【完結】誰も知らないアブノーマリティー   作:名無しの権兵衛

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EX-Story-4 『墓標』

 苺の夕暮を鎮圧した俺たちは、おそらく苺の黎明を取り逃していたために『O-04-i16』の脱走を許してしまう。

 

 俺とリッチとシロは、脱走した『O-04-i16』を鎮圧するために全力で向かっている。『O-04-i16』の収容室はここからかなり近い。すぐに向かえば被害は押さえられるはずだ。

 

「それにしても、あいつって脱走するのかよ!」

 

「正直どうやって脱走するのか不思議ではあるな」

 

「…………もうすぐ」

 

 『O-04-i16』の収容室のある廊下へと続く扉を開き、中に入る。連戦ではあるものの、苺の夕暮相手にはダメージを受けていないためそのまま戦闘を行っても問題は無いはずだ。

 

 

 

「……むごい」

 

 廊下には、何人ものオフィサーがその皮を剥がれ、肉を剥がれて骨がむき出しになっていた。そしてその骸は、壁に一本の骨のようなもので縫い付けられていた。

 

 そして、すぐに死の気配を感じる。恐ろしいほどの死臭を感じながら、E.G.O.を構える。死体から何かを剥がし取っていたそれは、俺たちの気配に気がついたのか、ゆっくりとこちらに向きを変えた。

 

 それは、一見すれば白いサソリのような怪物であった。しかし、鋏の部分には巨大な骨の手があり、胴の部分は上向きの頭蓋骨になっている。口の部分には、おそらく肋骨があごのように伸びており、かちかちと音を鳴らしている。尾の部分は肋骨と背骨の様だ。もしもこれが元人間の骨なら、相当大きな人物であったに違いない。そしてこちらに向かって両手を挙げて悲鳴のような声を出し、一直線に突っ込んできた。

 

「来るぞ、シロは後ろから援護を! リッチは俺と一緒に殴るぞ!」

 

「了解!」

 

 俺たちも『O-04-i16』に向かって一斉に走り続ける。『O-04-i16』が大ぶりに手で薙ぎ払いをしてくるが、俺たちはそれを体をかがめてよけて懐に入る。

 

「食らえ!」

 

 幸福を『O-04-i16』の体に突き刺し、ねじる。しかし痛みを感じることなんて出来ないのか、『O-04-i16』は何事も無かったかのように動きだし、その手で俺をつかもうとしてきた。

 

「危ない!」

 

「くっ、助かった!」

 

「気をつけろよ」

 

 迫り来る腕をリッチが切り上げてずらし、なんとか捕まらずにすんだ。俺は幸福を抜き出していったん距離を取る。すると、『O-04-i16』はあごの部分を動かして、何かをはき出そうとしてきた。

 

「まずい、何か来るぞ!」

 

 俺とリッチは急いで『O-04-i16』のしたをくぐり抜け、反対側へと通り抜ける。どうやらシロは場所を移動して一旦退避したようだ。

 

 そして、『O-04-i16』はかちかちと音を鳴らしながら、口に当たる部分から青白い息を吐き出した。それは空気よりも重いのか地面に滞留し、しばらくの間残っていた。俺たちはその光景に冷や汗をかく。先ほどまでも感じていた理不尽な死の気配だが、さっきのブレスはそれよりも遙かに大きな気配を感じた。おそらく、さっきのをまともに食らえばただではすまないだろう。

 

 そして、『O-04-i16』がこちらに向き直る。俺たちは再びE.G.O.を構えて、いつでも動けるようにする。

 

「死ぬんじゃねえぞ」

 

「お前もな」

 

 俺たちの会話が終わるやいなや、『O-04-i16』は再び俺たちに向かって攻撃をしてきた。俺たちは再び攻撃を繰り返し、なるべく一撃も当たらないように立ち回っていく。気がつけばシロも戻ってきており、俺たちに加勢してくれている。

