロが俺に話しかけてきた。こいつがこんなに話しかけてくるのは珍しい、少し驚いてしまう。
「…………さっきの続き、お願い」
「……あぁ、そうだな!」
そういえばさっき話の途中だったな、シロはその話の続きをご所望らしい。
「そうだな、それじゃあさっきの続きだが……」
俺はシロと歩きながら先ほどの話の続きを始める。俺の話にシロがかすかに微笑む。そのうちに、さっきまでの暗い感情はどこかに消えてしまっていた。
我々は虐げられ 散り散りに逃げた