【完結】誰も知らないアブノーマリティー   作:名無しの権兵衛

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Days-23-2 T-01-i21『永遠の命への妙薬』

 『O-01-i33』*1への作業が終わり、何か釈然としない気持ちになりながらも、次のアブノーマリティーのところへ向かう。

 

 今日収容されたもう一体のアブノーマリティーは、『T-01-i21』だ。何というか二連続で人型というのも珍しい。

 

 とりあえず、少し休んでから行こうとメインルームへと向かう。なにげに『O-01-i33』への作業は精神への負担が大きかったのだ。

 

「あら、ジョシュアちゃんどうしたの?」

 

「あぁ、ルビねえか」

 

 メインルームにつくと、そこではすでにルビーが休憩していた。ルビーとは最近距離が近づいてきて、今ではルビねえ、ジョシュアちゃんと呼び合う間柄だ。

 

「実はさっきの作業で結構疲れたから、少し休憩しているのさ。ルビねえはどうしたんだ?」

 

「私は次の作業が『T-04-i09』*2だから、ちゃんと休養しているのよ」

 

「それはちゃんと傷を癒やしておかないとな」

 

 奴への作業は特に体に気をつけなければいけないからな。そのためにも体はしっかりと休めておかないといけない。

 

「それにしても、最近はセフィラの皆も変な感じよね。どうしちゃったのかしら?」

 

「まぁ、元から不安定だったからな」

 

 この前ホドのコア抑制が終わったとは言え、上層のセフィラはまだ3人いる。元々ネツァクはホドのコア抑制が終わらないと出来なかったが、おそらくすでにマルクトとイェソドはコア抑制が出来るはずだ。そこは管理人の考えに従うしか無いけどな。

 

「そうよね、でもホドちゃんは、随分と吹っ切れた感じがするわ」

 

「まぁ、この前のコア抑制が関係しているのかもしれないな」

 

「そうね、それなら私たちがやってきたことにもちゃんと意味があったのかもしれないわね」

 

「あぁ」

 

 なんだか少ししんみりした雰囲気になってしまった。そろそろ精神汚染中和ガスも効いてきた頃だし、作業に戻るとするかな。

 

「ルビねぇ、無駄話に付き合わせちまって悪かったな」

 

「別にいいのよジョシュアちゃん。またお話ししましょうね、今度は恋バナね」

 

「それは気が向いたらな」

 

「あら、つれないわね」

 

 そう言ってお互いに別々の方向へと歩き出す。精神への負担も軽くなったところで、すこし気分が良くなってきた。

 

 とりあえず、これから『T-01-i21』の収容室へ向かう。さっきのような変な奴で無ければ良いのだが……

 

 

 

「さて、それじゃあ行くとするか」

 

 今回もまた、収容室の扉に手をかけて気持ちを切り替える。そして思い切って収容室の扉を開こうとしたその時、管理人からの通信が入った。

 

『ジョシュア、ちょっと待ってくれ。その収容室に入る前にして欲しいことがあるのだが』

 

「えっ、何ですか管理人?」

 

『あぁ、実は……』

 

 その要望は意外なものであったが、俺は素直に了承することにした。そんな事を要求されるのであれば、素直に従わないとどうなるかわからないからな。

 

 

 

「さて、これで大丈夫だな」

 

 俺はガスマスクをつけて、再び『T-01-i21』の収容室の前に来ていた。管理人からの要望はガスマスクの装着、なにやら見た目からしてやばい存在らしい。

 

 それならどんな見た目か教えてくれても良いと思うが、なにやら規則でだめらしい。

 

 とりあえず、収容室の扉に手をかけて、思い切って扉を開く。ガスマスクで臭いなどはわからないが、危険な雰囲気だけはわかる。

 

 

 

「なるほど、それでか」

 

 目の前にいるのは銀色の流体で出来た女性だ。神秘的で清らかな乙女のような姿をしたそれは、こちらに気がつくと、妖艶に微笑んで見せた。だが、その見た目にだまされてはいけない。その見た目とは裏腹に、とてつもなく毒々しい気配も感じる。おそらく、その体を構成しているのは水銀、それも全身だとしたらかなりの量だ。

 

 その神秘的で美しい姿を見続けていれば、いずれは心を奪われそうな気配がする。これは気をつけなければ呑まれそうだ。

 

 正直、ガスマスクだけで守り切れるのかもわからない、一応『T-09-i97』*3があるとは言え長居はしたくないな。

 

「さて、それじゃあ作業を始めて行くか」

 

 なるべく洞察作業はしたくないし、愛着は地雷な気がするので、本能か抑圧作業をするべきだろう。初めてで抑圧も怖いので、本能作業を行うことにする。

 

 とりあえず音楽プレーヤーを持ち出して、曲をかけてリズムに乗ってみる。そして軽く踊ってみせると『T-01-i21』は最初不思議そうに俺を見ていたが、だんだん自分でリズムに乗って体を動かし始めた。だが、どうやら俺のダンスはお気に召さなかったようで、途中から一人でダンスを踊り始めた。俺は少し悲しくなったが、仕方が無いので様子を見ていた。

 

 すると、徐々に瘴気が増していって、しばらくしてどんどん体の調子が悪くなってきた。

 

「ぐっ、これは一体……」

 

 身の危険を感じ、収容室から退出して『T-09-i97』に向かう。心当たりなんて一つしか無い。『T-01-i21』だ。

 

「畜生、今日は厄日だな」

 

 弱々しくもそうつぶやきながら、俺は癒やしを求めて廊下を歩いて行った。

 

 

 

 

 

 古より水銀とは、その神秘的な見た目から薬であると認識されていた

 

 権威あるもの、永遠の命を欲するもの、果ては赤子の命を救わんとするもの

 

 その神秘へ魅了され、多くの人々が求め、自ら沈んでいく

 

 その乙女は決して自分から求めない、なぜなら相手から求められる存在であるからだ

 

 また彼女を欲するものが現れ、その神秘的な姿に魅了されるだろう

 

 そうすれば彼女の取る行動はただ一つ、そのものが欲するものを与えるのだ

 

 銀色に輝く流体の果実

 

 

 

 

 

 そう、それは永遠の命への妙薬だ

 

 

 

 

 

T-01-i21 『インディーネ』

 

*1
『木枯らしの唄』

*2
『森の守人』

*3
『極楽への湯』

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