【完結】誰も知らないアブノーマリティー   作:名無しの権兵衛

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 今回、原作のネタバレがあります。ご注意ください。

 そろそろ物語を進展させていきます。


職員たちの平穏なひととき『X』

「ちょっとここ、いいかな?」

 

「あぁ、別に良いぞ」

 

 今日はいつもよりも早く起きたので、少し早めに食堂に行って席に着いていると見知らぬオフィサーに声をかけられた。エージェントなら顔は一通り覚えているが、オフィサーまでは全員覚えてはいない。腕章を見れば、どうやらコントロール部門のオフィサーのようだ。

 

「すまないね、少し君に聞きたい事があって」

 

「別に良いけど、あんた一体誰だ?」

 

 男は俺の正面の席に座ると、突然声をかけてきた。俺と話がしたいでは無く、聞きたいとはどういうことだろうか。正直、全く知らない相手にそんな事を聞かれても困る。それに、俺の話を聞いてどうするつもりなのかも聞いておきたい。

 

「あー、そうだな…… 私はX022だ、よろしく頼む」

 

 オフィサーは基本的にギリシャ文字と数字で構成された名前をつけられている。彼らにはすでに人権など無いのだ。

 

「それで、なんで俺の話なんて聞きたいんだ?」

 

「それはな、君の活躍は聞いていてね、どうしても話を聞いてみたくてね」

 

 なるほど、確かに戦闘能力を持たないオフィサーたちにとって、戦闘の要であるエージェントの俺たちの話は気になるのかもしれない。彼らにとっても死活問題なのだから。

 

「別に良いけど、そんなに面白い話は出来ないぜ」

 

「そんなに気にしなくても良いよ、話して欲しいと頼んだのはこちらの方なんだから」

 

「そうか、それなら良いんだけど。それで、どんな話をしたらいいんだ?」

 

「そうだね……」

 

 

 

 それから、俺は彼に今までの業務で大変だったこと、面白かったことを伝えた。

 

「あのときは大変だった。そいつと対峙したときは本気で死を覚悟したんだ」

 

「ふむふむ」

 

 凶悪なアブノーマリティーの鎮圧、癒やされるアブノーマリティーとの交流、恐ろしい試練に挑み、仲間と祝杯を挙げる。彼は俺の話に的確に相づちを打ち、時に驚き、時に笑って聞いていた。

 

「あいつはいつだって意味のわからないことしかしないんだ! どうやったらアブノーマリティーで遊ぶって発想が出てくるんだ!」

 

「くっはっはっ!!」

 

 後半からはパンドラに対する愚痴ばかりになってしまったが、彼は腹を抱えて笑っていた。俺も第三者なら笑っていたかもしれないが、被害を受ける当人である身としては笑うことが出来ないな。

 

「そうだな、最近食べたので一番おいしかったのはエビフライでな……」

 

「それは是非とも一度食してみたいものだ」

 

 その後も彼は俺の話をせがんだので、他愛の無い雑談をすることになった。最近誰が成長したか、逆に誰が心配か、この娯楽の少ない施設でどうやってストレスを解消しているか、パンドラへの折檻の仕方やこの施設で食べた一番美味しいもの、食堂のおすすめのメニューなど、これも彼は興味深そうに話を聞いていた。

 

「それでな……」

 

「それはすごいな!」

 

 気がつけば、俺も彼との会話を楽しんでいた。思わず時間を忘れかけていたところで、他の職員たちがまばらに食堂に入ってきた。

 

「さて、そろそろ私も行かなければな」

 

「おっ、もう行くのか?」

 

「あぁ、そろそろばれたら大変だからね」

 

「えぇ、その通りですね管理人」

 

「げっ」

 

 そう言って立ち上がろうとする彼に、空色の髪の美女が声をかけた。彼女は無機質な目線で俺を一瞥した後、すぐに彼へと視線を戻した。まるで俺の事なんて興味なんて無いとでも言わんとするように。

 

