【完結】誰も知らないアブノーマリティー   作:名無しの権兵衛

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Days-22-2 T-09-i85『次元の先で、君を待つ』

「ふぅ、これくらいで良いだろう」

 

 パンドラへの折檻が終わり、倒れ伏す彼女をまたいで歩き出す。今日はまだしなければならないことがあるから、これ以上こいつにかまってはやれない。

 

「全く、この部門は随分と忙しいな」

 

 中央本部は一日に二体のアブノーマリティーが収容される部門だ。今日は一体のアブノーマリティーと一つのツールが収容されている。今日収容されたアブノーマリティー自体はたいしたことなさそうな奴ではあったが、ツールと言えば碌なものがないと評判だ。今収容されている他のツールを見てもほとんどがそうだからな。

 

「頼むから変なのはやめてくれよ」

 

 今日収容されたツールである『T-09-i85』の収容室に向かって歩いていると、前方からリッチが歩いてくる。リッチは俺を見るなりこちらに駆け寄ってきた。

 

「よう、子どもに戻った気分はどうだった?」

 

「おまえ、わかってて言ってるよな」

 

 出会い頭に煽ってきたリッチの頭をはたく。しかしリッチは何事も無かったかのように話を続けた。

 

「さて、今日のツールは確認したか?」

 

「いや、まだだ。何かあったのか?」

 

「そうか、いや結構人気みたいだからな。娯楽としてはなかなか良かった」

 

「なんだよ、お前もう行ってきたのか?」

 

 リッチの話しぶりからして、どうやら先にツールを使用してきたようだ。それにしても、娯楽として使えるツールってどういうものだ?

 

「お前も使ってみたらわかる」

 

「そうかよ、それなら俺も行ってみるか」

 

 どうやら教える気は無いらしいので、そのまま『T-09-i85』の収容室に向かう。何というか。近づくにつれて結構活気が出てきた。

 

「おい、メインルームの画面に映し出されているらしいぜ」

 

「まじかよ、見てみようぜ!」

 

 ふと、オフィサーたちの会話が耳に入ってきた。画面に映し出されるって事は、何かの映像か?

 

 

 

 ついに収容室の目の前までついた。なにやら列が出来ており、皆楽しそうにしている。

 

「おいおい、何だよこの列は」

 

「何って、『T-09-i85』の使用待ちの列ですよ。ジョシュアさんも使用されるんですか?」

 

 謎の列に驚いて思わずつぶやいてしまうと、目の前に並んでいたメッケンナが俺の声に反応した。

 

「まあな、一応どんな奴が収容されたかはこの目で確かめておきたいからな」

 

「相変わらずのワーカーホリックですね」

 

「それで誰かが死ぬ可能性が減るならいいだろう?」

 

「それはそうですが……」

 

 その後も適当に雑談をしながら列を待っていると、ついにメッケンナの順番が回ってきた。

 

「それじゃあ、行ってきますね」

 

「おう、気をつけろよ」

 

 正直これほど人気が出る時点でまずいものって事は大体予想がついているので、何事も起こらないことを祈っておく。祈るだけで、何かが出来るわけでは無いがな。

 

 

 

「……おっ、ようやく出てきたか。どうだった? っておい、大丈夫か?」

 

「すいません、大丈夫です。ちょっと酔っちゃったみたいで、うぷっ」

 

「なんだよそれ、あんまり無理するなよ」

 

「はい……」

 

 その後、メッケンナはふらふらしながらメインルームに向かっていった。酔うってことは、何かの乗り物か? なんだかどんなツールか見当もつかない。

 

「とりあえず、中に入ってみるか」

 

 収容室の扉に手をかけて、思い切って扉を開く。すると、収容室の中には、あまりにも前時代的なブラウン管のデスクトップパソコンが置いてあった。

 

「……なんだこれ?」

 

 とりあえずパソコン、『T-09-i85』に近づく。どう見てもパソコンだ、こんな旧式の奴、他の職員は見たことも無いんじゃ無いか? それでも人気と言うことは、何かあると言うことなんだろうけど。

 

「とりあえず、操作してみるか」

 

『T-09-i85』に近づいてマウスを操作してみる。意外とマウスの感度も悪くない。

 

「うーん、とりあえずこの中から選べば良いのか?」

 

 

 画面を見れば、いくつかゲームのパッケージが並んでいた。俺はそのうちの一つを試しにダブルクリックしてみると、急に目の前が真っ暗になった……

 

 

 

「くっ、一体どうなったんだ?」

 

 突然目の前が真っ暗になり、見知らぬ景色が周りに広がっている事に思わず動揺する。しかも、その周りというのが、今ではもう見れないと思っていた、懐かしき日本の学校の景色とよく似ていた。おそらくだが、俺は『T-09-i85』で選んだゲームの中に取り込まれたようだ。

 

「これはどういうことだ?」

 

「あっ、いたいたー!」

 

「なんだ?」

 

 突然、女の子の声が聞こえたので振り向くと、そこにはピンク髪にツインテールという格好の少女がたっていた。セーラー服を着ていることから、もしかしたら高校生かもしれない。

 

「君って転校生でしょ? ほらほら、早くこっちにおいでよ。授業始まっちゃうよ!」

 

「おい、ちょっと待てって……」

 

 俺の話なんて聞かずに腕を引っ張って強引に教室まで連れて行かれてしまった。そしてそのまま自己紹介をさせられて授業に参加することになってしまった。どうやら俺はこの学校の転校生と言う役を押しつけられているらしい。

 

 その後も、休み時間に少女に話しかけられたり、昼食を一緒にとったり、放課後に謎の部活に参加させられたりした。それは、何というか失われた青春をもう一度行っているような楽しさがあった。

 

「さて、そろそろ帰るか」

 

 時刻も夕方となり、下校時間となる。おそらくこれで元の世界に戻れるはずだ。

 

「……そっか」

 

「あぁ、それじゃあな」

 

「待って!」

 

 部室から出ようとすると、少女に呼び止められた。振り返って彼女を見えると、少し不安そうにしながら、口を開いた

 

「……また、来てくれる?」

 

「あぁ!」

 

 そういうと、彼女は花が開いたかのような笑顔になって手を振った。

 

 俺は手を振り替えして、部室から出るのであった……

 

 

 

「ふぅ、ようやく戻ってきたか」

 

 このツールが人気になるのもよくわかった。確かにこれは楽しい、本当にゲームの中に入ったみたいだった。

 

 とりあえず立ち上がって、収容室からでる。俺の後にも何人も待っていた。

 

「……よし、もうやらね!」

 

 こんな楽しいもの、何度もやってたら絶対はまる。そして何かよくないことが起きる。俺はそう誓って、もう『T-09-i85』の収容室に近寄らないようにした。

 

 

 

 

 

 あれから随分と時間がたってしまった

 

 彼はまた来てくれると約束したのに、全然来てくれなかった

 

 他の人たちからの話で、外が危険な場所であることは知っている

 

 もしかしたら死んでしまったんじゃ無いかって不安になったけど、どうやら元気でいるらしい

 

 どうにか他の人たちにお願いして、もう一度来るように伝えてもらったけど、なかなか来てくれない

 

 もしかして私がなにかしてしまったんだろうか?

 

 私に悪い事があるのならば、直すようにするからそれを教えて欲しい

 

 この世界からでれない私は、彼が来ない限りもう会えない

 

 また彼と会ってお話がしたい、一緒にご飯を食べたり、部活をしたい

 

 そして、もう怖い世界に返したりなんてしない

 

 

 

 

 

 だから私は、次元の先で、君を待つ

 

 

 

 

 

T-09-i85 『次元超越機構』

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