 

 俺が幸福で突き刺し、鬼退治でリッチが切りつける。『O-04-i16』の尾が鋭い槍のように突き刺そうとしてくるが、E.G.O.で軽くいなし、軌道を変えて直撃しないようにする。そしてそのすきにリッチが鬼退治を図骨に突き刺し、俺も一緒に幸福を突き立てる。

 

「これで、終わりだ!」

 

 そして、ようやく『O-04-i16』は動きを止めて、その場に崩れ落ちた。

 

「……ふぅ、ようやく終わったな」

 

「さすがに連戦だったからな、後はパンドラたちがうまくやっている事を祈ろう」

 

「おっ、噂をすればきなさったぞ」

 

 パンドラとジェイコブが手を振りながら俺たちのほうに駆け寄ってきた。笑顔のジェイコブを見て、どうやら彼らの役目は果たしたらしい。

 

「さて、今日は『T-09-i97』*1でゆっくりするかな」

 

「あぁ、それなら俺も一緒に行くとするか」

 

 そうして俺たちは、『T-09-i97』の収容室に向かって歩いて行くのだった。

 

 

 

 俺は再び『O-04-i16』の収容室に向かっていた。正直に言えば、俺は奴が苦手だ。あの死の気配がどうしても慣れない、まぁ慣れている奴もいないとは思うけどな。あの馬鹿だって、さすがに『O-04-i16』にいたずらなんてしないだろう。

 

 とにかく、奴に作業をしなければならないのは仕方が無いことだ。割り切って作業を行うしか無い、とりあえず早く終わらせてしまいたいと考えながら廊下を歩いて行く。

 

「さて、ようやくついたか」

 

 『O-04-i16』の収容室の前までたどり着き、深呼吸をしてから扉に手をかける。そして気合いを入れてから思い切って扉を開く。やはり、収容室からはおぞましい死の気配が漂ってきた。

 

「よう、久しぶりだな」

 

 俺の言葉に『O-04-i16』は何も反応はしない、それもそうだろう、こいつはただの骨の山なのだから。そもそも、なぜ脱走したらあんな姿になるのかもわからない。

 

 そんな事を考えていたら、その骨の山の頂にある巨大な華のような部分から光が漏れた。そしてその光をあびて、俺はまた不思議な感覚に襲われるのであった。

 

 

 

 

 

 それには何があったのか、全く思い出すことは出来ない

 

 それもそのはずだ、思い出す機能を失っているのだから

 

 それは時が来るまで永遠に眠り続ける

 

 全てを失い、ただそこに存在するだけだ

 

 それは死の象徴、全てを失った先の姿

 

 気がつけばそれは、小さな花を咲かせていた

 

 真っ白で恐ろしい、骨で出来た華だ

 

 俺はそれを……

 

 

 

 

 

 摘まなかった

 

 

 

 

 

 それでいい

 

 私は眠り続けなければならないのだ……

 

 

 

 

 

 気がつけば俺の胸には骨で出来た華のブローチがついていた。

 

 その奇妙なブローチは、恐ろしいはずなのに、なぜかそんな気はしなかった。

 

 俺は新たな力を身につけて、収容室から退出した。

 

 これからも、俺は数々のギフトを受け取ることになると思う。

 

 だが、決して飲まれないようにだけは、気をつけなければならない。

 

 

 

 

 

 それが何をしたかは、それ自体にはわからない

 

 ただ、それにも何かはあったはずなのだ

 

 それが目覚めることは許されない

 

 そもそも目覚めるために必要なものが足りない

 

 それは失ったものを永遠に探し続ける

 

 決して手に入ることは無いのに、再び罪を重ね続ける

 

 そうしてそれは、かつて斃れ、恨み辛みの元……

 

 

 

 

 

 全てが剥がされ、白い華だけが残った

 

 

 

 

 

O-04-i16 『骨の華』

*1
『極楽への湯』

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