 俺は奴のことを知っている。しかし、そんな事を臆面でも出そうものなら、何をされるかわからない。彼女にとって、俺を殺すことなんて造作も無い、それどころかどんな実験をされるかわかったもんじゃ無い。あと、彼が管理人と言うことはなんとなく察しがついていたので別に驚きは無かった。

 

「不用意に職員たちに接触してはならないとお伝えしたはずですが?」

 

「いやぁ、どうしても話を聞いてみたくて……」

 

「それで、用は済んだのですか?」

 

「まぁ、一応はね」

 

「それならばもうここには用は無いですね。もう業務開始まで時間はありませんよ」

 

 そう言うと、彼女、アンジェラは管理人Xをつれて、食堂から出て行った。その場に取り残された俺は、仕方なく今日の職場に向かうことにした。

 

 

 

「あっ、ジョシュアさん!」

 

「あっ、や~久しぶりだね」

 

 中央本部までの道を歩いていると、出来れば会いたくない相手に出会ってしまった。箱から手足の生えた歪な存在、その中でも俺たち職員にとってやっかいな相手であるホドである。一度彼女のカウンセリングを自発的に受けてから、何かと話しかけてきて戦々恐々としていたのだ。なるべく会わないように警戒していたというのに、ついに出会ってしまった。

 

「最近中央本部に異動になってしまって、なかなか会えなくなりましたね」

 

「そ、そうだな」

 

「私のカウンセリングに自分から来てくれたのは、貴方とティファニーだけなんですよ? 他の職員のみんなもちゃんと受けてくれたら、私がすることの大切さをわかってくれるはずなのに」

 

「他の皆も忙しいんだろ? 強制は良くないと思うけど……」

 

「は?」

 

 不用意な発言をしてしまったせいか、ホドの雰囲気が一変した。先ほどまで少しおどおどした小動物のような印象だったのに、人を見下すような、冷たい視線に変化した。

 

「まさか、ジョシュアさんまで私のことを否定するんですか?」

 

「いや、ちょっと落ち着け」

 

「私は皆のためにやっているのに、なんで皆わかってくれないの!」

 

「い、いやー、それにしてもホドのカウンセリングは素晴らしかったな~。それを受けられる職員は幸運だな~」

 

 一気にヒステリックになったホドを落ち着かせるべく、心にもない事を発言する。それでもいけるかと不安になったが、彼女は一気に表情を変えて元の様子に戻った。

 

「ホントですか!? 良かったらジョシュアさんもカウンセリングを受けに来てください! 部門が違ってもいつでも歓迎ですよ!」

 

「ははっ、考えておくよ……」

 

 そうお茶を濁して、早歩きで教育部門を走り抜けた。出来ればもう一度彼女に出会うことが無いようにお願いしたい。

 

 こうして俺の平穏なひとときは過ぎ去り、また地獄へと舞い戻るのであった……

 




感想にあったので、職員たちの現在のステータスを簡単に紹介したいと思います。
別に飛ばして読んでもかまいません。

基本的にステータスは

勇気 慎重 自制 正義

の順番で表記します。

ジョシュア レベルⅣ職員
Ⅲ Ⅳ Ⅳ Ⅳ

シロ レベルⅣ職員
Ⅱ Ⅴ Ⅳ Ⅲ

リッチ レベルⅣ職員
Ⅳ Ⅲ Ⅳ Ⅳ

パンドラ レベルⅢ職員
Ⅱ Ⅱ Ⅴ Ⅱ

ルビー レベルⅢ職員
Ⅲ Ⅲ Ⅲ Ⅱ

マオ レベルⅢ職員
Ⅲ Ⅱ Ⅱ Ⅳ

メッケンナ レベルⅢ職員
Ⅱ Ⅲ Ⅲ Ⅲ

サラ レベルⅡ職員
Ⅱ Ⅰ Ⅰ Ⅱ

ジェイコブ レベルⅢ職員
Ⅲ Ⅲ Ⅱ Ⅲ
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