【完結】誰も知らないアブノーマリティー   作:名無しの権兵衛

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私たち二人の間には いくつもの障壁が立ちはだかる

けれどこれを乗り越えることで 私たちの愛はより強くなるわ


中間報告 苺の夕暮『避けられぬ障壁』

「ジョシュア先輩、最近よく倒れますよね?」

 

「お前からの心労も大分あると思うぞ」

 

「やだなー、そんな私に甘えてきたくせにー」

 

「誰のせいだ誰の!」

 

「ぎゃあぁぁぁぁ! ごめんなさいー!」

 

 

 最近の疲労の諸悪の根源であるパンドラにアイアンクローを決めつつ、引きずって廊下を歩く。隣を歩くジェイコブはそんな光景を見ながら苦笑いしている。

 

「ジョシュア先輩、さすがにやり過ぎっすよ」

 

「だったらこいつの相手はお前がするか?」

 

「いや、それはマジで勘弁ですよ」

 

「痛い痛い! ひどすぎますって!」

 

 女の子好きのジェイコブでさえお断りされるこいつは、本当になんなんだろうな? まぁ、こいつで良いって奴がいるならカウンセリングを受けてもらう必要がありそうだがな。

 

「それにしても、ここの女の子って結構レベル高いっすよねー。顔採用とかしてんすかね?」

 

「こんな職場でか?」

 

「まぁ、そんなわけ無いっすよね」

 

「くだらないこと言ってないで、早く作業に戻れ」

 

「はーい」

 

「本当に痛いですって! 謝るんで許してくださいよ!」

 

 無駄話ばかりするジェイコブに釘を刺し、早く仕事に戻るように伝える。そろそろ俺も仕事に戻らないといけないな。

 

『中央本部にて、試練が発生しました。エージェントの皆様は至急鎮圧に向かってください』

 

「……行くぞ、準備は良いな?」

 

「もちろんですよ」

 

「うぅぅ、私も大丈夫です」

 

 今日三回目の試練の発生、それはつまり夕暮の試練がやってきたと言うことだ。俺たちはすぐにE.G.O.を構えて廊下を走り出す。すると、前方から誰かが走ってくるのが見えた。

 

「うわぁぁぁぁ!」

 

「うわっ、何があったんだよ……」

 

「ジェイコブ君、離れて!」

 

 よく見ると、前方から走ってきた職員の頭からは何かが生えている。そしてそこから綿毛のようなものが飛んできて、こちらに近づいてくる。パンドラが信仰で綿毛を打ち落とすと、その職員から距離をとった。

 

「なっ、なんすかアレ?」

 

「ちっ、こんなの思いつくのは一つだけだな」

 

「まっ、まさか前回の……」

 

「待ってください、何か来ますよ!」

 

 気がつけば、さっきまで走っていた職員が立ち止まり、首がもげかかっている。そしてそのまま首がぐるんともげて、その断面から肉の花が生える。……これは、苺の白昼か?

 

「まずいな、すぐに片付けるぞ!」

 

「「了解!」」

 

 パンドラとジェイコブが、信仰と貝殻で援護をしながら俺が幸福で切りつける。さすがに以前よりも武器は強くなり、俺たちも成長している。討伐するまで総時間はかからないだろう。

 

「綿毛が来ます!」

 

「了解だ!」

 

 いったん距離をとって幸福で綿毛を切り払う。そしてそのまま突っ込んで幸福でなぎ払い、ようやく苺の白昼を伐採することに成功する。

 

「よっしゃあ! やりましたね先輩!」

 

「いや、まだこれを起こした奴を潰してない。おそらくはこれが生えた元凶がメインルームにいるはずだ」

 

「……これ以上のっすか?」

 

「おそらくは」

 

 戦いがまだ続くと言うことに、少し気落ちしそうになっているジェイコブに何か声をかけようとすると、パンドラが割り込んできた。

 

「ほら、早くしないと被害がもっと広がりますよ! 早く行きますよ!」

 

「……それもそうですね」

 

 ジェイコブは気持ちを入れ替えて通路の奥をにらむ。その先にこれを起こした奴がいるはずだ。

 

「走るぞ!」

 

