【完結】誰も知らないアブノーマリティー   作:名無しの権兵衛

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大地を押し上げ天を仰ぎ見る

私は全てを受け入れる


中間報告 灰燼の夕暮『霊峰』

「ジョシュアさん、調子はどうですか?」

 

「おう、最近は結構良い感じだ!」

 

「ジョシュアー! ちょっときてくれー!」

 

「ちょっと待ってろ、今行く!」

 

 はじめの方は結構避けられていたが、最近はオフィサー達とも良好な関係を築くことができてきた。俺としても彼らに避けられっぱなしも嫌だったので、良い傾向だと思っている。

 

「この報告書のこの部分がよくわからないんだが……」

 

「あぁ、それなら……」

 

 報告書だけではわからないことがある。そういう情報のすりあわせをしなければ危険な目に遭うのは俺たちだけでは無い、何の戦闘能力も持たないオフィサーたちの方が危ないのだ。そのため一緒に報告書を作るようになり、成果も少しずつ出ていると思う。

 

「それにしても、今日はメインルームに試練が出なくて良かったな!」

 

「そうですねー、もう今日はこれ以上出ないですもんね」

 

 そんな事を考えていると、ふとオフィサーたちのそんな会話が聞こえてきた。確かにもう白昼の試練は鎮圧した。しかし、こんな風に気を抜いていて良いだろうか?

 

 すでに中央本部まで解放されている、つまりはもう夕暮まで出てくると言うことだ。まだ夕暮が出ていないから彼らは知らないが、まだ油断して良いわけでは無い。だからといって知らないはずの情報を教えて良いものだろうか? いや、人命がかかっているんだ。多少怪しまれても命には変えられない。

 

「おい、あんたたち……」

 

 談笑してるオフィサーたちに声をかけようとしたその時、俺は何が起こったのか理解できなかった。

 

 

 

 強い衝撃、浮き上がる体、そして同時に舞う血しぶき。全てがスローモーションに映り、ようやく現状を理解した。メインルームの床から生える、巨大な岩山。その先端には、何人ものオフィサーたちが突き刺さっている。中央の一番高い山の中心部分には、灰色に光る球体が埋め込まれており、点滅している。

 

 それは突然地面からやってきて、俺たちを奇襲した。

 

「ぐはっ、ぐっ……」

 

 とっさに受け身をとって着地するが、遅れて脇腹に痛みがやってくる。どうやら直撃は免れて、致命傷にはならずにすんだらしい。しかし、初撃と着地の衝撃で体がボロボロだ。痛みでうまく動かない体を無理矢理動かす。そして目の前に広がる無残な光景を目に焼き付ける。さっきまで一緒に楽しそうに話していたオフィサーたちが千切れ、ぶちまけられ、粉々になり、貫かれている。もはや誰が誰だかもわからないものもいる現状に、怒りがわいてくる。

 

 俺は痛む体を引きずりながら、遠くに転がる幸福のところまで歩いて行く。そしてなんとかたどり着くと、幸福をつかみ支えとして立ち上がる。この惨状を生み出したこの存在を、一刻も早く潰さなければならない。

 

『中央第一のメインルームにて試練が発生しました。エージェントの皆様は、至急鎮圧に向かってください』

 

 今更になって試練のアナウンスが起こる。だが、これが起こった後であればもはや無意味だろう。かつてゲームでは同じように奇襲を仕掛けてくる試練があった。あの白昼は『出落ち』なんて言われていたが、実際にされると堪ったもんじゃ無い。しかもこいつは、おそらく夕暮。早めに倒さなければどうなるかわかったもんじゃ無い。

 

「くそっ、やってやる」

 

 気合いで立ち上がり、幸福を目の前の岩山に向ける。そして痛む体にむち打って攻撃を始める。中央の球体に突き、薙ぎ、たたきつける。時折やってくる灰色の波動から身を守りながら、なるべく攻撃を与えていく。

 

「おい、ジョシュア大丈夫か!」

 

「ジョシュア先輩、大丈夫ですか!?」

 

 そうしてなんとか一人で攻撃を続けていると、ようやく援軍が来てくれた。俺は彼らが来てくれたことに感謝をしつつ、なんとか攻撃を続けていく。彼らもそんな俺に何も言わずに援護をしてくれた。

 

「ぐっ、結構堅い」

 

「私の種子で少しずつ削っていくわ、頑張って!」

 

 大勢で攻撃を続ける内に、徐々に岩山の表面が剥がれていく。どんどんとひび割れていく岩山に、メイスや拳装備の職員たちが衝撃をたたきつけていく。

 

 そして相手の攻撃をなんとか耐えながら攻撃していき、ついに岩山は崩れ去っていくのだった。

 

「よし、やったぞ!」

 

 リッチの勝ちどきが聞こえる。そこで俺はようやく緊張が解けて体から力が抜けていった。

 

「…………大丈夫?」

 

 そして、倒れ行く俺を、誰かが抱き留めてくれるのだった。その柔らかく心地よい感触に、とうとう俺は意識を手放すのだった。

 

「…………ちょっとだけ、おやすみ」




人々から信仰は失われた
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