誰も知らないアブノーマリティー【二周目開始】   作:名無しの権兵衛

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Days-21-2 O-04-i16『全てが剥がされ、白い華だけが残った』

「ジョシュア、『F-04-i27』*1はどうだった?」

 

「何というか、一度作業するだけではわからないって言うのが正直な感想だな」

 

 『F-04-i27』の収容室からでると、久しぶりにリッチが待ち構えていた。今日は複数のアブノーマリティーが収容される事を聞いて、俺を心配してきてくれたのかもしれない。

 

「この後はもう一つの方へ行くのか?」

 

「あぁ、それが俺の仕事だからなぁ」

 

「辛ければ言えよ? 管理人に交渉してみるからな」

 

「そうなれば次に行くのはお前だろ? それなら俺の方がたぶん死ぬ確率は少ないし、大丈夫だ」

 

「……あまり、無理はするなよ」

 

 それだけ言うと、リッチは次の作業へ向かっていった。俺も少し休んでしまいたいが、そうはいかない。

 

「はぁ、次はもう一つの新しく収容されたアブノーマリティーか……」

 

 『F-04-i27』の作業が終わり、少し精神的に疲れているが続いて次のアブノーマリティーの収容室へ向かう。

 

 今日収容されたもう一つのアブノーマリティーは、『O-04-i16』だ。最近変なのが多いから、そろそろまともなやつが来て欲しい。 ……いや、まともなアブノーマリティーってやばいやつって事だから、逆に今の方が良いのかもしれないな。

 

 『O-04-i16』の収容室へと向かうために廊下を歩いて行く。いつもの新しいアブノーマリティー一体でも精神的に負担が大きいというのに、今日はそれがもう一回あるのだ。早く終わりたいというのが本音だ。

 

 そんな事を考えていると、ついに『O-04-i16』の収容室の前についていた。俺はいつものように収容室の扉に手をかけて、お祈りをする。そして気持ちを落ち着かせてから、収容室の扉を開いた……

 

 

 

 収容室からは、冷たい空気が漏れ出していた。腐臭とおぞましい気配を感じつつ、収容室の中に入っていく。

 

 収容室の中にいるのは、無数の骨の山であった。その骨の山の頂点には、ひときわ長い、おそらく背骨とその先端に肋骨のような骨が空に向かって伸びていた。それは華のようにも、塔のようにも見えた。

 

 そして、何よりもこの存在からは、おぞましいまでの死の気配を感じる。今まで感じたことの無い感覚だというのに、明確に死の気配であるとわかった。それが本能なのか、直感なのかはわからない。しかし、ここにずっといて良いものでは無いと、危険信号を感じる。

 

「……やるしか無いか」

 

 手に持つE.G.O.幸福を『O-04-i16』にたたきつける。『O-04-i16』は微動だにしない、そもそも動くかもわからない。

 

 心を無にしてとにかくたたきつける。これで正しいのかはわからない、しかし一度始めたからには続けなければならない。

 

 とにかく攻撃の手を続ける、俺は何かにとりつかれたかのように一心不乱に幸福を振るい続ける。それが義務感からなのか、死への恐怖からなのかはわからない。だがそうすることが最善だと感じていた。

 

 それからどれだけの時間がたったのかわからない。気がつけば俺は肩で息をして、全身が汗でびっしょりになっていた。

 

「はぁ、はぁ……」

 

 ふらふらと収容室から退出する。今まで『O-04-i16』の収容室の中で慣れていたのか、外の空気は新鮮であった。

 

「あれ、ジョシュア先輩! ……って、大丈夫ですか? 大分顔色が悪いですか……」

 

 パンドラが俺に向かって何かを言っているが、何を言っているのかよくわからない。だが、見慣れた相手を見つけたせいか、どこか安心してしまったらしい。例え相手がパンドラであっても。

 

「あれっ、ジョシュア先輩。どうしたんですか?」

 

 死の気配の無い空間と、妙に優しい後輩、一日に二度も体験する新たなアブノーマリティーへの作業、それらが俺にとって大分精神への負担となっていたらしい。

 

「お疲れ様、少し休んでても良いですよ」

 

 気がつけばパンドラに向かって倒れていた。なんとかパンドラが俺を抱えて支えてくれているが、体に力が入らない。パンドラは俺を優しく抱き留め、背中をなでてくれた。

 

 そして、ついに俺は意識を手放してしまう。気怠さと心地よさに身を委ねて、目の前の相手に身を任せるのであった……

 

 

 

 

 

O-04-i16 『白い塔』

 

*1
『零時迷子』


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