「はい!」

 

 廊下を走ってメインルームに向かう。そしてメインルームへとつながる扉を蹴り開けて中に入る。E.G.O.を構えて突入すると、やはり悪趣味な光景が広がっていた。

 

 

 

 そこにいるのは肉で出来た木であった。街路樹程の大きさのそれは、いくつもの内臓と人間のパーツを、これでもかと悪趣味に散りばめた、悪臭を漂わせるそれの中央には、ひときわ大きな目がぎょろりぎょろりとせわしなく動き回っていた。

 

 その周囲にはいくつもの苺の黎明と白昼が生えており、その犠牲者の数を物語っていた。

 

「うっ」

 

「気合いで踏ん張れ、早く討伐するぞ」

 

「周りは私に任せてください!」

 

 パンドラが周りの掃討に向かってくれたおかげで、夕暮の鎮圧に集中することが出来る。ジェイコブがこの場から貝殻で攻撃を続けている内に、俺は夕暮に接近して攻撃を加える。夕暮は苦悶の悲鳴を上げるが、さほど効いてるようには見えなかった。

 

「ジョシュア、加勢に来たぞ!」

 

「リッチ、シロ、助かる!」

 

 リッチとシロが来てくれたおかげで随分と戦闘が楽になる。周りは彼らに任せて夕暮を相手に幸福で切りつけ続ける。苺の試練自体には攻撃性能が無いことが幸いして、綿毛にだけ注意すればいいということは非常に助かる。

 

 そうして攻撃を続けていると、夕暮の様子が変わり、小刻みに震え始めた。何かが来る前兆と感じて距離をとり、周りの奴らに注意を施す。

 

「何か来るぞ、気をつけろ!」

 

 周囲のほとんどを殲滅させたリッチたちが俺の声に反応すると、夕暮がよりいっそう大きく震えだし、すごい数の綿毛を放出し始めた。

 

「くそっ、やっぱりか!」

 

「綿毛をE.G.O.で切り払え!」

 

 綿毛を幸福で対処しながら周囲を見渡す。どうやら皆うまく対処できているようだ。そうこうしているうちにも、周囲の試練たちはどんどん数を減らしていき、ついに殲滅することに成功した。

 

「一気にたたみかけるぞ!」

 

 槍で、刀で、ボウガンで、大砲で夕暮に対して一気に攻撃を仕掛ける。前衛が攻撃に集中し、後衛が夕暮の様子を見ながら銃撃する。そして様子に異常が見られたら、後衛が前衛に声をかけて離脱し、綿毛の対処をする。そうしていく内に、夕暮はどんどんボロボロになっていき、内臓と人のパーツで出来た悪趣味な装飾がどんどん剥がれ落ちていく、そしてついに幹の部分が折れて夕暮は崩れ落ちていった。

 

「……ようやく終わったか」

 

「まだどこかに白昼や黎明がいるかもしれない、手分けして探索に行こう」

 

『『O-04-i16』*1が脱走しました、エージェントの皆様は至急鎮圧に向かってください』

 

「……どうやらまだ残っていたようだな」

 

 新たなアブノーマリティーの脱走により、どこかに苺の黎明が残っていることが判明した。とりあえず部隊を分けて『O-04-i16』の鎮圧に向かわなければならない。

 

「パンドラとジェイコブは苺の黎明と、洗脳された職員を探してきてくれ! 俺とリッチとシロは『O-04-i16』の鎮圧に向かう」

 

「了解です!」

 

 そう元気よく返事をして、パンドラは疲れ切ったジェイコブを引きずりながら走って行った。

 

 さて、俺たちはまだ仕事が残っているな。

 

「リッチ、シロ、行くぞ」

 

「了解だ、さっさと終わらせよう」

 

「…………うん」

 

 そうして俺たちは、『O-04-i16』の鎮圧に向かうのだった。

*1
『白い塔』




何で皆私たちの邪魔をするの?

許さない 許さない許さない許さ ない許さない許さない許さない 許さない許さない許さない許さない許さない許 さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さ ない許さない許さない許さない許さない許さない許 さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さな い許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さ ない許さない許さない許さな い許さない許さない
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